第63話 お泊り5
「どうする?帰る?」
「んー・・・おなかすいた」
「あぁ そっか忘れてた・・・適当なんでいい?」
「うん♪」
・・・頭痛いなぁ
ぼーっとしてると部屋は飛鳥のにおいでいっぱいでまた眠くなる。
って あれ?
普通ここって 女の子が料理とかして女らしさをアピールするのでは!?
うっわ!!?
「ぁ 飛鳥!!私がやるよ!泊めてもらったんだし!!」
包丁をウィンナーに向けたまま飛鳥が「え?」とこちらを向く。
「私がするよ!」
「え、いいよ座ってて・・・」
「いーの!かして!」
飛鳥の手から包丁を離そうとして 指が痛む。
「・・・ッ!」
無理矢理離そうとしたから指を切ってしまった。
ぽたっ
白いまな板に赤い水玉が浮かび上がる。
「燐・・・バカか!!」
ビクッ
飛鳥の怒鳴り声に体が跳ね上がる。
「ったく・・・」
ため息まじりにいって飛鳥はどかどか乱暴にどこかへ歩いていってしまった。
「う・・・」
痛みとかで泣きそうになる。
絶対 飛鳥あきれた・・・
慌ててしすぎた・・・
これじゃ 女らしさも何もないじゃんかぁ・・・
じわぁっと涙が浮かぶと頬があたたかくなる。
「おい?何 痛いのか?」
飛鳥が私の顔を覗き込む。
「ん・・・ちょっと・・・」
「かして」
飛鳥がまだ少し怒った口調で私の怪我した指を水道の蛇口へ向ける。
ジャー・・・
冷たい水が触れてジンジンと怪我した部分がゆがむ。
「・・・っ」
「我慢しろよ」
「・・・・・はぁい」
指をそっとふくと飛鳥は持ってきた絆創膏を貼ってくれた。
「ハイ もういいよ。俺がするから」
「・・・・・・ごめんなさい」
「なんで謝んの?」
「だ・・・って 私・・・飛鳥怒らせようとしたんじゃなくて・・・」
言ってるうちに自分のバカさとか アホさとか くだらなさとか
いろんなものをいっぺんに感じて 涙があふれた。
「だって・・・こういうのって女の子がしたほうがいいのかもって気づいたら・・・それで・・・」
涙が急にぽろぽろ流れ出す。
「燐?」
「ふぇ・・・だ・・・って・・・ずっと なんもできてないんだもん」
いつも してもらってるのは私のほうだ
酔っ払ったりなんかして 世話やかせちゃったのも私
こうして 困らせてるのも私
いつも私ばっかりだめで
「ごめんなさぁい・・・」
寝起きの頭はぼーっとしてて
何がなんだかわかんなかった。
飛鳥が私を抱きしめる。
「バッカかお前は 正真正銘のバカだろお前 あほだろお前」
「な・・・なんでぇ!?あやまってるのに!ひどい!」
「なんでわかんないかなあ?」
「何が・・・さ・・・」
「俺が燐に何かしてもらいたいって いつ言ったんだよ。好きだからそばにいたいってだけじゃん?」
「で・・・でも・・・」
「でもないだろーが いいんだよ。何かさせたはさせたでこうなるんだから」
ぎゅっと飛鳥が怪我した指を握る。
指から手へ激痛が走った。
「な?そばにいんのに 傷つかれたらたまんないし 別に、できることでいいんだよ?燐のそういうとこは知ってて好きになったんだから。」
「・・・私の そーゆーとこって?」
「ドジで不器用で常に無防備でボーッとしてて・・・」
「わー!!悪いことばっかじゃん!」
「そいですっげー可愛いの」
「・・・っ」
かあぁっと顔が赤くなるのがわかる。
なんで なんで飛鳥はそういうことさらっと言えるの?
そんな人だったっけ?
「アハハッ 耳まで真っ赤だ♪」
「な・・・だっだって・・・」
ニヤニヤした顔の飛鳥の顔が無表情になる。
「・・・っ」
ぎゅっと目をつむると予想通り 唇にやわらかいものが当たる。
「ん・・・っ」
いつも されるのは私のほうで
声をあげちゃうのも私のほう
でも 自分からするのなんて恥ずかしいし・・・
なんかしたいよなぁ・・・私から・・・なんか・・・
料理は・・・できないことはないけどよく怪我するし・・・やけどとかも・・・
洗濯は・・・洗濯物よく風で飛ばされて汚れちゃうんだよねぇ・・・
なんか なんもできないなぁ 私・・・




