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こちら神の子ですが異世界が喧嘩を売ってきますが、生き残った人類が強すぎです。  作者: ネコ雲


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12/20

魔人来襲


 夜も明ける頃、ようやく戦いが終わった。


 途中からオーガに混じってゴブリンやオークまで姿を現し、戦場はさらに混乱していた。


 それでも、ツクヨは仲間達と共に、その軍勢を全て倒してしまった。


 ツクヨ達の戦いは凄まじいものだった。


 ツクヨは天守閣から札を次々と投げつけ、敵の頭を吹き飛ばしていく。


 鬼太郎は金棒を振り回し、迫ってくる敵をまとめて叩き潰す。金棒が振るわれるたび、オーガの巨体さえも紙切れのように吹き飛び、次々と肉塊へ変わっていった。


 くらまは扇を一振りするだけで敵を切り刻み、山ばぁは包丁を振るうたび、迫り来る敵を肉塊へと変えていく。


 おかっぱ姫は守りに徹していたらしく、戦っているところは見られなかった。


 それでも――誰一人として、あの城を越えてくる者はいなかった。


 テンはその光景を見つめたまま、しばらく言葉を失っていた。


 あれだけの数を相手にしているのに、ツクヨ達はまるで苦にしていない。


 たったあれだけの人数で、これほどの軍勢を倒してしまったのだ。


 テンは、改めてツクヨ達の強さに戦慄を覚えた。


 妖怪は昔から地球上のあらゆる所に存在しており、人々に恐怖を与える存在だった。


 それなのに、今ではツクヨの仲間として戦い、皆がツクヨの言うことを聞いている。


 どうしてこうなっているのか。


 テンには不思議で仕方なかった。


 だが、いくら考えても分からない。


 テンは小さく息を吐き、考えることを止めた。


 一方、その戦いの最中――。


 タケミは、ただ戦いを眺めているだけでは暇で耐えられなくなったらしく、途中からイナミと剣の対決を始めていた。


 イナミもテンに話しかけてからは手持ち無沙汰だったらしく、タケミの相手をしてあげたようだ。


 結果は、タケミがボロボロにやられた。


 それでもタケミは、倒されるたびに立ち上がった。


 何度倒されても、歯を食いしばって剣を握り直す。


 そんなタケミを見て、イナミは気に入ったらしい。


 戦いの最後の方では、二人並んで談笑していた。


 フレイはというと、実は天守閣まで登り、ツクヨ達と共に戦っていた。


 「私、魔法をぶっ放してきます!」


 そう言って城をよじ登り、本当に魔法をぶっ放してきたらしい。


 戻ってきたフレイの顔は、先程までとは打って変わってスッキリしていた。


 やがて、戦いを終えたツクヨ達も戻ってくる。


 さすがに疲労は隠せず、皆、疲れた顔をしていた。


 ちなみに、おかっぱ姫とわらこは、お城と共に知らない間に消えていた。


 テンとゆうきだけはその事実に驚いていたが、他の連中は、


 ――そんな事もあるでしょう。


 とでも言いたげに、大して気にしていなかった。


 戦いも終わり、皆で和気あいあいとしていた、その時だった。


 突然、中空に歪みが生じた。


 空気そのものが捻じれるように揺らめく。


 それを見たイザナが舌打ちし、すぐさま剣を構えた。


 「次から次へと、どうなっているんだ」


 「ホント嫌になっちゃう」


 先程まで戦っていたツクヨも空を見上げ、疲れた息を吐く。


 歪みの向こうから、翼の生えたモンスターが姿を現した。


 その姿を見た瞬間、テンの中にある記憶が引っかかった。


 必死に記憶を探り――ようやく思い出す。


 「あれは悪魔よ。確か魔人と呼ばれる者の眷属」


 「そんな事、よく知っていたな」


 イザナが感心したようにテンを見る。


 だが、次の瞬間だった。


 悪魔達の中から、一際目立つ男が姿を現した。


 黒い服。


 黒い髪。


 そして、白を通り越して蒼白い肌。


 男は地上に転がる無数の死骸へ視線を向けると、淡々と呟いた。


 「やはり、ただのモンスターでは地上の連中は潰せないか」


 テンの先程の発言。


 そして、目の前に現れた男。


 皆が、この男こそ魔人なのだと理解した。


 魔人と呼ばれた男が、テン達へ視線を向ける。


 その瞬間――。


 凄まじい殺気が放たれた。


 空気が一変する。


 肌を刺すような殺気に、テン達の身体が反射的に後退った。


 テンだけではない。


 テン達よりも強い者達でさえ、冷や汗を流しながら身構えている。


 それでも、イザナだけは違った。


 凄まじい殺気を放ちながら、魔人を真正面から睨み付けている。


 魔人もイザナを見つめ――ニタッと笑った。


 「お前はあの時の片割れ、まだ生きててくれて俺は嬉しいぞ」


 魔人が空から地面へ降り立つ。


 その動きに合わせるように、背中から真っ黒い剣を取り出した。


 次の瞬間。


 魔人が、イザナへ向かって一気に駆け出した。


 速い。


 その姿が一瞬で迫る。


 イザナも迎え撃つように地面を蹴った。


 同時に、悪魔達も動き出す。


 魔人に続くように、他の者達へ襲いかかっていった。


 最初に激突したのは、イザナと魔人だった。


 二人の剣が正面からぶつかる。


 ――ガキィン!


 激しい衝撃音が響き、イザナの身体が後方へ弾き飛ばされた。


 足を地面に擦りつけ、土煙を上げながら何とか体勢を立て直す。


 だが、魔人は止まらない。


 追撃するように踏み込み、真っ黒い剣を横薙ぎに振り抜いた。


 イザナは竹刀を斜めに構え、刃を受け流す。


 だが――重い。


 受けた瞬間、両腕に強烈な衝撃が走った。


 身体が大きく流される。


 その隙を逃さず、魔人の剣が迫った。


 イザナは身体を捻り、紙一重で刃をかわす。


 それでも完全には避けきれず、頬が浅く斬られた。


 血が一筋、頬を伝う。


 「チッ……」


 イザナは血を拭うこともせず、再び魔人へ踏み込んだ。


 一方、テン達も悪魔と剣を交えていた。


 剣士組とるり、そしてツクヨ達が前へ出る。


 魔法組はその後ろに構え、隙を見ながら攻撃の機会を狙っている。


 悪魔達は槍を手にしていた。


 三体で陣形を組み、一人を集中して狙ってくる。


 「そいつらも強いから気をつけろ」


 イザナがテン達へそれだけを伝える。


 そして獰猛な笑みを浮かべ、再び魔人へ向かって走った。


 魔人とイザナが、再び激しくぶつかり合う。


 イザナが竹刀を振り抜く。


 魔人の剣を受け流し、そのまま反撃へ移る。


 だが、魔人は難なく受け止めた。


 そして間髪入れず、反撃。


 イザナは避ける。


 受ける。


 時には後ろへ飛び、距離を取る。


 それでも魔人の攻撃は止まらない。


 竹刀を使っているイザナは、どうしても押されていた。


 腕。


 肩。


 頬。


 少しずつ傷が増えていく。


 それでもイザナは、一歩も引かなかった。


 傷を負っても、息を乱しても、何度でも魔人へと斬りかかる。


 一方、テン達三人も悪魔に苦戦していた。


 槍による刺し傷や斬り傷が少しずつ増えていく。


 「クソ、一匹一匹が強いぞ」


 「素早くて、なかなか攻撃が当たらない」


 「疲れて魔法がぶっ放せないです」


 勇者一行は、悪魔達と同じく三人で陣形を作っていた。


 三人の動きには迷いがない。


 互いの死角を補いながら、一体ずつ確実に悪魔を倒していく。


 異世界で一緒に戦ってきた成果なのだろう。


 「このまま陣形を崩さず倒していくぞ」


 ゆうきの掛け声に、二人が頷く。


 そのまま油断なく敵と相対した。


 イナミは一人で悪魔達を相手にしていた。


 襲いかかってくる悪魔を、次から次へと斬り倒していく。


 「雑魚共がどんどんかかってこいよ」


 先程まで思うように戦えなかった分を取り戻すかのように、嬉々として刀を振るっていた。


 ツクヨ達は、先程までの戦いによる疲労が残っている。


 息は上がり、動きも明らかに鈍っていた。


 それでも、迫ってくる悪魔を相手に戦い続けている。


 「あの子達、早く来なさいよ」


 そう言いながらも、ツクヨは戦場から目を離さない。


 他の町人達も戦っている。


 何人かでチームを組んで戦う者もいれば、一人で悪魔を相手にしている者もいる。


 その中でも、剣に雷を纏って戦っている男は、悪魔を圧倒していた。


 それぞれが、それぞれの場所で戦っている。


 その中で苦戦しているテン達を見て、ツクヨ達が合流してきた。


 「あなた達、大丈夫?」


 「大丈夫です」


 ツクヨ達は、斬り傷の増えたテンとタケミ、そしてすでに疲れ切っているフレイを心配そうに見た。


 テンとタケミは傷だらけになりながらも、しっかりと剣を構えている。


 視線も敵から外していない。


 悪魔達との戦いは、少しずつこちらが押していた。


 だが――。


 イザナと魔人の戦いだけは、明らかに違っていた。


 イザナは一方的に攻められている。


 致命傷を受けないようにするだけで精一杯だった。


 イナミも時折イザナへ視線を向ける。


 助けに入りたい。


 だが、周囲にはまだ悪魔が多い。


 ここを離れることができない。


 その間にも、イザナの傷は増えていく。


 「あの女が居なければこんなものか、つまらないものだ」


 魔人が、傷だらけのイザナを見下ろす。


 息が上がり、身体には無数の傷。


 それでも――イザナの目だけは死んでいなかった。


 イザナは魔人へ斬りかかる。


 竹刀で魔人の剣を弾こうとする。


 だが、魔人は力任せに押し返した。


 イザナの身体がわずかに揺らぐ。


 その瞬間だった。


 魔人が剣を振り抜く。


 イザナは咄嗟に身を引いた。


 それでも、完全には避けきれない。


 脇腹に浅い傷が走った。


 「ぐっ……!」


 それでも止まらない。


 イザナは踏み込み、竹刀を振り下ろした。


 魔人は、つまらなさそうに剣を振った。


 ――ザンッ!


 竹刀が斬り飛ばされる。


 そして次の瞬間。


 魔人の蹴りが、イザナの腹へ突き刺さった。


 「ぐはっ!」


 身体が大きく吹き飛ぶ。


 イザナは地面を何度も転がり、テン達の近くまで飛ばされた。


 それでも立とうとする。


 竹刀を杖代わりにして身体を起こしかけた。


 だが――。


 「ぐっ……」


 血を吐き、力が抜ける。


 イザナはその場に倒れた。


 それを見た悪魔達が、一斉にイザナへ襲いかかる。


 テン達の視線が、一斉にイザナへ向いた。


 誰かが叫ぶ。


 だが、誰もすぐには動けない。


 立ち上がることすらできない。


 (クソ、間に合わねぇ)


 (イザナさん)


 イナミとゆうきが駆け出そうとする。


 だが、距離がある。


 間に合わない。


 悪魔の槍が、イザナへ届こうとした――その瞬間。


 テンが飛び出した。


 イザナを庇うように、その前へ立ち塞がる。


 次の瞬間。


 三本の槍が、テンの身体を貫いた。


 「嬢ちゃん」


 すぐ近くまで来ていたイナミが、テンを刺した悪魔を斬り倒す。


 そのまま、崩れ落ちそうになったテンの身体を支えた。


 「テン姉、すぐに治します!」


 タケミ、フレイ、ツクヨ達も駆け寄る。


 イザナとテンを守るように、その周囲へ立ち塞がった。


 地面に倒れないようイナミに支えられながら、テンは上体を起こしている。


 そこへ、あんなも駆けつけた。


 「私も手伝うわ」


 フレイとあんなが、二人で治癒しようとする。


 だが、テンは血を吐きながらも、二人へ優しい笑みを浮かべた。


 「私は大丈夫だから、イザナを治癒して」


 どう見ても、テンの方が重傷だった。


 それでもテンは、自分よりイザナを優先した。


 フレイは迷った。


 だが、テンがそう言うなら――。


 「……」


 フレイはイザナの治癒を始める。


 それを見たあんなも戸惑いながら、イザナの治癒へ加わった。


 その光景を、魔人は冷めた目で眺めていた。


 「とんだ期待外れだな、十年前の方が楽しい勝負が出来たな」


 魔人が手を上げる。


 そして――指を鳴らした。


 中空に、再び歪みが生じる。


 そこから、更なる悪魔の軍勢が姿を現した。


 しかも、その中には明らかに姿の違う悪魔が何体かいる。


 上位種らしき悪魔だった。


 戦場にいた者達の顔が歪む。


 先程まで押していた者達でさえ、その姿を見て悪態をついた。


 上位種らしき悪魔が、悠然と地面へ降り立つ。


 その瞬間を狙って斬りかかった者がいた。


 だが、剣を掴まれる。


 そのまま殴り飛ばされた。


 別の者は腕を振るわれただけで吹き飛ばされる。


 上位種らしき悪魔達は、何事もなかったかのように歩いていく。


 そして魔人の前で立ち止まると、臣下が取る礼をした。


 「お前達、この町にはもう用はないから滅ぼすとするか」


 魔人の命令を受け、悪魔達が四方へ散っていく。


 戦場の各所から悲鳴が上がる。


 上位種の参戦によって、今度はこちらが圧され始めた。


 そのうちの一体が、イザナとテンが倒れている方へ歩いてくる。


 ツクヨが険しい顔を浮かべた。


 「このままじゃ不味いわね、イザナはまだ治らないの」


 「後少しです」


 あんなとフレイは汗を流しながら、必死に治癒を続けている。


 イザナの傷は、少しずつ塞がってきていた。


 だが、テンの状態は危ない。


 今にも意識を失いそうになっている。


 そんな中、イナミがタケミを見る。


 「タケミ、俺と代われ。俺が今歩いて来ている悪魔の相手をする」


 タケミも、自分では力になれないことが分かっていた。


 悔しそうに表情を歪めながらも、イナミと交代する。


 イナミは、歩いてくる悪魔の前へ立ち塞がった。


 互いの手が届く距離まで近づいた瞬間――。


 悪魔の拳が、イナミの顔へ飛んでくる。


 だが。


 イナミの刀が、一閃した。


 腕が斬り飛ばされる。


 悪魔が驚き、距離を取った。


 自分一人では勝てないと悟ったのか、仲間を呼ぶ。


 すぐに二体の上位悪魔と、多数の下位悪魔が集まってきた。


 この数ではイナミ一人では厳しい。


 そう判断し、ゆうきとるりがイナミの横へ並んだ。


 悪魔達の準備が整う。


 そして――。


 多数の悪魔が一斉に襲いかかってきた。


 津波のように押し寄せる下位悪魔。


 イナミとゆうきは、それを片っ端から斬り捨てていく。


 るりは拳を振るい、次々と悪魔を殴り飛ばした。


 だが、その中に上位悪魔が混ざっていた。


 不意に飛んできた拳を、るりは防ぎきれない。


 まともに受け、その身体が吹き飛ばされる。


 その光景を見たツクヨが、険しい顔をした。


 (このままじゃ数で圧しきられる)


 イザナとテンを守るため、その場を動けない。


 その時だった。


 長い首が、鞭のようにしなった。


 一気に伸びた首が多数の悪魔をまとめて吹き飛ばす。


 吹き飛ばされた悪魔達は、そのまま待ち構えていた花子の便器へ吸い込まれた。


 そして――流されていく。


 首を避けた悪魔が、るりの吹き飛ばされたことで生じた穴からツクヨ達を狙った。


 だが、その前にクチミが立ち塞がる。


 ハサミが閃き、悪魔を斬り刻んだ。


 そのすぐそばでは、タマがツクヨに頭を撫でられている。


 ツクヨが、ようやく現れた仲間達へ視線を向けた。


 「あなた達、くるの遅いわよ」


 ツクヨが待ちに待った援軍が、ようやく到着した。


 先程の攻撃で悪魔の数は大分減った。


 それでも、まだ多数の下位悪魔と三体の上位悪魔が残っている。


 ピンチなのには変わりない。


 その時だった。


 「もう大丈夫だ、ありがとう」


 倒れていたイザナが、立ち上がった。


 あんなとフレイへ礼を言う。


 そして、倒れているテンへ視線を向けた。


 「テンのおかげで助かった、ありがとう」


 テンは顔色が悪く、生気のない顔でイザナを見上げる。


 それでも、握っていた剣を差し出した。


 「竹刀の代わりにこの剣を使って下さい。強度と切れ味は保証します」


 イザナはその剣を受け取った。


 「ありがとう。次こそ勝ってくる」


 剣を握り直す。


 そしてイザナは、再び戦場へ戻るため、イナミ達のもとへ向かった。

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