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勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


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第62話 儚い命

 数日後。


 村へ、一つの知らせが届いた。


 畑仕事を教えてくれたおじいさんが、老衰で亡くなったという。


「そんな……」


 フィオナは信じられなかった。


 ついこの前まで元気だった。


 畑で顔を合わせれば、


「おーい、二人とも!」


 そう言って笑っていた。


 家を買ったばかりの頃。


 畑の耕し方。


 野菜の植え方。


 土づくり。


 何も分からない二人へ、一つひとつ優しく教えてくれた。


「焦らんでええ」


「土はちゃんと応えてくれる」


 穏やかな笑顔が、今も目に浮かぶ。


 それなのに。


 葬儀の日。


 静かな部屋の中央には、花に囲まれた棺が置かれていた。


 フィオナは、おじいさんの傍へ歩み寄る。


 眠っているような、穏やかな顔だった。


「……ねえ」


 小さく呼びかける。


「寝てるだけ……だよね?」


 返事はない。


「嘘……」


 もう一度、そっと肩へ触れようとする。


 冷たい。


「そんなの……嘘」


 胸が苦しくなる。


「起きてよ」


「この前、一緒にお話ししたじゃん」


「畑も見てくれたじゃん」


「笑ってたじゃん」


 声が震える。


「ねえ……」


「ねえってば……」


「そうなんだよね?」


「そうだって言ってよ……」


 誰かが答えてくれる気がした。


 でも。


 返事はなかった。


 ぽたり。


 涙が頬を伝い、床へ落ちる。


 その時だった。


 そっと、誰かがフィオナを後ろから抱きしめた。


 振り返ると、おじいさんの娘だった。


 赤く腫れた目で、それでも優しく微笑んでいる。


「フィオナちゃん……」


「いっぱい泣いていいのよ」


「お父さんも、あなたのこと大好きだったから」


 その言葉を聞いた瞬間。


 堪えていたものが、一気に溢れ出した。


「うっ……」


「うぅ……」


 フィオナは子どものように泣いた。


 娘は何も言わず、ただ優しく抱きしめ続ける。


 周りの村人たちも静かに涙を流していた。


 悲しいのは、自分だけじゃない。


 みんな、大切な人を失って泣いている。


 帰り道。


 二人は並んで歩いていた。


 しばらく沈黙が続いたあと、リュカが静かに口を開く。


「だから人は、一緒にいられる時間を大切にするんだ」


 フィオナは足を止めた。


「人間の時間は、とても短い」


「だから、今日会えるなら今日会う」


「伝えたいことがあるなら、今日伝える」


「明日が必ず来るとは限らないから」


 フィオナは何も言えなかった。


 エルフには長い時間がある。


 明日でもいい。


 一年後でもいい。


 十年後でもいい。


 そう思って生きてきた。


 でも、人間は違う。


 今日という一日は、二度と戻らない。


 人間にとって別れとは。


 こんなにも突然で。


 こんなにも苦しくて。


 こんなにも悲しいものなのだと。


 そして。


 悲しみは、一人で抱えるものではないことも。


 人は泣きながら支え合い、抱きしめ合い、それでも前を向いて生きていくのだと。


 フィオナは、その日初めて知った。

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