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宝石のような時間をどうぞ  作者: みつまめ つぼみ
第4章:長期休暇旅行

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42/60

42.

 四日目は、リムジンで街に繰り出してお土産屋を巡った。


 とはいえ、お母さんからもらったお小遣いは少ない。


 どれを買うか悩みながら、みんなであちこちの店を巡った。



 お昼に入った喫茶店で、私はどさりと座ってテーブルに潰れた。


「きまらな~~~い!」


 早苗(さなえ)が歩美(あゆみ)とひそひそと耳打ちで相談していた。


 孝弘さんがメニューを開きながら告げる。


「もう素直に、小金井(こがねい)さんとペアネックレスにでもすりゃーいーじゃねーか」


「恋人同士か?!」


「恋人同士だろ? 『親公認』の」


 それはそうなんだけどね?!


 歩美(あゆみ)が孝弘さんにひそひそと耳打ちをした。


「……なるほど、任せてくれ。

 じゃあ飯を食ったら、小金井(こがねい)さんと朝陽(あさひ)は別行動な。

 俺たち三人は、行くところがあるから」


「なにそれ?! 何を企んでるの?!」


 三人がニンマリと微笑んで「秘密~~~!」と応えた。


 そばで待っている店員さんが、おずおずと告げる。


「お決まりでしょうか」


 孝弘さんが「ああ、じゃあこれを五つ」とランチメニューを指さした。


 店員さんが立ち去ってから、マスターが小さく息をついた。


「僕をからかうのは良いけど、朝陽(あさひ)をからかうのはやめてあげて」


 ――やっぱり呼び捨て?!


 早苗(さなえ)がニンマリとマスターに告げる。


「とうとう呼び捨てする気になったの?」


 マスターがニコリと微笑んだ。


「まぁ、僕らは恋人同士ってことになってるし。

 もちろん、朝陽(あさひ)が嫌なら元に戻すけど」


 私は慌てて首を横に振った。


「嫌じゃない! 大丈夫! そのままで!」


 口に出してから、早苗(さなえ)と歩美(あゆみ)、孝弘さんの視線に気が付いた。


 ニマニマしている三人の視線を、メニューに隠れてやり過ごした。





****


 食後、マスターと二人でショッピングエリアを歩いて行く。


 人混みが多くて、肩がぶつかりよろけた私をマスターが支えてくれた。


「――と、大丈夫? 朝陽(あさひ)」


「あ、だ、大丈夫!」


 離れようとすると、マスターが私の手を握った。


「ほら、離れてると危ないよ。

 もっとくっついて歩こう」


「……はい」



 私はのぼせながら、うつむいて歩いていた。


 だって、こんな大勢の前で手をつなぐとか、それこそ恋人同士じゃん。


 マスターが私に振り返って告げる。


「このお店、アクセサリーショップだって。

 見ていこうか」


「え?! でもそんなに高い物は――」


「僕が買いたいんだ。

 一緒に見ていこう」


 おずおずとうなずき、一緒にショップに入る。


 中にはいろんなアクセサリーがあったけど……。


「観光地価格、高いよ……」


「アハハ、無理はしないで」


 マスターはネックレスを見つめていた。


 ……でもそれって。


「ねぇマスター、それペアアクセサリーだよ?」


「そうだね。だから見てるんだ」


 ――どういう意味で?!


 戸惑う私の前で、マスターは民芸細工のペアネックレスを一組買っていた。


「あ、包装は要りません。つけていきますから」


 ――この上、さらなる羞恥プレイを?!


「さぁ朝陽(あさひ)、こっち向いて」


 私は涙目になりながら恥ずかしさに耐え、ネックレスを首に受け取った。


 マスターは自分でネックスレスを首につけて、大変ご満悦だ。


「行こうか、朝陽(あさひ)」


「煮るなり焼くなり、好きにして……」


 手を握りながら、人混みを抜ける。


 ――もう、心臓がうるさくて仕方がない!


「マ、マスター! そろそろ手を――」


「あ、朝陽(あさひ)。あっちに自販機がある。

 飲み物でも買っていこう」


 今、私の言葉を遮ったな?!


 マスターに手を握られたまま、自販機前に移動して、私はリンゴジュースを買ってもらった。


 ようやく手を放してもらった私は、リンゴジュースを一気に飲み干して息をついた。


「――ぷはぁ! もう、手をつなぐのは許してよ」


「そうかい? じゃあ――」


 ぐっと肩を抱かれ、私とマスターの体の距離がゼロになる。


「――?!」


 混乱する私の肩を抱いたまま、マスターは孝弘さんたちとの待ち合わせ場所へと向かった。


 私は恥ずかしくてうつむいたまま、黙って足を動かした。





****


 孝弘さんと早苗(さなえ)、歩美(あゆみ)はもう集合場所で待っていた。


「お、きたなご両人」


 孝弘さんの言葉に、マスターが応える。


「悪い孝弘、待ったか?」


「いや、俺たちもさっき来たばかりだ。

 それより――はいよ、小金井(こがねい)さん」


 孝弘さんがマスターに手渡したのは、民芸細工のフォトフレームだった。


 マスターはそれを見て、体を震わせていた。


「朝陽(あさひ)にもあるわよ?」


 歩美(あゆみ)が私にもフォトフレームを手渡してくる。


 どれどれ、どんな写真を入れてるんだ、ろ……。


 私の目に飛び込んできたのは、フォトフレームでしっかり固定された『酔ったマスターが私を抱きしめて眠る写真』だった。


「こういうものを入れる物じゃないでしょー?!」


 孝弘さんがニヤリと笑った。


「そうか? 今回で一番記憶に残った出来事だろ?

 ――小金井(こがねい)さん。もうそれ、店に飾っちまえよ」


 マスターは黙ってうなずいた――うなずくな!


「ちょっと! そんなことしたらお客さん全員にからかわれるじゃない!」


 早苗(さなえ)が私の胸元を指さして告げる。


「なに言ってんのよ。

 あからさまなペアネックレスつけておいて」


「これは……もーやだー! おうち帰るー!」


 歩美(あゆみ)がクスクスと笑いながら告げる。


「はいはい、焦らなくても明日帰るわよ」



 結局、リムジンに乗るまで私の羞恥プレイは続いた。





****


 お母さんたちと合流――したときも、ペアネックレスはからかわれた。


 くっ! あと一日の我慢だ、私!


 夕食は近くの料亭に行き、懐石料理を食べた。


 大人たちは街に残り、最後に飲んで帰るらしい。


 孝弘さんは私たちと一緒に、コテージに戻った。


 リムジンを降りた孝弘さんに、私は尋ねる。


「お酒を飲まなくて良かったんですか?」


「今の小金井(こがねい)さんじゃ心配だからな。

 せめて俺のフォローは必要だろ?」


 マスターは私にべったりとくっつき、今も肩を抱いてゼロ距離を堪能していた。


「……マスター、どうしちゃったの?」


 孝弘さんが楽しそうに笑った。


「ハハハ! 本音を隠さなくなっただけだろう、たぶん!

 本当はもっと前から、そうやってくっつきたかったのさ」


「ちょっと……これ以上の羞恥プレイは許して……」


 私は両手で顔を覆ってしまっていた。


 そりゃ、『マスターの特別になりたいのかも』って思ったことはあったけど!


 いきなりアクセル全開で距離を詰められても、どうしていいかわからないよ?!


 リビングのソファに並んで座ってる間も、私は解放されなかった。


 孝弘さんがマスターに告げる。


「早苗(さなえ)と歩美(あゆみ)たちの温泉、今夜は俺が同伴するから。

 小金井(こがねい)さんたちはゆっくりしてろよ」


 マスターは黙ってうなずいた。


 下から見上げると、とんでもなく幸せそうに微笑んでるんだけど?!


 こんなとろけた顔、いつものマスターじゃないよ?!



 孝弘さんが早苗(さなえ)たちを連れて温泉に向かった。


 そして私は気が付いた。


 ――今、このコテージに二人きりじゃないの?!


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