BEHIND OPS:01
「いつもすまないな ジョン」
「何言ってる。お前達に比べれば大したことないさ。だが今回のオーダーはやけに多かったな」
「ああ これから俺たちのボスは暫く市内での活動から手を引くそうだ。だから俺たちだけで頑張らなきゃいかんのだ それで少しいつもよりオーダー数が増えた。」
「なるほど 今回の騒動の件か」
「勘違いするな あれは手助けしただけで俺たちの計画ではない ボスは別件だ」
「まあ なんでもいいが スカー、死ぬなよ これでもお前達を信用しているんだ」
「任せておけ それより ジョンよ 娘の方は大丈夫なのか? 家にはいないようだが」
「.... 勝手に人の家を調べるな ....お前達に言ってもしょうがないか。 あいつは俺に似たんだよ。 国を嫌ってるし、もう自立したんだ。」
「ほう その割にはあまり嬉しそうではないようだが」
「まあな 今あいつにとって俺は国に逆らえない頭の固い頑固な職人兼親父という存在だからな」
「ハハは! それは気の毒だな 今この国で最も勇敢な一般住民だというのに そのうち時が解決するだろう」
「気にするな 大人の世界だ 仕方ない」
「お前が一番気にしているのではないか?」
「笑わせるな もう用は済んだだろ? あまり国の危険分子である怪盗ジャッジ様に長居されると、これからのマジックアイテム製作が出来なくなるかもしれんぞ?」
「それは失礼した。では俺はそろそろ行くとしよう またな」
「おう」
スカーはジョンに別れの挨拶を済ませると発注したマジックアイテムの袋を抱えて、窓からソウルポリス一般居住区の夜の闇へと消えた。
「エマよ 気をつけろ これから長い夜が訪れる」
スカーが消えた後、ファシリア魔法道具店の店主であるジョン・ファシリアは独り言を呟くと、密かに製作していたマジックアイテムの仕事からひとまず解放されて一気に疲れが襲ってくるのを感じた。
「そろそろ寝るか」
ーーーソウルポリス東移民居住区。ここにはソウルポリス西移民居住区と同様に周辺国から連れてこられた移民達が生活をしている。しかし、スラム街と化した西地区とは異なり、東地区は一般居住区よりも豪勢な建物に埋め尽くされている。住民用の住居に研究施設に研究施設、そして研究施設。そうこの地区の大半は研究施設によって構成されているのだ。この地区に連れてこられた移民は周辺国から連れてこられた優秀な研究家や魔法技術開発者、医者など。もともと政府が難民受け入れ政策をしたのも東地区に優秀な人材を取り入れることを目的としたもので、西地区など政府の眼中にはなかったのだ。
そんなソウルポリス東移民居住区の中心に聳える研究棟の地下に向かう集団がいた。彼らはデヴォルカス連邦共和国軍の面々であり、護衛されながら集団の先頭を歩く者は諜報部門の総指揮官であるジャン・デ・ゴン・ボリスだ。白髪の髪を綺麗に整えた高身長の初老の男は地下にある生体兵器研究室の重厚な扉を開け、護衛の者達を引き連れて中に入って行く。
ジャン達が入って来たのに気づいた研究者達のリーダーを務める腰の曲がった若干髪が薄くなりかけている男が応対をした。
「これは これは ジャン司令 どうなされましたかな? わざわざ司令がこんなところまでお出でくださるとは!」
「わかっているはずだ! 面倒な挨拶は抜きにしよう。 いつになったら悪魔の方は完成すのかな? 遅すぎてこの国に新たなテロリストが生まれたぞ」
「もう少しです。もう少しで臨界点に達するのですよ。臨界点に達する直前は長いラグが発生するので今その対応をしている段階でございます。 臨界点に達し次第で悪魔を自由に発動させられます!」
「なるほど 詳しいことは分からんが、急ぎで頼む。国長も首を長くして待っておられるのだ。あまり時間はないと思え!」
「承知致しました。我々の全力をもって完成させます!」
「よろしい。 まあ現状を確認しに来ただけではない。 新たな任務を通達しにきた。今のプロジェクトと並行して事にあたるように。」
「はっ!」
「先ほども言ったが、今市内でテロリストが暴れ始めている。<クリーンブラック>も派遣したがほぼ壊滅したほどだ。テロリストのメンバーに精神系悪魔がいる。今はそれほどまで被害はでていないが、今後我々政府に反抗してくる危険性がある。そこで国長は緊急対策本部を設置した。その会議はまもなく開催される。お前は私のアシスタントとして出席せよ!」
「承知致しました。ではご同行させて頂きます。しかし緊急対策本部とは!」
「仕方あるまい。怪盗ジャッジの戯言が、徐々に現実味を帯び始めているのだ。早めの対策が必要になってくるだろう」
「怪盗ジャッジが関係あるのですかな? 彼らは確かに危険分子ですが、軍が本格的に動けば問題ないはずでは?」
「ああ 奴等の現在の活動よりも気になるのは、少し前に政府に届いた犯行予告だ。」
「そんなもの、信用するのですかね?」
「当初は誰も信用してはおらなかった。しかしだな今回のテロリスト騒動の全容解明のために一応、確認してみたのだよ」
「それでどうだったのですか?」
「騒動の内容については述べられていなかったのだが、犯行開始日時が一致した。」
「犯行開始日時ですか。ということは犯行終了日時は記載されていましたか?」
「犯行終了日時は政府による。 とだけな」
「ただの悪戯でしょう。偶然重なった方が現実味がありますぞ」
「そうだな。悪戯かもしれん。ただ犯行内容を無視はできないのだ。偶然でも一致した今はな」
「犯行内容とは?」
「『この国を頂戴致します。国民と共に』だ。」
「信憑性に欠ける内容を信用するのですか?」
「<クリーンブラック>はテロリストを追い詰めたのだ。だが逃げられた。途中で怪盗ジャッジの邪魔が入ってな」
「なるほど、国民と共にとは、テロリストと共にと考えれば、悪戯よりは信憑性があると....」
「推測の域を抜けんが、芽は早めに潰しておくべきだ。今後国民が奴ら側につくのを阻止せねばならぬからな」
「それで私のもとを訪れたのですね」
「その通りだ」
二人は会話をしながら研究棟を出ると、政府専用の馬車に乗り、緊急対策本部がある政府宿舎に向かった。




