13.適度な攪乱の効用
今日は少し、俯瞰的と申しましょうか、創作コミュニティ全体を見た話をしたいと思います。
人類の歴史を眺め、文化や科学が大きく発展する時代に着目してみますと、戦乱や動乱による人材の流動が重大な役割を果たしていることに気づきます。応仁の乱から逃れた貴族により発展した地方の文化や、ヒトラー政権のドイツから亡命したユダヤ人たちが米国にもたらしたものを思い起こしてください。もちろんこうした出来事の背景には忌まわしき暴力があるのであって、それ自体を肯定する余地は全くございませんが、ある側面において意義のある結果をもたらしていることは確かでしょう。
望ましいのは、上のような攪乱を平和裏に引き起こしていくようなシステムの構築です。例えば、建築においては攪乱を起こすことを意図したデザインを見ることができます。
例えば、北海道にある公立はこだて未来大学の本部棟はスタジオと呼ばれる広大な吹き抜け空間を有しています。全ての活動が一目に入るようにすることで、そこを訪れる様々な人々の交流を促す空間になっていると言えましょう。ただし、現状を見ますと事務員の作業スペースは固定され、当初の意図よりは開放度の低い空間になっています。
日々そこに通う人からしますと、常に引っ掻き回される職場というのは落ち着かないものでありますから、建築家の意図から逸脱して上のような改変が行われるのは当然であります。
この問題に対する一つの解を2ちゃんねるの人気の板に見出すことができます。2ちゃんねるは、巨大な掲示板であるために、板と呼ばれるジャンル別のページに分かれています。ユーザーは自分の興味・関心にあった板を訪れ、そこで特定の話題を扱うスレッドに書き込みを行います。板により書き込み数にも大きな格差があり、また人気の板にも栄枯盛衰があります。
近年、最も発展している板は「なんでも実況ジュピター」(いわゆる「なんJ」)です。この板では多くの雑談が交わされていますが、本来はその名称が示しますように、TV番組やスポーツの試合を実況することがメインの板でした(そして現在も実況は盛んです)。そのために、以下のような特徴を有しています。第一に、保持されるスレッド数が少ないということです。これにより個々の話題は短時間に流れていき、次と入れ替わっていきます。第二に、一つ目の特徴と表裏一体でありますが、新しいスレッドを容易に作成できるということです。即ち、話題の提示が容易なわけであります。スレッドがすぐ閉まることで固定したい場所がない人が常に彷徨っていますので、面白いと思われればすぐに拡散する可能性を持っています。
上のような激しいシャッフルもあくまで当該板の中に限られた現象であることがポイントです。これにより攪乱と落ち着きのバランスをとっているのです。だからこそそこにいる人々も居心地の悪さを感じることなく、独自の文化の醸成に勤しむことができるのです。




