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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
謎の破壊者

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ランゼの意識改革(3)

 ホジダラの街の町長はその書類を投げだす。領主よりまわってきたのは手配書だったが内容があまりに雑だったからだ。


「黒髪黒瞳の男に水色の髪の少女だと? そんなのどれだけいると思ってる」


 彼の部屋から望める大通り。道行く人々は数多く、旅人もかなり含まれている。そこにはカラフルな髪色の老若男女が行き交い、黒髪黒瞳の男など両手ではまったく足らない。水色の髪の少女も同様だ。


「この金属の乗り物ってのは参考にならんこともないが、どこかに置いてしまえばそれまで。探す気にもならん」


 周囲の村から近くの都へ。中継点となっている街では人の出入りを管理するなど不可能。中からたった二人の人間を見つけだすのも至難の業。

 そんな手間を掛けていられない。警備の担当は時間ごとに起きる、ありとあらゆるトラブルに忙殺される。ホジダラの街とはそんな場所だ。


「好き勝手言うくらいなら、もっと税を安くして人員を増強させろ。知ったことか」


 町長は副町長に不満をぶちまけてなかったことにした。


   ◇      ◇      ◇


 実はホジダラの町長の視界に入っていた正輝たち。二人の少女と両手を繋いで用事を済ませるべく店を探す。


流体金属(メタル)を売るんですか?」

 エメルキアは眉を下げる。

「ああ、この前のメタル進化種討伐でまとまった量、手に入ったろ? 革袋一つくらいいいじゃん」

「製品化するのかと思っていました」

「メタルライトは目立って足がつきやすい。都市規模の雑多さがないと目立ちやすいと思う」


 流体金属(メタル)操作は彼女の十八番(おはこ)である。それだけに、より多くの量を手元に置いておきたいらしい。あればあるほど正輝の役に立てると思っているのだろう。


「枯渇させないようにするからさ。辛抱してくれるか?」

 機嫌を窺う。

「約束ですよ?」

「ああ、要領はわかった。この前みたいに、メタルビーストが出現するとほうぼうで噂になる。本体を狩ってもいいし、出現地点の近くには必ずコバルト鉱床があると考えていい。探してメタルスライムを狩り集めたりできるし、ニッケル鉄も手に入る。一石二鳥だ」

「おっしゃるとおりですけど」

 彼女は未だどこかに腰を落ち着けるのに未練を感じているらしい。

「教会襲撃でもう定住の目は消えたからな。おそらく手配されてると思っていい。こういう人混みに紛れて物資の補充をするのがぎりだぜ?」

「そうですよねえ」

「ルキは人の多いとこ好き?」


 ランゼッタは不思議そうだ。エメルキアの思うところが理解できないのだろう。


「マサキはこう見えても人間なんです」

「こう見えてもは勘弁な」

 苦笑いする。

「人は人の中で暮らさないといろいろと不便があるものなのです。だから、変に取り沙汰されにくい田舎の村かどこかに腰を据えて動くべきだと思うのですが」

「と、お勧めされている」

「どうして? みんなで暮らすのルキは楽しくない?」

 ランゼッタにはまだ難しいかもしれない。

「楽しいですよ。楽しいからこそ甘えてばかりでは駄目なんです。ランゼはマサキを不幸にしてまで自分が楽しければいいですか?」

「そんなことない、と思う」

「まあまあ、ルキ、そのくらいにしておけ。俺は今のところ、君たちの幸せを考えるだけで手いっぱいだ。面倒な人間関係まで抱え込みたくない」


 なにかにつけ話し合ってはいるもののエメルキアとの議論は平行線のまま。少女の気持ちは理解できるし感謝もしているが、手がまわらないのも事実なのである。


「マサキも健康な成人男性ですので性欲もあるはずなのです。わたしたちと一緒だと人間の女性を近くに置くこともできません」

 初めて微妙なラインまで踏み込んでくる。

「いや、それは……」

「じゃあ、ぼくと子どもできることすればいい」

「わたしで解消してくださってもいいんですよ?」

「頼むから増えるな」


 ランゼッタ一人の意識を変えるのも大変なのに、エメルキアまで混ざると手が付けられない。正輝は装鎧少女(エルフィン)を保護したいのであって、彼女たちでハーレムを作りたいのではないのだ。


「どうせ事が進めば似たような状態になると思いますけど」

 内心を告げるとエメルキアに指摘される。

「どうにかする。君たちの同胞が安心して暮らせる場所を構築するつもりだ。ただ、隠れられるだけじゃなく精気の供給も忘れちゃならないから、なにか方法がないか探ってみないといけない」

「人を入れるのが確実ですけど、そうすると情報漏洩の危険性が増してしまいますね」

「その人たちもマサキみたいな不満を抱えることになるかも」

 問題点は多い。

「お互いのことを考えはじめるとキリがない。なにかの妥協点を見つけるためにも、あっちこっちして知識を溜めるつもりだからさ」

「その過程で協会襲撃とかしてたら袋小路ですからね。すでにバイクは定員いっぱいです」

「それだ。あー、サイドカー、嫌だなあ」


 ここに来るのにもバイクに乗ってではあるが、定位置にエメルキア、彼の後ろにランゼッタを乗せてもう他に乗る場所がない。これ以上増やすとどこかに待たせておくか、あるいはサイドカーを付けるかしないといけなくなる。


「車では駄目なんですか?」

「よしてくれ。ライダーの魂を俺から奪うな」


 正輝にとって最後の一線なのであった。

次回『ランゼの意識改革(4)』 「人を露出狂みたいに言うな」

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