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こちら神の子ですが異世界が喧嘩を売ってきますが、生き残った人類が強すぎです。  作者: ネコ雲


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イザナに弟子入り


「イザナ、招いてくれてありがと」


焼き肉の準備が整った頃、ツクヨがやって来た。


「おう、ツクヨ。来たか」


イザナが軽く手を上げる。


オーク焼き肉を食べに来るくらいだから、むさ苦しい男でも来るのかと思っていたテンたちだったが――。


「……」


三人とも、思わずツクヨを見つめてしまう。


そこに立っていたのは、「美魔女」という言葉がよく似合う美しい女性だった。


大人びた雰囲気をまといながらも、口元には気さくな笑みが浮かんでいる。


「どうしたの? そんなに見つめて」


「い、いえ……」


テンが慌てて視線を逸らす。


「綺麗な人です……」


フレイが素直に呟いた。


「ふふっ、ありがとう」


ツクヨは嬉しそうに笑った。


「そういえばツクヨ、今日の戦いにはいなかったみたいだな。どこ行ってたんだ?」


「今日は用事があって隣町に行ってたのよ」


ツクヨは残念そうに肩を落とす。


「帰ってきたら、町の外にゴブリンの死骸がいっぱい転がってるんだもの。びっくりしたわ」


「肉を狩り損ねたってわけか」


「そういうこと。せっかく楽しみにしてたのに」


ツクヨが小さくため息をつく。


その仕草に、テンはなぜか少し戸惑った。


そんなツクヨが、ふと三人へ視線を向ける。


「ところで、この子たちは誰?」


「こいつらか?」


イザナは三人を見る。


「空から落ちてきた居候だ」


「……」


三人の顔が一斉に不満そうになる。


自分たちは神の子だ。


ただの居候ではない。


そんな三人の気持ちが、顔にそのまま出ていた。


それを見たツクヨが、くすりと笑う。


「イザナにはもったいないくらい可愛い居候さんたちね」


「いるなら、やるぞ」


「いらないわよ」


ツクヨは即答した。


「私のところは、この子たちでいっぱいだから」


そう言って、花子の頭を優しく撫でる。


花子は気持ちよさそうに目を細めた。


「そういや、こいつらもツクヨの仲間なんだよな」


テンたちは、ツクヨの仲間についてまだ詳しく知らない。


三人が揃ってイザナを見る。


「……」


イザナは三人の視線に気づくと、面倒くさそうに眉を寄せた。


そしてツクヨへ視線を向ける。


「この子たちのことが知りたいのね」


ツクヨが察した。


「そういうことなら、私が紹介するわ」


ツクヨは三人へ向き直る。


「まず、この子が花子」


さっきトイレから出てきた、おかっぱ頭の女の子だ。


「よろしく」


花子が淡々と頭を下げる。


「そして、さっき屋根から顔を出していたのが、くいな」


その瞬間――。


屋根の向こうから、ろくろ首の顔だけがひょこっと現れた。


「よろしくお願いします」


「首だけで挨拶するなよ」


イザナが呆れた声を出す。


「すみません」


くいなの顔が、ゆっくり屋根の向こうへ消えていった。


そして最後に――。


「この子がタマ」


猫のような耳を持つ男の子が、ぺこりと頭を下げる。


「タマだよ。よろしく」


「よろしくお願いします!」


テンが笑顔で頭を下げる。


フレイも続く。


「よろしくです」


タケミも少し照れながら、


「……よろしく」


と呟いた。


「他にも仲間はいるけど、それはまた会った時に紹介するわ」


「ありがとうございます」


テンが頷く。


これでお互いの自己紹介も終わった。


いよいよ、待ちに待った焼き肉の時間だ。


炭火の上にオーク肉が並べられる。


ジュウウウウ……。


肉から脂が滴り落ち、炭がパチパチと音を立てる。


香ばしい匂いが辺りに広がった。


「美味しそうです……」


フレイが肉をじっと見つめる。


「まだ焼けてないわよ」


テンが笑う。


「分かってるです」


肉が焼けるのを待つ間も、皆の会話は弾んでいった。


イザナは酒を片手に、焼き上がった肉をゆっくり味わっている。


ツクヨは上品な仕草で肉を口へ運んでいた。


タマは肉が熱いのか、ふーふーと息を吹きかけてから食べている。


花子とくいなは、熱さなど気にする様子もなく肉を頬張っていた。


「美味しい」


花子が呟く。


くいなも幸せそうに肉を頬張っている。


その隣では――。


「うめぇ!」


タケミが負けじと肉を次々に口へ運んでいた。


「ちょっと、タケミ。そんなに急いで食べたら喉に詰まるよ」


「大丈夫だって!」


「もう、子供なんだから」


テンが呆れながらも、タケミの皿へ肉を取り分けてやる。


「ほら、ちゃんと冷まして食べなさい」


「自分でできるって」


「はいはい」


テンは笑った。


フレイも少しずつ肉を食べ、テンもゆっくり肉を味わっていた。


そんな賑やかな食事の中で、テンはふと昼間の戦いを思い出した。


箸を持つ手が止まる。


そして、ずっと気になっていたことを口にした。


「イザナさん」


「ん?」


「今日の戦いを見て思ったんですけど……どうして皆さん、あんなに強いんですか?」


イザナの箸が止まった。


「そのことか」


少し考えるように目を伏せる。


「皆、十年前の異世界からの大侵行を生き残った連中だからじゃねぇか」


「十年前……」


テンが小さく呟く。


「弱い奴は、あの時に大勢死んだ」


淡々とした言葉だった。


けれど、その目にはほんの僅かに寂しさが滲んでいた。


テンはその表情を見つめる。


フレイも黙ったままイザナを見ていた。


タケミも、先ほどまでの勢いを失っている。


三人は大侵行のことを知っていた。


けれど、地上で生き残った人間から、その話を直接聞くのは初めてだった。


そして、テンにはもう一つ引っかかった。


――十年。


あの大侵行から、地上では十年もの時間が過ぎている。


神の子である三人にとっては、つい最近の出来事のような感覚だった。


その時間の差が、今になって初めて実感として迫ってくる。


だからこそ、三人はこれまで地上へ降りてこなかったのだ。


「でも……」


ツクヨが肉を食べながら口を開く。


「異世界の連中は何が目的なのかしらね」


さっきまでの柔らかな表情が消える。


「毎回、あんな雑魚ばかり送り込んでくるなんて」


「そうだな」


イザナが竹刀へ手を伸ばす。


指が柄に触れる。


「次に大侵行が起きたら、全員俺がぶった斬ってやる」


その目には、強い決意が宿っていた。


「私も!」


テンがすぐに声を上げる。


「俺もだ!」


タケミも負けじと続く。


「私も頑張るです!」


フレイも小さな拳を握った。


だが――。


「けど、お前ら」


イザナが三人を見る。


「今日の戦いっぷりじゃ、次の大侵行が来たらすぐ死ぬぞ」


「……」


三人の動きが止まる。


言い返したい。


でも、言い返せない。


今日の戦いで、自分たちの力不足は嫌というほど思い知らされた。


オーク一体を倒すだけでも苦戦した。


それなのに、イザナたちは竹刀一本で簡単に倒していた。


テンは膝の上で手を握った。


「……強くなりたい」


小さな声だった。


タケミも悔しそうに拳を握る。


「俺だって……」


フレイはテンの隣で頷いた。


「私も、もっと力になりたいです」


そんな三人を見て、ツクヨがイザナへ言う。


「イザナ、言い方が厳しいわよ」


「戦場じゃ、弱い奴から死ぬ。それだけのことだ」


「それなら――」


ツクヨがニヤリと笑う。


「イザナが鍛えてあげればいいじゃない」


「俺が?」


イザナが嫌そうな顔をする。


「そうよ」


「面倒くせぇな」


「戦力は多い方がいいでしょ?」


ツクヨに言われ、イザナは黙り込む。


しばらくして――。


「……分かったよ」


ため息交じりに答えた。


三人が顔を上げる。


「強くなりたいなら、鍛えてやる」


「本当ですか!?」


テンの顔が一気に明るくなる。


「やった!」


フレイも嬉しそうに笑う。


タケミは少し驚いた顔をした後、拳を握った。


「これで俺も強くなれる……」


テンがタケミを見る。


「良かったね、タケミ」


「……うん」


タケミは照れくさそうに顔を逸らした。


テンは拳を握る。


――強くなりたい。


皆を守れるくらいに。


そして、立派な神様になるために。


フレイもテンを見ながら、小さく拳を握った。


――テン姉とタケミ君の力になりたい。


三人はイザナの前へ並んだ。


「お願いします!」


揃って頭を下げる。


「師匠!」


テンが元気よく呼ぶ。


「……師匠?」


イザナは少し困ったような顔をする。


「そう呼ぶのかよ」


「だって、これから私たちを鍛えてくれるんですよね?」


「まぁ、そうだけどよ……」


イザナは頭を掻く。


どこかむず痒そうな表情だった。


「よろしくお願いします、師匠」


フレイも頭を下げる。


タケミは二人のように大声で言うのが恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながら小さく呟いた。


「……師匠」


「聞こえねぇぞ」


「うるせぇ!」


タケミが顔を真っ赤にする。


テンがクスクス笑った。


「タケミ、もっと大きな声で言わないと」


「言わねぇよ!」


「もう、恥ずかしがり屋なんだから」


「だから違うって!」


その時――。


ゴォォォォン!


町中に大きな鐘の音が響き渡った。


全員が一斉に顔を上げる。


――本日二度目の鐘だった。


先ほどまで賑やかだった空気が、一瞬で張り詰める。


イザナが立ち上がり、竹刀へ手を伸ばした。


「……またか」


テンたちも立ち上がる。


さっきまで笑っていた三人の顔から、笑みが消える。

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