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BEHIND OPS:02

 デヴォルカス連邦共和国の主要都市の一つシャルトゴル市。シャルトゴル市の主要産業は食料生産という事になっている。市の約七割を締める面積はほぼ広大な畑によって埋め尽くされており、建物もほとんど立っていないので、地平線をどこからでも眺める事ができる。ここで生産された食料はデヴォルカス中の都市に配給されるため、国民のお腹事情を司る非常に重要な都市として政府から主要都市の中でも最も厚い手当を受けている。


 しかし本当に食料生産が盛んな都市というだけでそのような優遇をされるのだろうか。ホンブル市も人間が生活できる地域は広大ではないが、そこそこの食料生産率を誇る都市である。食糧生産率という観点でこの二つの都市を比較すると、さほど大きな差が開いているわけではない。にも関わらずシャルトゴル市はホンブル市の数倍もの手当を政府から受けているのだ。


 何故そのような差が生じるのか。


 それはシャルトゴル市の広大な面積を誇る畑はただのカモフラージュだからである。


 そう、シャルトゴル市の広大な畑の地下にはデヴォルカス最大の軍事施設があるのだ。


 軍事施設の名前は『コインリスト秘密軍基地』。胡散臭くも、デヴォルカスの四台国長の一人の名前が付けられている。


 『コインリスト秘密軍基地』はその名の通り、秘密にされている基地であるので、デヴォルカス軍の中でもこの存在を知る者は少ない。施設内の大半は魔法兵器や生物兵器などが格納されている倉庫が占めていて、残りのエリアには諜報部の作戦本部が設置されている。


 その『コインリスト秘密軍基地』の諜報部の作戦本部がある一室には大きな円卓が中央に置かれており、その円卓を囲うようにして黒色の革製の高級チェアが十二脚設置されている。


 主にこの部屋では諜報部が作戦を練る際に使用するのだが、今この部屋には諜報部以外の者の姿がある。十二脚のチェアに腰をかけている者は全部で七人、残りの五脚の内、四脚のチェアの前には円卓の上に白色の円柱型の物体が置かれていた。この物体は通信系マジックアイテムである。通常、通信系マジックアイテムの使用は制限されており、特殊部隊や高官の者しか使用を許可されていないが、それでも通信範囲に限界がある。しかしこの白色の円柱型のマジックアイテムは驚くことに通信範囲に限界がない。そんな超高性能マジックアイテムがこの部屋には四つも置かれているのだ。


 そして、このマジックアイテムを使用できる者達は当然、この国の上位四人に入る『四大国長』と呼ばれる者達である。『四大国長』は会議に直接出席することはないが、マジックアイテムを使用して遠方から声のみで会議に出席する。コインリストと呼ばれる者も一員だ。


 デヴォルカス政府の重鎮達は今この部屋で、今後の国の作戦会議をしているのだ。数週間前に国長が緊急対策本部を政府宿舎の地下に設置したが、その時は諜報部の者達のみの参加だった。



「ーーーー以上の通り、ソウルポリスで起こった爆発騒動においても、近頃のポスター騒動もこの広い我が国には微々たる影響しかでておりません。」


「では<クリーンブラック>を倒すような連中を放っておくのかね?」


「そのような愚行を国が取るわけにはいかん!」


「ならば抹殺しろ 諜報部は何をしている!? 無能が」


「この広い国でアリを探すのには人員と金がかかるのだ。それこそお前のところの治安維持兵の仕業なんだろ 責任を取るのは貴様の方だ」


「一般住民を治安維持兵にそもそも組み見込まなければ良かったのだ。我々の治安維持兵の数は軍人よりも多いんだよ 全て管理できるわけなかろう」


「怪盗ジャッジが関わっているのだろう? まずはそっちを叩くべきだ」


「今までろくに対処してこなかったツケが回ってきたのだよ <クリーンブラック>は何をしていた!?」


「我々だけに責任を押してつけるのは止めてくれたまえ いつも面倒な処理だけ回してくるくせに 事後処理の立場になって一度は考えてみろ!」


「『悪魔』が出たならこちらも『悪魔』で対抗すれば良かろう」


「まだ実験段階だ 勝手に我々の研究に口出しするのは止めろ」


「研究ばかりせずに、少しくらい成果を出したらどうだ? 金の無駄だよ」


「国の内情ばかりに気を囚われすぎだ! アムソトラル王国の一件はどうする気だ?」


「デヴォルカス内が最優先事項であろう!」


「人口増加を操作できなければ『MAGIC CODE』の一部に背くことになるぞ?」


「どうせ我々の力では、できることも限られるのだ。国民の操作が完了すればレジスタンスなど放っておけ」


「まずは貴様らが責任を取ってからだろうが! 上の者には責任が伴うものだぞ!!」



 ドン!!



 突如、部屋の扉を勢いよく開ける音が響き渡った。責任のキャッチボールをしていた大人達が全員話を止め、音のした方を振り返る。



 そこには十二脚のチェアの内、一脚空席だったチェアに座るべき者の姿がいた。つまり、遅刻してきた者がいた。この重鎮が勢揃いしている会議に平気で遅刻して来れる者がだ。


 ベイジョン・ダウン・フォルスマス。デヴォルカス連邦共和国最強の魔法戦士で、政府が五年に一度開催する『ソルジャーゲーム』の優勝者でもあり、その力は兵器クラスの威力を誇る。デヴォルカス連邦共和国は建国以降、外国と大きな戦争はしていない。しかし、デヴォルカスに吸収される小国はこの三十年で四つを越えた。この四つの小国を小隊のみで堕としたのがベイジョン・ダウン・フォルスマス、又の名を『国殺し』である。


 ベイジョンは軍所属ではないが、優秀な兵士を率いた指揮官でもある。無論、優秀な兵士と言っても<クリーンブラック>以上の手練れのことだが。ベイジョンはその圧倒的な人間離れした強さから政府に一目置かれ、上層幹部達にも恐れられている存在だ。国を堕とせる力を持った人間を不快にさせるほど幹部達も愚かではない。


 そんな最強の戦士、ベイジョンも数々の戦いを生き抜いてきたため無傷ではない。彼は、顔の鼻から上は皮膚がない。最強の金属、アダマンタイトで加工された外骨格で覆われており、遠目から見ると骸骨に見えてくるほどだ。ベイジョンは昔、近距離で敵から強烈な攻撃魔法を顔前で喰らい、顔半分が焼け焦げてしまったのだ。その翌日、何者かによってベイジョンは治療を受け、骸骨の顔で帰還して来た。また、目の瞼も消失してしまったので乾燥から目を守るために目の部分に保湿のための赤い液体が注入されているゴーグルをいつも骸骨の目に装着している。


 黒い軍服を身に纏い、純白の手袋を装着したベイジョンがゆっくりと円卓の空席だったチェアに腰をかける。彼も今や初老と呼ばれる年齢だったので、最強の戦士でも歩き方だけ見れば普通のオジサンだ。


「遅れて来てしまったが、遅れて正解のようだな。 特に話も進んでいないのだろう?」


「...... あ ああ 君が来るまで軽く雑談をしていただけだ。これからが本番だよ....」


 ベイジョンの圧倒的存在感によって怖気付いた幹部が、掠れ声で言い訳をして来た。まあ、ベイジョンの場合、気に入らない者は例えデヴォルカス政府の上官であっても平気で殺してしまうのだから怖いと感じない方が不思議かもしれないが。


「なるほど..... 私が来るまで定刻を過ぎても『四大国長』がお聞きになっている前で雑談をしていたのか。まるで、学校だな。 私は学校に行った事はないがな」


 幹部達が苦笑いをする。ベイジョンの前で笑っていいのか駄目なのかも判断しかねたからだろう。中途半端な解答だ。


「まあいい。国長殿! どうなされますかな?」


 今まで一言も喋らずに、マジックアイテム越しに会議を聞いていた国長にベイジョンは直接質問をした。これが一番手取り早いやり方だとでも暗示しているように。


『さすがだなベイジョン。こちら側まで存在感が伝わって来るぞ。』


「恐れ入ります」


 ベイジョンは白色の円柱型の物体に対して頭を下げた。通信系魔法でも映像までは伝わらないのだが。


『いい機会だ。国民に対して色々実験しても、レジスタンスを言い訳にすればどうとでもなるまい。ベイジョンよ。お前にそこの幹部達の指揮権を委ねる。国民の統制を徹底させよ!』


「はっ!! 必ずやご希望に沿える結果を報告致します」


『よろしい 国殺しの名を国民に知らしめる良いチャンスだ。 他の者達もベイジョンに従うように。 以上だ』


 円卓に座っていた残りの幹部達が一斉に返事をする。




 これよりベイジョンによる恐怖の支配政治が始動することになった。



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