第三十七話 「ホンブル市闘技大会第二回戦」
「<閃光切り>!」
「<衝撃弾>!」
「<電撃放射>!!」
「<白の息吹>」
「<岩隕石>」
「<黒煙鳥>!!」
「六式<破裂特攻>」
「<毒殺切断>」
第二回戦の始まりとともに、英雄と呼ばれた者達は一斉に一人の老人目掛けて、各々の魔法攻撃を仕掛けた。これを見ていた名も無い剣闘士や、観客において老人を知らない者は困惑していた。
何故、あれほどの強者達が一斉に老人なんかを攻撃したのかと。
オーバーキルになるのは明白だと。
しかし......
「予想以上にやばいのお... 解除<全反射>」
八人の英雄達の攻撃が文字通り八方から老人に迫ってきていたのだが、その老人の独り言のような魔法詠唱が終わると同時に、八方からの攻撃が進行とは反対方向に動きを変え始めたのだ。
「何!? これは不味い! 防御の陣形を取れ!!」
「はっ!!直ちに!!」
ラファエルの怒涛の掛け声と共にラファエルを含めた六人の男達は互いを庇い合うように陣形を一瞬で組み立て始める。
「零式<防御盾>」
元クリーンブラックのキーシャは冷静に自分を守る盾を前方に展開した。
「クソが! 簡単にはいかんか! <階層降下>」
犯罪王と一部の団体から呼ばれているガルデモは攻撃が当たらないように、自身を魔法で地下に移動させた。
一方、何が起こっているのか理解できていないその他の剣闘士達は、戦闘を忘れ、ただ老人から跳ね返ってくる色とりどりの魔法を眺めている。
観客席では貴族の護衛をしている者や、マジックアイテム職人達がごそごそと動き出し、防御魔法を発動させている。
そして、
八つの老人を殺すはずだった強力な魔法は闘技場を轟音と共に駆け抜け、観客席となっている赤土色の壁に直撃した。
大量の粉塵が空に舞い上がり、観客席側からは歓声と悲鳴が入り混じった音だけが聞こえてきた。
老人について知っている者や、臨場感満載な戦闘好きの物好きな観客は嬉々としてこの状況を受け入れ、たまたま観戦に来ていた者や老人のことを知らなかった者達は必死で闘技場から出ようと走り回っていた。
『こ、これは何ということでしょう!! 一瞬にして決着がつきました.... 観客の皆様! これがホンブル市闘技大会の醍醐味でもあります戦闘です!かつてこれほどまでに臨場感のある戦いが観れたでしょうか!!!いや、少なくとも私は観たことがない!! 観るのは自己責任ですので逃亡しても結構! ただ、この後の戦いを見逃すような腰抜け戦闘観戦者はいないと信じておりますが! おっと...話がそれました。 第二回戦を勝ち抜いたのは剣闘士、モヴィルス・シカイ・ショックだ!!!』
八人の英雄達は己の攻撃魔法を反射されただけで死ぬような器ではなかったが、さすがにこれ以上の戦闘は危険と判断されたため第二回戦は一瞬にして終わった。英雄達以外の死傷者の数が馬鹿にならなかった所為もある。
ーーーソンことロルトはリンと別れた後、第五回戦の準備のため冒険者ギルドのスタッフルームで自分の防具を受け取っていた。
「ソンさん 第二回戦見ました? まさかモヴィルス・シカイ・ショックが出場するとはね...」
「あれは驚きましたよ。初めて開催した田舎の催しに伝説級の人物が出るなんて思っても見なかったですね」
「ソンさん 田舎とおっしゃいましたかね」
スタッフの急激な顔の変化を察したソンは自分の失言に気づき、そっとスタッフルームからフェードアウトした。
ソンはスタッフルームを退出し、闘技場を出た。外の様子を偵察しているビルことウィルに会うためだ。
ネイタウンはソンが知っている穏やかな街並みではなくなっていた。闘技大会のお陰で首都にも引けを取らない賑わいを見せていたのだ。あらゆるところに即席の出店やサーカス場、娯楽施設などが構えられている。
ソンはそんな祭りのように賑わっている人々を掻き分け、人の少ない畑地帯に続く道を目指していた。
すると、ポンポンとソンの肩に手を置かれていることに気づいた。
急いで振り返ってみると、そこには二人の老人が立っている。
「あの...なんでしょうか?」
「儂らは君と話がしたいんじゃよ」
「お話ですか... すみません 自分は今から向かわねばならない所があるので... 闘技場の近くにある喫茶『ストリア』なら自分よりも話上手の方がたくさんいますよ」
ソンは面倒だなとも思いながら相手の機嫌を損ねないように打開策を提示してみたが、二人の老人は顔を顰めてソンの提案を聞こうともしていない。
「君、名前は?」
「....あー ソンです。」
すると、一人の老人がソンの耳に顔を近づけて周りには聞こえないように耳打ちをした。
「知っているぞ。君はソンでもロルトでもないということを。」
ソンは瞬時に後方へ身を翻し、正面の二人の老人を見据える。
「貴様ら... 何者だ?」
「警戒するな 儂らは敵ではない。 よく考えて行動するんだな。 お前さんの駒と第五回戦に出場する前に少し話をしようではないか。」




