第83話 永遠の誓い
結婚式当日。
村の小さな教会は、色とりどりの花で美しく飾られていた。
妖精たちは朝から大忙しだ。
「もっと花びら持ってくる!」
「こっちも飾ろう!」
「今日は最高の日だね!」
教会の中では、村人たちが二人の到着を待っていた。
やがて。
ゆっくりと扉が開く。
純白のドレスを身にまとったフィオナが、一歩ずつ祭壇へ向かって歩いていく。
その姿に、教会中が息を呑んだ。
「……綺麗だ」
思わず漏れたリュカの言葉に、フィオナは少しだけ照れくさそうに微笑む。
祭壇の前。
二人は向かい合った。
神父が静かに問いかける。
「リュカ。あなたはフィオナを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」
リュカは迷うことなく答えた。
「誓います」
神父は穏やかに頷き、今度はフィオナへ視線を向ける。
「フィオナ。あなたはリュカを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」
――その命ある限り。
その言葉が、フィオナの胸へ深く響く。
人間にとっては、一生。
エルフにとっては、ほんの一日一夜にも満たないほど短い時間。
それでも。
その短い人生のすべてを、自分へ捧げるという誓い。
その意味を。
二人だけが知っていた。
フィオナの瞳から、一筋の涙がこぼれる。
嬉しくて。
幸せで。
そして少しだけ切なくて。
様々な想いが、その一粒に込められていた。
フィオナは涙を拭い、リュカを真っ直ぐ見つめる。
そして優しく微笑んだ。
「……誓います」
その声は、小さくても力強かった。
リュカはそっとフィオナの手を取り、指輪を薬指へ通す。
続いてフィオナも、リュカの薬指へ指輪をはめた。
二人は見つめ合う。
どちらからともなく笑みがこぼれた。
ゆっくりと距離が縮まる。
そして。
優しく口づけを交わした。
その瞬間。
教会の鐘が高らかに鳴り響く。
妖精たちは一斉に花びらを舞わせた。
「おめでとう!」
「幸せになってね!」
村人たちの温かな拍手が教会いっぱいに広がる。
エルフと人間。
寿命は違う。
歩む時間の長さも違う。
それでも。
二人は、同じ未来を歩むことを選んだ。
未来に何が待っているのかは、誰にも分からない。
けれど。
悲しみを恐れて立ち止まるのではなく。
二人で笑い。
二人で泣き。
二人で未来を探していく。
そう誓った今日という日は。
きっと。
二人にとって、永遠に色褪せることのない、大切な一日になるのだった。




