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第十二話 「怪盗ジャッジ vs <クリーンブラック>」

 ウィルは突如自分たちの前に現れた者達を観察する。三人はどれも同じ漆黒のローブを羽織っており、顔には白色の仮面をつけている。背格好から判断するとおそらく三人の内二人は男で、ウィルから見て左にいる者は女だろう。観察を続けながら今起こった状況を整理していると、ロルトが叫んだ。


「この先にいるのは、街の住民を苦しめる政府直轄の特殊部隊<クリーンブラック>。俺たちの街での宣伝活動を妨害をする者達だ。 住民のヒーローである御主らに頼みたい! 奴らを排除してくれ!」


 ウィルはロルトの発言がいかに現実味のないことを言うのだと驚いた。いくら怪盗でも奴らは盗みが本職であるし、戦闘には加担しないはず、それを踏まえて言ったのであればロルトは藁をもすがる気持ちで頼み込んだのだろう。ただ怪盗が協力するはずなどないが、


 怪盗達はロルトの頼みを聞くと無視ーーーでなはく、三人揃って綺麗にお辞儀をした。それはまるで貴族が社交場でするような美しいお辞儀であった。


 そして、三人の中で真ん中にいた男がロルトに返答した。その内容はウィルが予想もしないものだった。


「住民のためであれば喜んでご助力致しましょう。政府の犬にはそろそろ退場して頂きます」


 そう言うと、三人は<クリーンブラック>がいる方を振り返り歩いていく。


「ワルサー、ファイブ ぶちかませ!」






 ーーー対象が運河にかかっているこの橋に来るというチャーリーチームの読みは見事に当たった。ブラボーチームは対象をみすみす逃した上に大きな損失を抱えてしまったため、今回はチャーリーチームに応援を要請したのだ。


「予想的中だな! さすがはチャーリーチームだ」


「残業代はもらいますよ」


「ああ ここで仕留めたらな」


「その言葉忘れないでくださいね」


「おう .....ついに出てきたか。本命の悪魔のご登場だ。エコーチームの無念を晴らすぞ!」


「了解 ....話逸らしたな」


 <クリーンブラック>の全隊員が橋の中腹からこちらに歩いて来る悪魔に注目したときだった。


「隊長!! 上空から三人の影が橋に接近! おそらく怪盗ジャッジ達の模様!」


「何!?」


 怪盗ジャッジ。いつも複数人で行動し、貴族の館から貴重な代物を盗んだり、はては政府の建物に侵入して極秘資料までも持って行ってしまう今デヴォルカス連邦共和国においても最も政府が危険視している存在だ。<クリーンブラック>と怪盗ジャッジの面々は幾度となく対峙していたが、いつも逃げられていた。今回は橋の上、がちんこの戦闘をすることになるだろう。さてどちらが勝つかなと考え始めた隊長であったが、一つ気がかりなことがある。


「このタイミングで出てくるとは、さては悪魔と怪盗ジャッジは仲間なのか!?」


 それは最悪だ。<クリーンブラック>でも対処しきれない。頭の中で悪くなる状況の数々が展開されていく。その一つ一つに対する対処方を練っていると、


「怪盗ジャッジがこちらに向かってきます!! 隊長! 攻撃許可を!!」


「クッソ! 攻撃開始だ!!」





 ーーー橋の上はもはや戦場と化していた。怪盗ジャッジの開幕の強烈な一撃が<クリーンブラック>を襲い、数人の隊員が吹き飛ぶ、それに応じるように<クリーンブラック>側もあらゆる角度から強力な攻撃魔法を放つ。


 橋の左右の縁を走りながらワルサーとファイブは<クリーンブラック>までの距離を詰め、応戦する。


「<爆破特攻(グレネードランチャー)>」


「<連続打撃特攻(マシンガン)>」


 ワルサーとファイブの近くにいた<クリーンブラック>の隊員の肉片が飛び散った。すると空いた配置を埋めるようにして後方から別の<クリーンブラック>の隊員がワルサーに接近する。


「零式<破裂特攻>」


 ワルサーを攻撃してきた隊員を屠ろうとファイブが魔法を放とうとするが、ファイブの動きを封じるために別の隊員が剣で切りかかってきたため対処仕切れなかった。そしてワルサーに攻撃が直撃し、後方に吹き飛ばされたが、空中で方向転換をし、なんとか地面に叩きつけられることを回避した。


「なかなかやりますね。政府の方達」


「これからだよ。今だ!! プランBを開始!!」


 隊長と思わしき人物が命令すると、残った隊員が一斉に同じ魔法を唱え始めた。


「「「「「「「「火系攻撃魔法<火炎放射 改>」」」」」」」」


 すると運河にかけられた橋を覆うほどの巨大な炎がワルサーとファイブを襲う。


「これはさすがに不味いな 一旦引くぞ!」


 ワルサーとファイブは全速力でウィル達がいる橋の中腹まで下がる。しかし、巨大な炎の壁はもの凄い速さで迫ってきていた。


「「そろそろ私達の番ですね」」


「<聖女の涙>」


「<激風>」


 ジーンが<聖女の涙>を唱えると、空中から人一人が入れるほどの大粒の液体が複数出現し、先ほどワルサーとファイブに命じた男の魔法、<激風>により大粒の液体が迫り狂う炎の壁と激突した。

 そして、炎と液体が衝突すると今度は爆発した大量の蒸気が一気に橋を駆け抜ける。それにより辺り一面はどんどん霧に包まれていく。


「ノックの旦那!今のうちに引き返すぞ! 行き先は橋の下だ! そこから地下を通れば、馬車交通のホンブル方面交差点に出るはずだ!!」


「了解!!」


「そして、怪盗ジャッジの皆さん今回は本当に助かった! この恩は必ず!」


 ウィルは三人の怪盗達の真ん中にいた者へと声をかけた。


「いやはや これからは我々の時代ですぞ 協力し合うべきですよ。 ウィルさん達が地下に入る頃にはこの橋は運河の中に沈んでいると思われるので、しばらくあそこの<クリーンブラック>達は来ないでしょう。では」


 二人は話を終えると霧の中に消えていった。



 そして、その後しばらくすると霧の中を捜索していた<クリーンブラック>の隊員もろとも橋が陥落した。


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