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こちら神の子ですが異世界が喧嘩を売ってきますが、生き残った人類が強すぎです。  作者: ネコ雲


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19/20

ドラゴンどうしよ


――少し前にさかのぼる。


 魔人との戦いが終わった直後。


 イザナは、荒れ果てた町を見渡していた。


 建物は崩れ、道には瓦礫が散らばっている。


 かつて人々が行き交っていた通りも、今は静まり返っていた。


 だが、まだ戦いは完全には終わっていなかった。


「まだいるぞ!」


 町人の声が響く。


 イザナが振り返る。


 瓦礫の向こうで、傷ついた悪魔がゆっくりと立ち上がっていた。


 イザナは握っていた刀を持ち直す。


「まだ終わってないな」


「行くぞ!」


 町人たちも武器を構え直した。


 疲労で重くなった身体を引きずるようにしながら、それでも足を止めない。


 残っていた悪魔へ向かって、一斉に駆け出す。


 イザナも、その後に続いた。


 崩れた家の間を縫うようにして、最後の戦いが始まる。


 剣が振られ、悪魔が倒れる。


 瓦礫の上を駆ける者。


 傷を負いながらも武器を握り続ける者。


 誰もが、ここで終わらせるために戦っていた。


 そして――。


 最後の悪魔が、地面へ倒れた。


「これで……全部か?」


 町人の一人が息を切らしながら、周囲を見渡す。


 誰も動かない。


 新たな気配もない。


「……ああ」


 イザナが頷いた。


「今度こそ終わりだ」


 その言葉を聞いて、町人たちはようやく武器を下ろした。


 誰もすぐには口を開かなかった。


 荒い呼吸だけが、静まり返った町に残る。


 長かった戦いが、本当に終わった。


 その事実を確かめるように、誰もがその場に立ち尽くしていた。


 やがて――。


 戦いの音が消えたことで、別のものが目に入った。


 イザナは町の外れへ視線を向ける。


 そこには、巨大なドラゴンが倒れていた。


 大地に横たわる巨体。


 その身体だけで、周囲の建物が小さく見える。


 町人たちも一人、また一人とドラゴンへ近づいていく。


 誰もが首を上げ、その大きさを見つめた。


「……こいつ、どうする?」


 イザナが呟く。


「どうするって……」


 一人の町人がドラゴンを見上げたまま、言葉を失う。


 しばらく考えたあと、別の町人が口を開いた。


「食えるんじゃないか?」


「……食えるのか?」


「ドラゴンだぞ?」


「ドラゴンでも肉は肉だろ」


「まあ……そうだけど」


 町人たちは顔を見合わせる。


 そして、もう一度ドラゴンを見る。


 巨大な身体。


 太い四肢。


 それを前にしても、考えていることは結局、食料のことだった。


「これだけ大きければ、かなりの量になるな」


「食料には困らなくなりそうだ」


 イザナもドラゴンを眺める。


「確かに、捨てていくのはもったいないな」


「じゃあ……持って帰るか?」


 その言葉に、イザナが振り返る。


「どこへ?」


「……」


「……」


 町人たちの動きが止まった。


 そして、ゆっくりと周囲を見る。


 壊れた家。


 崩れた道。


 そこら中に残された瓦礫。


 さっきまで暮らしていた町とは思えない光景だった。


「……ここ、どうする?」


 一人の町人が呟いた。


「どうするって……」


「もう、前みたいには暮らせないだろ」


 別の町人が、半分崩れた家へ目を向ける。


「家も壊れてる」


「店も使えない」


「道だって、このままじゃ危ない」


 誰も反論できなかった。


 町を直すことはできるかもしれない。


 だが、どれだけの時間と労力が必要になるのか。


 そして、その間にまた魔物が襲ってこないという保証もない。


「……町を捨てるしかないのか」


 誰かが小さく呟いた。


 その言葉が、静かに町へ落ちる。


 誰もすぐには答えなかった。


 長く暮らしてきた場所だ。


 家族と過ごした家もある。


 店もある。


 思い出もある。


 簡単に手放せる場所ではない。


 それでも――。


 ここに残り続けることが難しいのは、誰もが分かっていた。


「……仕方ないな」


 一人が小さく息を吐いた。


「ここに残っても、どうにもならない」


「ああ」


「なら、移るしかない」


 町人たちが、一人ずつ頷いていく。


 寂しさを消すことはできない。


 それでも、生き残った者たちは前へ進まなければならなかった。


「じゃあ、どこへ行く?」


 町人の一人が尋ねる。


 その場にいた全員が考え込んだ。


 行く場所など、すぐには思いつかない。


 すると――。


 イザナが口を開いた。


「なら、全員で師匠の町へ行こう」


 町人たちの視線が、一斉にイザナへ集まる。


「イナリ様の町か?」


「ああ」


 イザナは頷いた。


「師匠のところなら、行く場所に困ることはない」


 町人たちは顔を見合わせる。


 やがて、一人が頷いた。


「……そうだな」


「それなら、イナリ様のところへ行こう」


「俺も賛成だ」


「俺もだ」


 次々と声が上がる。


 沈んでいた表情が、少しずつ変わっていく。


 行く場所が決まった。


 これからどうするかも決まった。


 それだけで、ほんの少しだけ前を向ける。


「よし」


 イザナが立ち上がる。


「全員で師匠の町へ行くぞ」


「ああ!」


 町人たちが動き始めた。


 残された荷物を集める。


 持っていけるものを選ぶ。


 壊れた家の中から必要な物を探し出す。


 中には、最後にもう一度だけ自分の家を振り返る者もいた。


 けれど、誰も立ち止まらない。


 生き残った者たちは、これからも生きていかなければならない。


 そんな中――。


 一人の町人が、ふとドラゴンを見る。


「……で、こいつは?」


 イザナもドラゴンへ視線を向ける。


「持っていく」


「本当に?」


「ああ」


「こんなに大きいぞ?」


「だから食料になるんだろ」


 イザナが答える。


 町人たちは顔を見合わせる。


 そして、ドラゴンを見る。


「……確かに」


「置いていくのはもったいないな」


「よし。こいつも運ぶぞ」


 こうして――。


 壊滅した町を離れ、全員でイナリの町へ向かうことが決まった。


 そして、倒した巨大なドラゴンも一緒に運ぶことになった。


 町人たちは出発の準備を進めていく。


 壊れてしまった町を振り返る者もいた。


 それでも、誰も立ち止まらなかった。


 生き残った者たちは、新しい場所へ向かう。


 そしてその後ろには――。


 町人たちが食料として運ぶことになった、巨大なドラゴンがいた。

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