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第三十話 「拡散希望!『ホンブル市闘技大会』」

 ホンブル市でネイタウン闘技大会が開催されるという正式な宣伝はすぐさま各市へと届いた。デヴォルカス連邦共和国は広大な国土を有しているため主要都市の支配はある程度市に一任している。ソウルポリスは首都ということもあり政府が直接の支配をしているが、他の都市では各々の自治が成立している。例外は治安維持兵の管理は政府に申請する必要がある事などだが。都市が政府から独立した存在とならないために都市同士はお互いに連携することが義務付けられている。よって今回ホンブル市が各都市に宣伝を依頼したため、闘技大会は今や国中の者が知る話題となっていた。




 ーーーソウルポリス四番街治安維持兵物見櫓に元悪魔討伐作戦第二陣ソウルポリス治安維持部隊隊長のファル・ボーンの姿があった。ファルは『悪魔』を討伐するために以前、第二陣を率いる隊長を任せられていた。元々戦闘に携わりたかった一般市民のファルは治安維持兵に志願し、必死の努力で一般治安維持兵ながらも緊急に召集された討伐部隊隊長という名誉ある地位を獲得した。やっと市内をただ監視する仕事から解放され、本来やりたかった戦闘に関わることができたファルであったが惜しくも討伐対象であった『悪魔』に部隊は瞬殺され、手傷を負ったファルは報告を済ませ休養をとった後、また元の監視の任務に戻されていたのだ。


「はあ あのクソ『悪魔』め... あんな力は反則だろ....」


 建物の屋上に設置された物見櫓から静かな夜のソウルポリス市内を監視していた。近頃、政府により建てられた監視塔の所為で治安維持兵の見回りの仕事は減り、その分市内に転がっている焼死体の回収作業が増えている。


「俺は死体回収や人間観察がしたくてこの仕事を選んだわけではないんだがな....」


 一般治安維持兵の面子は見回りの仕事が減ったことを喜んでいたが、ファルは反対だった。ファル自身、以前は見回りなど戦闘から離れている仕事は好きではなかったのだが死体を回収することと比較すればマシな仕事だったかもしれない。


「自分が好きではなかった仕事に後悔する日が来るとはな.... 俺も落ちたものだ....」


 自虐交じりに溜息をついているファルの様子を普段から見ている同僚のポムスは、もういちいちファルの言動に返すことが面倒になっていた。しかし、今日はファルのウザい独り言を消滅させるかもしれない返答をポムスは持っていた。この最終兵器はもしかしたらファルをどん底(自称)から救い出してくれるかもしれない。今日の仕事が終わるまで最終兵器を隠し持っていたポムスはもうすぐ勤務終了時刻が回ってきていたので早速ファルに使ってみることにした。


「なあファルよ。ホンブル市で今度闘技大会が開催されるらしいけど知ってるか?」


「!? 闘技大会だと? それは本当か?」


「ああ てか市内でも宣伝してただろ。 お前ホントに監視の仕事してたか? まあ無理もないか....この物見櫓と自宅以外ここんところ外出してないもんなあ」


「それはどんな内容だ? いつ開催する? 仕事と被っていたら.... 関係ねえ!」


「俺も詳しくは知らない たまには新聞でも買ったらどうだ? 内容はあれだが宣伝欄に載ってるぞ」


「いいこと聞いた! もう傷も完治したことだし準備しよう ありがとうな!」


「おう...お前って感謝の言葉言えるのな... まあお前の腕はそこそこのものだし行ってみてもいいとは思うぞ」


 勤務時間が終わったファルはすぐさまポムスが買った新聞を譲り受けた後、自宅へと帰った。おそらく準備にとりかかるのだろう。ポムスは何か一つのことに熱中するファルを羨ましく思った。




 ーーーコルノン市。デヴォルカスの主要都市の一つでありながら最も治安が悪いことで有名な都市。このコルノン市のある建物の地下でホンブル市闘技大会の話で盛り上がっている集団がいた。


「ボス我々も出場するんですか? 最近建設されたと言われる闘技場の近くでは『モンスター』が出現するらしいでっせ!」


「腰抜けが! 貴族の連中でも護衛をつけて久しぶりの祭りを楽しむというのだぞ 我々が行かなくてどうする?」


「観客相手に粉を売るのなら分かるのですが、別に出場しなくてもいいんじゃないですかね?」


「折角亜人の仲間が入ったんだ。小手調べに丁度良い。ギプロス!! 行けるな?」


 人間の上半身と馬の首から下の全身で構成された半人半馬の亜人、『ケンタウロス』。ギプロスと名をボスからつけられた『ケンタウロス』はボスが尋ねると静かに首を縦に振った。人間の上半身であるので人間同様に話せるのだが、あえて言葉に発しなかった。無論、闘技大会に参加するつもりだったのだ。


「なるほどギプロスが.... ボス、粉の販売よりも大会での優勝の方を重視してません?」


「当たり前だ 我々が力で負けるなどありえん!」




 ーーーミャンチョン市。デヴォルカス主要都市の一つで領土の約四割が湖に覆われている水源に恵まれた都市。湖の名前は『ディープブルー』。この湖で釣りをしている三人の年配の男性がいた。ここでも話題はホンブル市闘技大会について。


「おもしろそうじゃの... 観客として見て見たい気もする」


「観客は各自で身を守るためのマジックアイテムを持っていく事とあるぞい 『モンスター』がでるとな」


「.... 俺は出場することにしたぞ」


「おいおいマジかいな お前さんが出るような大会ではないぞ 確かに歳は食ったが相手が弱すぎるじゃろ。もしかして頭の方がボケてしまったか?」


「俺はジジイよりは若い! ホンブル市だぞ、この宣伝を正式にしてきたのは 臭うだろベイジョンが...」


「考えすぎだ ベイジョンが絡んでるのはソウルポリスの監視塔の方じゃろうに」


「まあ奴でなくてもなんか臭うだろ? 暇つぶしに行ってみるぞ 魚を待つよりも楽しそうだ」


「なら儂も行くわい」


「....儂も」




ーーーダロスボン市。デヴォルカス主要都市の一つ。ここは貴族の別荘地で構成されている都市と言っても過言ではない。一人の貴族が広大な土地を所有しているため主要都市の中で最も人口密度が低い都市でもある。このダロスボン市でも一際広大な土地を所有するある貴族が己の別荘の庭で執事とホンブル市闘技大会について話していた。


「アルファンよ。儂らも出場しようと思う。最近やることもなく暇だったのでな」


 手に持った紅茶のカップを執事に渡しながら己の決定事項を報告した。


「畏まりました。旦那様。では誰を出場させますか?」


「最高のグラディエーターがいるだろう。かつての小国ジオカイアの王の力を見てみようではないか!」


「承知致しました。至急用意致します。」



 ーーードルーノン市。最下層。

「55 言われた通りに殺してきてねえ 対象の場所は特定できるのかしら?」

 

「04 俺を誰だと思ってる? レジスタンスなんてそんな新米を探すには強烈な匂いを辿れば一発だぜ 闘技大会にでも行ってみるさ」


「期待してるわあ」





 ーーーホンブル市闘技大会の反響は予想以上に大きかったようだ。



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