第十話 「政府直轄特殊部隊<クリーンブラック>」
「こちらエコー対象を確認。第一陣の治安維持兵二人と同行している模様 送れ」
「了解。同行している二人の兵士も抹殺対象とする。人通りの少ない路地裏に入ったらそちらの判断で攻撃を開始せよ。 送れ」
「了解」
ーーーウィルとロルト、そして以前の討伐対象であり、現在ウィルたちの強力な仲間となったジーンはソウルポリス一般居住区とソウルポリス西移民居住区の間に設置されていた関所を爆破し、今は一般居住区エリアの街道を歩いていた。
「なあウィル、今更なんだが俺たちの装備しているこの鎧、目立たないか?」
ロルトは周りを行き交う人にも聞こえるような声でウィルに話しかけ、目配せをする。
「そうだな、そこの曲がり角の裏路地に入ろう」
ーーー「対象が路地裏に入った。攻撃開始まで ....三、....二、....一、攻撃。」
男の合図と共にウィル達を囲うように市内に立ち並ぶ建物の屋上に身を潜めていた者達は、遠距離から一斉に攻撃を仕掛けた。
「九式<破裂特攻>」
「九式<沈静化>」
「九式<破裂特攻>」
放たれた魔法はウィル達目掛けて、飛んでいく。そして着弾した。
「こちらエコー着弾を確認。対象の様子は.....何!? 消えただと!?」
「クソ..... こちらエコー狙撃失敗、対象は幻術によるフェイクだった。これより撤退する。 送れ」
「了解。幻術発動者は近くにいるはずだ。幻術のあった半径二ブロック内を徹底的に炙り出せ。あとはブラボーチームが引き継ぐ」
ーーー幻術を発動したロルトは裏路地から道を隔てた反対側の建物の影から自分の幻術に遠方から飛んできた魔法が着弾するのを確認した。あの攻撃がもし実物の本体に当たっていたらと思うと恐ろしい。
しかし、これで最も厄介だった者達の位置は把握した。あとはジーンが奴らを排除したら、街中で派手に宣伝をすれば今日の任務は終わりだ。
「なんて簡単な仕事なんだ.....」
溜息混じりに愚痴をこぼしたロルトは、メインストリートの集合場所へと急ぐ。
ーーー「こちらブラボー。対象に同行していたとされる治安維持兵の一人を確認。制圧する。送れ」
「了解」
ソウルポリス一般居住区のメインストリート沿いを歩く対象を確認したブラボーチームは人混みに紛れながら、対象の周りを囲うように徐々に接近していく。
そして、
「おい!そこの男止まれ! 我々は政府直轄の治安維持部隊の者である。 ウィル・クェーサー、お前に政府への反逆行為が確認されたため、ご同行を願う」
ブラボーチームによって四方から拘束された対象が渋々頷いた。そして彼らはメインストリートから少し離れた裏路地に向かう。そこには別働隊が控えていて、これから対象の身柄を預けることになっている。
裏路地に向かう道中初めて対象が口を開いた。
「そろそろか。」
「黙れ お前に弁明することはできない」
「デヴォルカス政府直轄特殊部隊の<クリーンブラック>さん達、お会いできて誠に光栄です。ただ貴殿らの行動はとても効率的で無駄がないので容易に行動が予測できる。案外大したことないのかもな」
「そのうるさい口はいつになったら消えるんだ? 喋るほどお前の処遇は悪くなるだけだが」
拘束したのにも関わらず、相変わらず余裕の態度をとる対象が気に食わなかったが、大体ブラボーチームが相手する連中は頭のネジが吹っ飛んでいる狂信者ばかりであるので、こんな状況は慣れっこなのだ。ただ何か嫌な予感がする。そう思っていたブラボーチームの面子であったが、目と鼻の先に別働隊が待機していた。
「お前の減らず口もここまでのようだな」
と言いかけたその瞬間、待機していた別働隊とブラボーチームを含めた者達が一瞬で吹き飛んだ。状況を整理するため周りを見渡したが、爆破ではないようだ。他の隊員も地面に蹲っているが外傷はない。これまでの己の経験から察すると風系攻撃魔法<嵐>か、一対多数の攻防戦において有効な魔法ではあるが、<クリーンブラック>の部隊ならば、まともに攻撃をくらうわけはない。しかし、あらかじめ対象は我々がこの裏路地に連れてくると見込んで、魔法を設置させていたのだろう。拘束された対象に油断したのは、<クリーンブラック>としてはあるまじき失態だ。
「クソ!やられた! 対象は何処へ行った!?」
「っ! メインストリートの馬車乗り場方面に走って行った模様!」
「何をぼさっとしている!! すぐに追跡しろ!!」
部下に命令を下すと、政府でも限られたものしか使用を許可されていない通信系魔法<交信>で先ほど、偵察させたエコーチームに連絡をとる。
「こちらブラボー! 対象の位置を示せ 送れ!」
「・・・・・」
「聞こえるか? もう一度言う! 対象の位置を示せ! 送れ!」
「・・・・・」
「まさか! これは緊急事態だ」




