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こちら神の子ですが異世界が喧嘩を売ってきますが、生き残った人類が強すぎです。  作者: ネコ雲


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2/20

ろくろ首と花子さん



オークを回収したテンたちは、イザナの家へ向かって歩いていた。


戦いが終わった町では、すでに人々が集まり始めている。


「今日はオーク焼き肉だ!」


「肉を焼くぞ!」


「酒も持ってこい!」


あちらこちらから、楽しそうな声が飛び交っている。


先ほどまで魔物と命懸けで戦っていたとは思えないほど、町は明るい雰囲気に包まれていた。


その光景を、テンたちは物珍しそうに眺めている。


「わぁ……!」


「すごいです……!」


「へぇ……」


三人とも、首を左右に動かしながら町の様子を眺めていた。


その様子を見たイザナが、口元を緩める。


「なんだ、お前ら。町の中がそんなに珍しいのか?」


三人が一斉に頷いた。


「そんなに珍しいなら、明日案内してやるよ」


「本当ですか!?」


テンの顔がぱっと明るくなる。


「はい! お願いします!」


フレイも嬉しそうに頷いた。


「楽しみです」


タケミは興味がないような顔をしていたが、横目ではしっかりと町を見回している。


「……まぁ、暇なら付き合ってやるよ」


「タケミ、素直じゃないんだから」


テンがくすっと笑う。


「うるせぇ!」


「はいはい」


テンは弟をあやすように笑った。


「そんなやり取りをしながら、四人は家へ戻っていった。


家に到着すると、イザナは三人の姿を見て眉をひそめた。


「まずは三人とも風呂に入れ」


「え?」


「自分の格好を見てみろ」


三人は自分の身体を見下ろした。


泥。


汗。


そして魔物の返り血。


服も髪も、見るからに汚れている。


「……確かに」


テンが苦笑する。


「これは酷いです」


フレイも自分の服をつまみ上げ、顔をしかめた。


タケミも嫌そうに鼻をつまむ。


「俺、こんな臭ぇのか?」


「自分では分からないでしょ」


テンが呆れたように言う。


「ほら、タケミも早く入るよ」


「分かってるって!」


「はいはい。弟は素直にお姉ちゃんの言うことを聞く」


「誰が弟だ!」


「私から見たら弟よ」


「勝手に決めんな!」


「ほら、行くよ」


テンに背中を押され、タケミは不満そうに風呂場へ向かった。


その様子を見ていたイザナが、小さく笑う。


「仲がいいな、お前ら」


「誰がこんな奴と!」


「ふふっ」


テンは楽しそうに笑った。


しばらくして――。


「ふぅ……」


湯上がりの髪をタオルで拭きながら、テンが出てくる。


続いてフレイ。


最後にタケミが出てきた。


三人とも、先ほどまでとは別人のようにさっぱりしている。


その頃には、イザナが家の前にシートを敷き、その上に三体のオークを並べていた。


「さて、肉にするぞ」


「解体なら私に任せて!」


テンが自信満々に胸を張る。


「できるのか?」


「うん!」


イザナが少し意外そうに眉を上げる。


「じゃあ、任せるか」


テンはすぐにオークの前へしゃがみ込んだ。


そして――。


スッ。


ザクッ。


スパッ。


迷いのない手つきで刃物を動かしていく。


皮を剥ぎ、肉を切り分け、骨を避ける。


大きなオークの身体が、見る見るうちに食べやすい大きさの肉へと変わっていった。


「……おお」


イザナが感心したように声を漏らす。


「なかなかの手際の良さだな」


「ありがとう!」


テンは嬉しそうに笑う。


「フレイ、お願い」


「はいです」


テンが切り分けた肉を、フレイが魔法で凍らせていく。


白い冷気が肉を包み、表面がみるみる白く染まっていく。


「これで大丈夫です」


「凍らせてくれたから日持ちして助かるよ」


「一週間くらいは持つです」


「そりゃ助かる」


イザナは満足そうに頷いた。


その一方――。


少し離れたところで、タケミが何もせず立っている。


イザナがそんなタケミに気づいた。


「……」


口元がニヤリと歪む。


「おい、タケミ」


「何だよ」


「ただ飯ぐらい」


「俺だって戦ったわ!」


タケミがムッとする。


確かに戦闘では戦った。


だが――。


オークを倒すことはできず、解体にも参加していない。


今のところ、三人の中で一番役に立っていない。


「何かやることねぇのかよ」


タケミは周囲を見回す。


だが、自分が何をすればいいのか分からない。


「……」


結局、タケミは不機嫌そうに家の中へ入っていった。


「もう……」


テンは困ったように首を振る。


「タケミったら、すぐ拗ねるんだから」


その時だった。


「イザナさーん!」


突然、頭上から声が聞こえた。


「え?」


テンとフレイが同時に空を見上げる。


すると――。


ぬっ。


家の屋根の向こうから、人の顔が覗き込んできた。


「きゃあっ!」


「ひゃっ!」


二人は驚いて、その場に尻もちをついた。


だが、その顔は首を伸ばしたまま、何事もなかったかのようにイザナへ話しかけている。


「イザナさん。今日、お宅にツクヨ様がお邪魔してもいいかと言っております」


イザナは特に驚く様子もない。


「ツクヨの奴、オークの焼き肉を嗅ぎ付けやがったな」


「別にいいけどよ」


「ありがとうございます」


首の長い女は礼儀正しく頭を下げる。


すると――。


ぐぐぐぐぐ……。


伸びていた首が、みるみる縮んでいく。


テンとフレイは目を丸くした。


「えぇ……」


フレイの目が輝く。


「首が縮んでいくです!」


いつになく興奮した声だった。


「というより、首が長すぎるです!」


テンも驚きながら、首が消えていった方向を見る。


「もしかして……ろくろ首ですか?」


「そうだな」


「本当にいたんですね……」


テンの顔にも、嬉しそうな表情が浮かぶ。


神の子であるテンは、さまざまな存在について知識を持っている。


ろくろ首という妖怪の存在も知っていた。


しかし、知識として知っていることと、実際に目にすることは違う。


「初めて見た……」


テンは、ろくろ首が戻っていった方向を眺める。


その目には、珍しいものを見つけた子供のような好奇心が浮かんでいた。


すると――。


「うわぁぁぁぁ!!」


家の中からタケミの叫び声が響いた。


「何だ!?」


イザナが振り向く。


バタバタバタッ!


タケミが慌てて外へ飛び出してきた。


「ト、トイレに変な女の子がいたんだけど!」


その背後から――。


トコトコ。


おかっぱ頭の小さな女の子が歩いてくる。


「何だ、花子か」


イザナは平然としている。


「早いな。もう来たのか」


「うん」


花子は頷いた。


「待ちきれなくて先に来ちゃった」


「……」


テン、フレイ、タケミの三人が固まる。


誰?


どういうこと?


そんな疑問が、三人の顔にそのまま出ていた。


イザナは三人を見て説明する。


「そうか。お前ら、花子に会うのは初めてだったな」


そして花子を指差す。


「花子はツクヨの仲間の妖怪だ」


「あっ!」


テンが何かを思い出したように声を上げた。


「トイレに住んでいるという妖怪ね」


花子は真顔になった。


「違う」


「え?」


「トイレは汚いから、そんなところには住まない」


花子は胸を張る。


「少しトイレが好きなだけ」


「……」


テンの笑顔が固まった。


「そうだったのね」


若干引きつった顔で頭を下げる。


「ごめんなさい。勘違いしてたわ」


「分かればいい」


花子は満足そうに頷いた。


その横で、タケミはまだ警戒している。


「いや……トイレから女の子が出てきたら、普通は驚くだろ」


「タケミは怖がりね」


テンが笑う。


「怖がってねぇ!」


「じゃあ、なんであんなに大声出したの?」


「それは……」


タケミが言葉に詰まる。


フレイが首を傾げる。


「顔も引きつってるです」


「引きつってねぇ!」


「ほら、やっぱり怖がってるじゃない」


テンが笑う。


「うるせぇ!」


タケミが顔を赤くする。


そんな三人のやり取りを、花子は不思議そうに眺めていた。


やがて、オークの解体も終わった。


「さて、飯にするか」


イザナの言葉で、三人は準備を始めた。


炭をおこす。


野菜を切る。


肉を並べる。


食器を用意する。


テンは手際よく準備を進め、フレイも小さな身体で一生懸命手伝っている。


タケミも最初はふてくされていたが、何もしないのも落ち着かなくなったのか、黙って炭を運び始めた。


「タケミ、そこ置いて」


「分かったよ」


「ありがと」


「……別に」


テンはそんなタケミを見て、少し嬉しそうに笑った。


やがて準備が終わる。


炭火が赤く燃え、その上にオーク肉が並べられた。


ジュウウウウ……。


肉から脂が落ち、香ばしい匂いが辺りに広がっていく。


「いい匂いです……」


フレイが肉を見つめる。


「まだ食べちゃダメよ」


テンが笑う。


「分かってるです」


その時――。


「来たぞ」


イザナが顔を上げた。


道の向こうから、何人かの姿が見える。


一人はツクヨ。


その隣には、猫のような耳を持った男の子。


そして――。


「……あれ?」


テンが首を傾げる。


上空から、にゅるりと何かが伸びてくる。


「えっ?」


フレイが見上げる。


長い。


どこまでも長い。


「またです!」


ろくろ首の顔だけが、家の上からひょこっと現れた。


「遅くなりました」


「おいおい」


イザナが苦笑する。


「顔だけ先に来るなよ」


「すみません。身体がまだ向こうにありますので」


「どういう状態ですか!?」


テンが思わず突っ込む。


フレイは目を輝かせている。


「面白いです!」


こうして――。


神の子三人と妖怪たちの、初めての食事が始まろうとしていた。

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