第64話 無理難問
「あんさー克哉 そろそろ諦めたら?」
いまだ暗い雰囲気の中にいる克哉に声をかける。
「諦めろ・・・って 簡単に言うなよぉぉ」
「夢乃がウザイ生き物ほど嫌いなの あんたも知ってるでしょ?」
夢乃はセールスマンだとか 学祭で近寄ってくる人達が嫌いでいつも冷めてる。
声をかけられても完璧シカトでそのまま通り過ぎてしまう。
そりゃあ 克哉の気持ちはまったくといっていいほど想像できないわけじゃない。
ずっと ずっと大好きで隠し続けてたのに ちょっと?表に出しただけでここまで冷たくされるなんて。
きっとすごくショックで悲しいだろう。
だけど こんな風になるまでしなくても・・・いいんじゃないかなぁ とか思ってしまう。
「なぁぁ 夢乃ぉ〜 つきあってくんなくていいからさぁ〜もう少しやさしく接してくれても・・・」
「うるさい 黙れ 死ぬんじゃなかったの?早くしなさいよ」
「うわあぁぁああぁぁあぁあぁ!!!!!」
まぁ、こうも冷たく人でなしのごとく突き放せる夢乃もすごいけどね
「あのさー・・・克哉の問題はさー」
「あ、克哉君!今日の放課後カラオケ行かない?」
「行く行く!!!」
「・・・その 言ってることとすることが違うところだと思うよ」
私が言うと克哉はため息をつく。
「だってさー夢乃が相手してくんないなら他の子といるしかないじゃん!」
「アンタみたいな女好き・・・夢乃とあうわけないじゃん!」
「けどさー好きなのは夢乃!女の子達はあくまで遊びだよ!」
「その!遊びがだめなの!わかんないかなぁ!?」
「わっかんないね!女の子ってみーんな可愛いじゃん!その子等と遊んで何が悪い!夢乃と両思いになったら大事〜にするけどさ♪」
こんにゃろう・・・
夢乃は冷たい目で私と克哉を眺める。
クラスのみんなはグループで話したり やっぱりまだ外に行こうとする人がいる。
やっぱり みんな関わりたくないらしい。
このままじゃ・・・まずいよねぇ やっぱりさすがに。
「だってさ 夢乃。」
「じゃあ・・・」
カタンッ
夢乃が克哉を見て立ち上がる。
克哉は夢乃を見上げた。
その瞬間 教室中が静かになった。
「これから言うことをすべて達成できたら 考えてあげるよ」
「な 何!?夢乃のためならなんでもするぞ!」
夢乃が言ったのは 克哉には無理じゃないの?という条件だった。
● 女の子と喋らない 触らない メールしない(1ヶ月間)
● 毎朝ジョギング10km(1ヶ月間)
● 次の試験で全教科70点以上とる
● 明美の飛び蹴り10発連続でくらい、その後10秒以内に立ち上がる
「これができたら 考えてあげる」
その時全員が思ったはずだった。
『絶対無理だ』
『ありえない』
『克哉にできるわけがない』
って。
でも克哉はぱあっと明るい顔をしてみせた。
「本当か!?これができたらつきあってくれんのか!?」
「つきあうとは言ってない。ただ ・・・まぁ、いい返事をできるだけだそうってことよ」
すると克哉は狂喜の悲鳴を発しながら教室を飛び出した。
「・・・おい夢乃 いくらアイツがウザイからって・・・無理難問すぎるだろ」
新一が夢乃の頭を撫でて言う。
「・・・無理?」
夢乃はくすりと笑った。
「無理でいいのよ。私がアイツとつきあうことが無理なんだから。」
確かに
無理な条件を克哉に押し付けても克哉はきっとそれに挑戦するだろう。
だけどそれはあくまで『無理な条件』だから、克哉はきっと達成できない。
しかし 達成できなくとも克哉は夢乃を諦めることはない。
だって 条件ができなかったら一生チャンスはない と夢乃が言ったわけじゃないから。
それに それで諦めたら『所詮その程度』と思われても仕方ない。
そうなれば必ず克哉は諦めずに夢乃につきまとう。
そして夢乃がまた無理な条件を押し付け・・・
その繰り返しだ。
それは間違ってないと思う。
きっと克哉はへらへら笑ってするだろうし みんなも黙ってそれを見る。
克哉は達成できなくても夢乃は条件を出すからきっと自分が意中にあると思うだろう。
そうなれば 表向き 傷つく人はもう出てこない。
けど へらへら笑ってる克哉
それを 夢乃はどんな気持ちで眺めるんだろう?
どんな気持ちで 無理な条件を言うんだろう?
それは私にとても想像できない感情でしかなかった。




