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旦那とのセックス

不倫関係が始まってから、あっという間に二ヶ月が過ぎた。


職場で交わす優太との密やかな視線や、LINEでの他愛のないやり取り。それが、私の乾ききった日常に潤いを与える唯一の栄養源となっていた。

昼休みに2人、ランチに行くふりをして彼の車に乗り込み、パチンコ店の暗い立体駐車場でしたり、

飲み会と言っては、アキラに娘を任せ彼の家で2時間腰を振る事もあった。



家の中では、私は相変わらず完璧な妻であり、母親だった。

朝六時。キッチンで朝食の準備をする。

炊きたてのご飯の匂い、味噌汁を注ぐ音。リビングでスマホを弄りながら食事をとるアキラの隣で、私は「今日は燃えるゴミの日だ」「娘の習字道具は用意したか」と、頭の中でタスクを高速で回し続ける。

アキラは私の話など聞いていない。ただ、口元に運ぶスプーンの動きと、スマホの画面に映るゲームの攻略情報だけが、彼の世界を構成していた。

夕方、パートから帰宅すれば戦場だ。

取り込んだ洗濯物の山、散らかったリビング、娘の宿題のチェック。

「ママ、ここ分からない」と泣きつく娘の頭を撫でながら、心の中では優太の先日の言葉を反芻していた。

(如月さんは、もっと笑ったほうがいいですよ。本当はすごく綺麗な人なのに)

その言葉が、私の日常を支える盾になっていた。私は母親としての役割を完璧にこなすことで、自分の中の罪悪感を麻痺させていたのだ。

ある日の夜。

娘を寝かしつけ、明日のためのアイロンがけをしていた時のことだ。

リビングのソファでテレビを見ていたアキラが、ふと立ち上がり、寝室へと向かった。その後ろ姿が止まり、振り返って私を見た。


「……ユキ。先に待ってる。」

言葉少ない、慣れた合図。



心臓が嫌な音を立てた。



私は作業中だったシャツを丁寧に畳み、感情を殺して寝室へ向かった。

ベッドに入ると、アキラは電気を消した。

部屋を支配する暗闇の中で、彼の肌が私に触れる。久しぶりの夫からの要求だった。

拒絶すれば、この平穏な生活のバランスが崩れるかもしれない。あるいは、妻としての役割を放棄したと責められるかもしれない。

もしかすると、優太とのセックスのお陰で、私のメスとしてのフェロモンが家庭でも出ていたのかもしれない。そのフェロモンに今日、旦那というオスが触れたようだ。


私は、ただの置物のように身を横たえた。

アキラの指先は、記憶にある通り、淡白だった。

情熱はなく、ただ自分の欲求を解消するためだけの、渇いた接触。


濡れない。




アキラは前戯もそこそこに、私の口元に勃起したちんぽを押し付けてきた。嫌な匂いがした。

仕方なく、彼が求めるように金玉や裏筋を丁寧に舐め上げた。

アキラは反応していたが、私が濡れる事は無い。


挿入もいきなりで、痛かった。腟の奥が渇いていた。

彼は私の反応を確かめることもせず、ただひたすらに自分のリズムで動いている。

私は、目を閉じた。

そして、懸命に優太のことを頭に浮かべた。

彼の温かい手のひら、優しく名前を呼ぶ声、私を女性として見てくれるあの視線。

今、私の上に乗っているのはアキラだけれど、脳内で私は優太に抱かれていた。


「……っ」


私は声を殺して、必死に演技をした。


妻として求められる反応を、優等生のように完璧に演じ分ける。夫の期待通りに、愛されている妻のように振る舞う。

私の身体は冷え切っているのに、心だけが優太の元へ逃げ出し、現実のこの行為を客観的に見つめていた。

アキラが射精し、何も言わずに背を向けて眠りにつくと、強烈な虚無感が私を襲った。


静まり返った寝室で、私は天井を見上げる。

隣で規則正しい寝息を立てる夫。私は妻として、この家の空気を守るために、自分自身の本音を殺し続けている。




私の身体は、誰のものなのだろう。




この虚しさは、どれだけ優太を求めても埋まることはないのだと、突きつけられたような夜だった。

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