第67話 無理難問3
放課後 いつもなら複数の女の子達と帰る克哉。
でも今日は要と新一と帰っていった。
「燐 帰るぞ」
「あ・・・うん」
飛鳥が私の頭を撫でる。
どうも 子ども扱いだなぁ・・・
「ねぇ飛鳥 今度の期末なんだけどねー」
「ん?」
「期末の2日目がハロウィンなんだよ♪」
「あー、うちの学校の期末微妙な時期だよな。」
「うん お菓子用意しててね♪」
「・・・考えとく」
期末まで後 3週間
教室のドアを開けると克哉はすでに登校していた。
しかも朝から勉強。
すごい気合だなぁ・・・
「ねぇ夢乃 本当に克哉が全部達成したらつきあうの?」
「・・・考えるとは言ったね」
「・・・ふぅん」
今は考えもしないってことかな
「ねー克哉!」
私が克哉の後ろ姿に言うと克哉はこちらを見てすぐにまた机のほうを向いた。
「な・・・無視!?」
「違うよ」
要がくすくすと笑いながら私の横に来る。
「一応燐も『女の子』だろ?」
「あ・・・そっか」
「ありゃ本気だなー」
ニヤニヤしながら克哉は夢乃を見る。
夢乃は相変わらず無表情。
だけど 目線の先は克哉の背中だった。
もちろんそれは恋する乙女の表情じゃないし 当たり前だけどそれは冷めた視線。
『ばかじゃないの?』とでも言いたげな。
夢乃は 嫌いな人にはとことん冷たい人だから。
「そういえば 早朝マラソンてしてるのかな?」
「してるよ」
これに答えたのは今登校してきた明美だった。
「毎朝見かけるよ。道場の前通ってるから。」
「・・・ふぅん」
「毎朝汗だくで ぜぇぜぇ言いながら走ってるよ。」
明美は横目に夢乃を見る。
もちろん夢乃は表情を変えないし何も言わない。
「・・・克哉」
教室中が静かになる。
だって 克哉に話しかけたのは 夢乃だから。
克哉も驚いた顔で夢乃を見る。
「克哉がどんなにがんばっても 私は克哉のこと好きにはならないよ?」
「・・・・・・」
克哉は何も言わない。
女の子と喋らない の条件の女の子に夢乃が入ってるわけじゃないだろうに。
「・・・私は 誰かががんばる姿を信じるような人じゃない」
「信じなくてもいいよ」
ようやく克哉が口を開いた。
教室中にいたみんながそちらに注目する。
「信じなくても別にいいよ。信じたくないのに信じろなんて言わない。」
「・・・だったらなんでがんばるの?」
「お前のことが好きだからに決まってんじゃん」
「・・・その言葉が信用できないのよ」
「なんで?」
ようやく夢乃の表情が変わる。
眉間にしわを寄せて 何かを異様に気味悪がってるような顔。
「男の言葉なんて 信じたくない。」
「なんで男限定?」
「・・・じゃあ男じゃなくてもいい。」
「ちゃんと説明しろよ 意味がわからない」
「克哉に説明を聞く権利はないよ。私も話したくない」
「・・・・・・あそ」
克哉はため息をついてまた机のほうを向いた。
夢乃もため息をついて壁によりかかった。