魔法とは
魔を導く者『魔導士』。魔法を使った職に就いたり、魔法を何か目的をもって利用する者はこの世界では一般的に魔導士と呼ばれる。そして一般的な魔導士の最高峰の一つとして有名なのは、ここ、ロードノア王国の王宮に仕えながら日々魔法の行使や研究に勤しむ宮廷魔導士たちだ。
……などという今ことを私は幼い子にもわかりやすいようにかみ砕いで話を聞かせている。相手は目を輝かせながら私の話を聞いている男の子だ。
この国の第二王子で今年で六歳になる、つまりは私の弟であるその男の子の名前はラフィーリオ・ロードノア。お母様譲りの私よりも濃い王家特有ともいえる青い色の髪を持つこの子は未だに幼さの残る顔で私の事を尊敬しているような表情で眺めてくれている。
そもそもどうしてこうなったのかといえば話としては単純なもので、特にこれといって今日の予定もなかった私は朝食をとったあとに私が利用している実験室兼資料室の資料の整理をしておこうと思ったんだ。普段はあまりできないからと私が過去にメモとしてまとめた物や参考にしている資料などを片付けようとしたのだけれど、そんなところにこの子が来襲してきて――
『ねえさまに魔法について教えてほしいのです!』
なんていうものだから可愛い弟のためになれば、と深く考えずに二つ返事で了承してしまったんだ。
「とはいってもフィー君はまだ『洗礼』を受ける前だから……それじゃあ魔法の基礎、ちょっとした座学を勉強してみようか」
「よろしくお願いします!」
返事が元気なのはいいことだ、などと思いながら私は本棚から目的の資料を探し出してはそれを閲覧テーブルの上に開いてフィー君にこちらへ来るようにと手招きをした。
取り出した資料とは私が過去に魔法の勉強をする際に何か役立つことがあればと他の資料から内容を書き写したりしてまとめた物、それのもっとも初歩的な部分の資料だった。
「まずは初めに魔法とは何か、ってところから。そもそもとしてこの世界には魔力があるよね。フィー君そもそも魔力とは何か、わかるかな」
「えっと、魔法をつかうためにひつようなもの……ということぐらいしか……」
間違った答えではない。確かに魔法を使うために必要なもので魔力があるから魔法というものがある、ただ魔法にとってだけ必要なのではないんだよね。
「それはそれであっているかな。一般的には魔力は魔法が生まれる前から世界にあったとされていて、人が生きるために必要なものっていう認識なんだよ。それを踏まえて話すけれど、魔力には元々六種類の属性というものに分かれているんだ。属性の種類についてはわかるかな」
「あ、はい。えっと……火、水、風、地、それと光と闇の六しゅるいです」
火を使いたいなら火属性の、水を使いたいなら水属性の魔力を利用しなければならないのが魔法だ。とはいえ誰しもが自由に魔法を使えるわけではなくて人には属性に対する適正というものがある。
「そうだね。そして人その魔力を利用することができる。……ただみんなが制限なく魔法を自由に使えるわけではないんだ」
ここからが魔力の本質、魔法というものの正体、メカニズム的な部分でわりと分かりづらい部分なのである。
「私たちが魔法を発動させるためにはまず魔力を自身の内に取り込まなければならないの。その働きをするのが『魔力門』。そしてその取り込んだ魔力を蓄積しておく場所というのが『魂』なんだ」
「ゲートとたましい……」
そこまで説明したところでフィー君の様子を見てみれば難しいそうな顔をしているのが見える。それもそうだよね、私だってはじめ調べたり聞いたりしたときには理解するのは大変だったもの。言葉で説明するのは簡単でもそれを理解しきるのは時間がかかるよね。
「詳しく説明すると、外部の魔力を魔力門である種の生命力として取り込んで魂という器に蓄積して、それをこんどは魔力門を介して再び魔力に戻し、外に干渉するための力に変えるの。それが魔法の正体なんだよ」
「なんだか難しいです……」
「難しいかもしれないけど必要な部分だから頑張ろう」
難しいと言い、広がっている資料を見つつもうんうん唸りながらもフィー君はあきらめることなく理解しようと努力しているようだ。自分から教えてほしいと願ったためにその責任をしっかり果たそうとしているのだと思う。我ながら出来た弟を持ったものだね。
「……それで話を戻すけれど、魔力門とは人それぞれ固有のもので人によって取り込むことのできる属性に違いがあるの。それでもっと厄介な話なんだけどね、魔法を使うときにまた魔力門を介する必要があるんだけど、この時に生命力を魔力に変換することのできる場合もあればできない場合もあるの。それこそが属性適正ってやつでね、これによって使える魔法の属性が決まるんだ」
「それがだれでも魔法がつえるわけではない、ということの理由なのでしょうか……」
「正解だよ。そもそも勘違いしてはいけないのは魔力を利用して魔法を使うってのはもともと人にはできないことだったんだよ」




