第26話 変わるもの
「え?結局・・・なんなの?」
「何・・・って いいやもう」
変な勘違いして勝手に誰もいない校舎に連れ出して
そんなカッコ悪いこと正直に言ってたまるか!
キーンコーンカーンコーン♪
休憩時間の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
「あ・・・ヤッベ 授業どうする?」
「・・・戻ろ・・・か?」
燐がため息まじりに言う。
『戻りたくない』が本音。
教室になんて戻りたくない ずっとこうしてたい。
燐がいて 俺がいて 周りには誰もいなくて
こうしてたい・・・けど
「・・・次なんだっけ?」
「えーと・・・総合・・・だったかな?」
「じゃあ・・・サボる?」
『サボる』の一言なんて 小学生の時要達にいくらでも言ってきた。
夢乃や奈央 女子に言うことだってあったはず。
なんか 違う
燐が口を少し開けたまま俺を見つめる。
「や・・・えと 別に・・・戻りたいならそれで・・・」
なんとなく気まずくなったのがわかって口調をかえると燐は俺の腕をつかんでにっこり笑った。
「サボっちゃおっか」
「・・・ッ」
この笑顔だけで 不安がすべて消えてしまうって言ったら 嘘に聞こえてしまうだろうか?
この幼馴染のハッキリ言って色気もなんもない女の子供っぽい笑顔だけで
かすかに幸せを感じてしまってる俺は バカですか?
サボる・・・なんて簡単に口に出してしまったけど 実際この校舎は俺等2人だけなんていう証拠はない。
静かだけど・・・たぶん人がいる。
ハッキリ言ってしまうとこの学校は評判がいいわけじゃない。
頭がいいかと聞かれても・・・まぁ、真ん中あたりだろう。
だから当然拍子抜けな生徒が存在する。
そんなの どんなに優秀な学校にも存在すると思うが。
だからうかつに外に出れば不良な2年3年に会う可能性がある。
て なるとやっぱり危ないのは燐?いや 俺?
顔の可愛い燐はもしかしたら連れまわされるかもしれない。
俺は 男だから手荒なことができるから・・それはそれで危ないし
・・・まぁ、結局ここから動かないほうがいいわけだ。
トンッ
階段を1段下りて1番上の段に座る。
トンッ
燐が隣に座る。
たぶん燐から来る シャンプーとリンスと・・・よく女子がしてる脇にかけてるスプレー?
のにおいが全部まざったいいにおいで頭がクラリとした。
他の女子からすると不快なにおいなのに。
「・・・あのさー燐」
「んー?」
『警戒』とか『意識』とか
そんな言葉の意味も知らないというような顔で燐が言う。
「俺の告白 本気にしてる?」
燐の顔が固まる。
『あぁ そうだった』みたいな顔。
「本気に・・・してる よ?」
じゃあなんでそんなめちゃくちゃ動揺した 震えてる声してんだ?
「のわりには 前と変わんないよね?」
変えたいから言った っていうのは100%正解じゃないけどほぼ正解に近い。
燐は困ったような顔をする。
全部知ってるつもりだ。
昔から 見てたんだから 単純なことなら 全部 君の事なら
けど これは予想外。
「飛鳥の事・・・は 好き・・・・かもしんない」
この答えは 予想外。
少し困らせてやりたくて
燐は困った顔さえも可愛いと 知ってたから 見たくて
なのに 足元をすくわれしまった気分。
顔が赤くなるのさえ感じる。
「その・・・えと 飛鳥にこんな話するの間違ってるかもしんないけど・・・カノンにも告白されてるの」
「・・・・・・・・知ってる」
「ッ で・・・ね それで・・・カノンの事もビックリしたけど あの時はいやだったの好きって言われた時 ・・・気持ち悪かった ゾッとしてだから逃げたの」
この言葉を聞いて ひどくイラつくのはどうしてだろう?
かゆくもない頭をくしゃりとかく。
「けっけど・・・飛鳥の場合違って・・・」
燐の顔が赤く染まる。
「なんていうか・・・その・・・えと・・・ッッ」
赤みは頬だけじゃなく 顔のほぼ全体に広がり 耳も赤くなる。
「飛鳥の時は 飛鳥のことすっごい意識して・・・なんか・・・変な感じだったの」
燐がぎゅっと目をつむる。
「飛鳥の事 好き」
その瞬間 俺は頭がぐらりと揺れて 視界が天井へ向く。
どすっ!
「・・・って」
後頭部に激痛が走る。
階段の横にある壁にぶつけたらしい。
「え!?ちょっ大丈夫!?」
不安そうな顔をして燐が立ち上がる。
パサッ
頬にやわらかな燐の髪が触れる。
その髪をあくまでやさしくつかんで俺のほうに寄せる。
抱きしめると燐の鼓動に気づく。
少し震える手を見てくすくすと笑ってしまった。
「へっ な 何!?」
裏返りそうな声で燐が言う。
「・・・いや かわいいなぁと思って」
そういうと燐は顔を真っ赤にした。
赤い頬に唇を寄せると燐は口を開けて言葉にならない何かを発した。
「な・・・ななな・・・にして・・・っっ」
そんな顔も可愛くて笑いをこらえる。
「そっか 両思いってことはこういうことしてもいいんだっけ?」
「な・・・な!!?」
幼馴染で 恋愛対象外とか考えてたのがうそみたいだ。
見事にはまってく