表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/73

第47話 困っている人がいたら

 新しい家での暮らしにも、少しずつ慣れてきた頃。


 リュカとフィオナは、村の人たちから声を掛けられる機会が増えていた。


 それは冒険者ギルドへ持ち込まれるような大きな依頼ではない。


 誰かが少し困っている。


 そんな、小さな相談だった。


 ある日の朝。


 庭の畑へ水をやっていると、一人の老人が申し訳なさそうに近づいてきた。


「リュカ君、少し時間はあるかな?」


「はい。どうしました?」


「畑へ水を引いている水路が詰まってしまってね」


 老人は困ったように笑う。


「年を取ると、一人じゃなかなか直せなくて」


 リュカは頷いた。


「分かりました」


「手伝います」


「いいのかい?」


「もちろんです」


 リュカはすぐにフィオナを呼ぶ。


「フィオナ、一緒に行こう」


「うん」


 二人は老人の畑へ向かった。


 水路には石や土が溜まり、水が流れなくなっている。


「ノーム」


 リュカが優しく呼びかける。


「少しだけ手伝ってくれる?」


「いいよー」


 眠そうな声と共に、土の妖精が姿を現した。


 小さな手を振ると、土砂がゆっくりと動き始める。


 詰まっていた石も脇へ寄せられ、水路は元の形を取り戻した。


「ウンディーネ」


「なあにー?」


「水を流してもらえる?」


「もちろん!」


 青い魔粒子が集まり、水路へ澄んだ水が流れ始める。


 やがて。


 さらさらと心地よい音を立てながら、水は畑いっぱいへ広がっていった。


「流れた!」


 老人が嬉しそうに声を上げる。


「ありがとう、本当に助かったよ」


 リュカは照れくさそうに笑った。


「困った時は、お互い様ですから」


 老人も笑顔で頷いた。


「そうだねぇ」


「ありがとう」


 それからというもの。


「橋の板が外れてしまってね」


「薬草畑の雑草取りを手伝ってくれないかい?」


「畑を少し耕したいんだけど……」


 村の人たちは、少しずつ二人を頼るようになっていった。


 リュカは一度も嫌な顔をしない。


「できますよ」


「喜んで」


 その一言で、すぐに動き出す。


 橋を直し。


 薬草を見分け。


 畑を耕し。


 時には妖精たちの力も借りながら、人々の暮らしを支えていく。


 その姿を見て、フィオナは微笑んだ。


「リュカらしいね」


「え?」


「報酬も聞かずに引き受けるところ」


 リュカは少し恥ずかしそうに笑う。


「困ってる人を放っておけなくて」


「知ってる」


 フィオナは優しく頷く。


「だから私は、リュカと一緒にいるのが好きなんだよ」


 その言葉に、リュカは少し照れながら頭を掻いた。


 そんな毎日が続くうちに。


 村の人たちの呼び方も、少しずつ変わっていった。


「リュカさん!」


「フィオナさん!」


 市場ですれ違うおばさんが手を振る。


 畑のおじさんが笑顔で挨拶をする。


 子どもたちが駆け寄ってきて、一緒に遊ぼうと誘ってくる。


 旅の冒険者ではなく。


 よそ者でもなく。


 一人の村人として。


 二人は、この村へ少しずつ溶け込んでいた。


 その光景を眺めながら。


 リュカは静かに笑う。


 勇者パーティにいた頃。


 自分は誰かの役に立っているのか分からなかった。


 何をしても当たり前。


 感謝されることなど、一度もなかった。


 けれど今は違う。


「ありがとう」


 その一言が、こんなにも嬉しい。


 誰かの笑顔が、こんなにも温かい。


 リュカは思う。


 強い魔法を使えることだけが、人の役に立つことではない。


 困っている人へ手を差し伸べること。


 その人が笑ってくれること。


 それだけでも十分なのだと。


 そんな当たり前の幸せを。


 リュカは、この村で少しずつ知っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ