第68話 守りたい人
ある日の依頼。
二人は森の奥で魔物討伐を行っていた。
息の合った連携で、一体、また一体と魔物を倒していく。
「右!」
「うん!」
リュカの妖精誘導法。
フィオナの精霊魔法。
二人の魔法は見事に噛み合い、戦況は優勢だった。
その時だった。
最後の一体が、倒れ際にフィオナへ飛びかかる。
「フィオナ!」
考えるより先に身体が動いていた。
リュカはフィオナの前へ飛び出す。
「シルフ!」
風が舞う。
魔物の身体が大きく逸れ、そのまま地面へ叩きつけられた。
直後。
フィオナの魔法が放たれる。
風の刃が魔物を切り裂き、戦いは終わった。
静かな森が戻る。
フィオナは少し驚いたようにリュカを見る。
「……無事でよかった」
リュカはほっと息を吐いた。
「そんなに心配だった?」
フィオナは優しく笑う。
「私なら大丈夫なのに」
「うん」
リュカは頷く。
「分かってる」
「フィオナが強いことくらい」
「じゃあ、どうして?」
リュカは少し困ったように笑った。
「自分でも驚いたんだ」
「え?」
「気付いたら身体が勝手に動いてた」
「こんなに誰かを守りたいって思ったの、初めてだから」
その一言に。
フィオナは固まった。
耳まで真っ赤になる。
「そ、そういう恥ずかしいこと……」
「さらっと言わないでよ」
「え?」
リュカはきょとんとする。
「もう!」
フィオナは照れ隠しに頬を膨らませた。
「そういうの反則だから!」
「ご、ごめん!」
「謝らなくていい!」
「でも恥ずかしいの!」
二人は顔を見合わせる。
そして、同時に笑ってしまった。
帰り道。
森の小道を並んで歩く。
繋いだ手は温かかった。
リュカはそっと自分の胸へ手を当てる。
勇者パーティにいた頃は。
誰かを守れるなんて思ったこともなかった。
でも今は違う。
笑っていてほしい人がいる。
幸せでいてほしい人がいる。
傷ついてほしくない人がいる。
その人のためなら。
自分はきっと、何度でも前へ飛び出せる。
リュカは初めて、自分の恋の深さをはっきりと自覚した。




