第51話 ただいま
七日目の夕暮れ。
リュカは、いつものように家の前へ立っていた。
今日も帰ってこないかもしれない。
そんな不安を抱えながら、森へ続く道を見つめる。
その時だった。
がちゃり。
玄関の扉が開く音がした。
「ただいまー!」
聞き慣れた声。
リュカは勢いよく振り返る。
そこには。
何事もなかったような笑顔で立つフィオナの姿があった。
「フィオナ……!」
「ねえねえ、リュカ!」
フィオナは楽しそうに駆け寄ってくる。
「北の森の奥にね、すっごく面白い場所を見つけたんだよ!」
「え?」
「大きな滝があってね!」
「その近くに、すっごく綺麗なお花畑があって!」
「湖まであったんだよ!」
「今度、一緒に行こう!」
目を輝かせながら話すフィオナ。
まるで、一日散歩へ出掛けて帰ってきたかのような調子だった。
リュカは、その姿を見て。
ようやく胸を締めつけていた不安が消えていく。
帰ってきた。
無事だった。
本当に帰ってきた。
そう思った瞬間。
安心した。
そして、その次の瞬間。
抑え込んでいた感情が、一気に溢れ出した。
「どこ行ってたの!?」
大きな声が家の前へ響く。
フィオナは目を丸くした。
「え?」
「どれだけ心配したと思ってるんだ!」
「え、心配?」
「森中探したんだよ!」
「妖精たちにも聞いた!」
「毎日帰ってくるのを待ってた!」
「もう帰ってこないんじゃないかって……!」
言葉が止まらなかった。
安心したからこそ。
我慢していたものが全部溢れてしまった。
フィオナはようやく状況を理解できず、戸惑ったようにリュカを見つめる。
「……そんなに?」
その一言が。
これから始まる、本当のすれ違いの始まりだった。




