第4話〜迷走のスクール・エスケープ
思わぬ事故で心と体が入れ替わってしまった、地味めな女子生徒の佐藤と、ぶっきらぼうな男子生徒の平野。
前話で周囲を巻き込む大騒動を起こしてしまった二人は、学校中から「生肉を求める野獣」と誤解され、追われる身となってしまいます。迫り来る追手と、容赦なく近づく昼休みの終わり。最悪の相棒と化した二人が、互いの尊厳と平穏な学校生活を守るために下した決断とは――?
緊迫(?)の入れ替わり学園コメディ、第4話の幕開けです!
「痛たっ……ちょっと、大股で歩かないでよ!」
「うるせえ、こっちだってこのヒラヒラした布のせいでスースーして落ち着かねえんだよ!」
裏庭の狭い茂みの中、二人は泥だらけになりながら這いつくばっていた。佐藤の体を借りた平野は、無駄に広い歩幅のせいで何度も枝に足を引っ掛け、平野の体を借りた男子は、めくれ上がるスカートの裾を必死に押さえている。どうにか追手の目を盗み、二人が逃げ込んだのは旧校舎の裏にある寂れた部室棟の影だった。
壁に背を預け、二人は同時に激しいため息をつく。
「……で、これからどうすんのよ。あんたのせいで私は『生肉を求める野獣』にされたんだけど」
「俺のせいかよ!? パイプ椅子置いたのは咄嗟の判断だろ! それより……」
平野(中身:男子)は、自分の大きな手――今は佐藤の手――をまじまじと見つめ、それから目の前にいる「自分の顔」を睨みつけた。
「いいか、ここからが本当の地獄だ。お互いの尊厳のために、絶対に守るべきルールを決めるぞ」
「ルール?」
「ああ。まず、俺の体で絶対に女子っぽい内股歩きをするな。あと、髪を耳にかけるのも禁止!」
「なによそれ! あんたこそ、私の体で胡坐をかいたり、ガツガツ頭を掻いたりしないでよね! あと、絶対にスカートの中を覗かないこと!」
「覗くかよ! 自分の顔がついた体なんて恐怖しかねえわ!」
ぎゃーぎゃーと小声で言い争っていると、ポケットの中でバイブレーションが激しく鳴り響いた。平野のスマホだ。画面には『木村:平野大丈夫!?マジで心配なんだけど!』の文字。同時に、佐藤のスマホにも部活の先輩から『次の時間にミーティングあるから遅れるなよ』と通知が入る。
そして無情にも、昼休みの終わりを告げる予鈴が学校中に響き渡った。
「……行くしかないみたいね」
「マジかよ……」
二人は最悪の相棒と視線を交わし、覚悟を決めて立ち上がる。それぞれの教室という名の戦場へ向かって、チグハグな二人の潜入任務が始まった。
第4話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに「生肉を求める野獣」という、10代の男女にとってあまりにも過酷なレッテルを貼られてしまった二人。
互いの体を限界まで酷使しながら、なんとか教室へと滑り込みましたが、周囲の生暖かい視線は冷める気配がありません。
今回は、普段は地味でおとなしい佐藤さんの体から発せられる平野くんの「野生の咆哮(?)」と、平野くんの強面な体でオロオロする佐藤さんのギャップを楽しく書かせていただきました。
お互いの尊厳を守るための戦いは、ここからさらに泥沼化(主に教室内でのパニック)していきます。
果たして放課後までに二人の誤解は解けるのか、そして元の体に戻る手がかりは掴めるのか――?
次回、第5話もどうぞお楽しみに




