第95話 諦めない
エルシオン王国から帰ってきた翌日。
二人は休むことなく、再び人間の寿命を延ばす方法を探し始めた。
古代魔法。
錬金術。
失われた魔導書。
世界中に残る古文書や伝承。
手掛かりになりそうなものは、一つ残らず調べていく。
部屋の机には、本が山のように積まれていた。
ページをめくる音だけが、静かに響く。
「こっちは?」
フィオナが一冊の魔導書を閉じる。
リュカは苦笑しながら首を横へ振った。
「寿命じゃなくて、病気を治す魔法だった」
「そっか」
フィオナも肩を落とす。
今度はリュカが尋ねる。
「そっちは?」
「若返りの薬」
「でも、一時的なものみたい」
「なるほど」
また外れだった。
それでも。
二人は次の本へ手を伸ばす。
精霊王アルディオンは言った。
人間の定命は、生まれた瞬間から定められている。
本質的な延命は存在しない、と。
それは神話の時代から生きる精霊王の言葉だった。
普通なら、そこで諦めていたかもしれない。
けれど。
リュカは本を閉じなかった。
「絶対にある」
ぽつりと呟く。
「僕は、まだ諦めない」
フィオナはそんなリュカを見つめ、優しく微笑んだ。
「うん」
「私も」
二人は顔を見合わせる。
そして、小さく笑った。
世界は広い。
まだ読んでいない本がある。
まだ訪れていない場所がある。
まだ知られていない知識がある。
答えは、まだ見つからない。
それでも。
二人は決して諦めなかった。




