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勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


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第44話 この家がいい

 家を探し始めてから、しばらく経った頃。


 リュカとフィオナは、森と湖に囲まれた小さな村へ辿り着いた。


 賑やかな街ではない。


 大きな宿もない。


 けれど、澄んだ空気と穏やかな時間が流れる、静かな村だった。


「いいところだね」


 フィオナが深呼吸をする。


「うん」


 リュカも思わず頷いた。


 鳥のさえずりが聞こえる。


 湖から吹く風が木々を揺らし、どこからかパンを焼く香ばしい匂いが漂ってくる。


 人々は穏やかに笑い合い、子どもたちは広場を元気に駆け回っていた。


 そんな村を歩いていると。


「あっ」


 フィオナが立ち止まる。


「どうしたの?」


「あそこ」


 指差した先には、一軒の家があった。


 木造の小さな家。


 新築ではない。


 壁や屋根には長い年月を感じさせる傷がある。


 それでも、大切に手入れされてきたことが一目で分かる、温もりのある家だった。


 玄関の前には小さな庭。


 その隣には、薬草や野菜を育てるには十分な広さの畑。


 家の裏には小川が流れ、少し歩けば湖がある。


 そして門には、一枚の木の看板が掛けられていた。


 ――売家。


「売りに出てるみたいだね」


 リュカが呟く。


 二人は自然と門を開け、庭へ入った。


 風が吹く。


 木漏れ日が揺れる。


 どこか懐かしいような、優しい空気が流れていた。


「……なんだろう」


 リュカは家を見つめながら、小さく呟く。


「どうしたの?」


「なんか……落ち着く」


 フィオナも静かに頷いた。


「私も」


 二人はしばらく何も話さなかった。


 豪華だからではない。


 便利だからでもない。


 ただ、その家に立っているだけで心が安らぐ。


 そんな不思議な感覚だった。


 リュカは玄関を見つめる。


 依頼を終えて帰ってくる自分。


 夕食を作る自分。


 フィオナが「お腹空いた」と笑いながら帰ってくる姿。


 そんな光景が、自然と頭に浮かんだ。


「……帰ってきたいな」


 気づけば、そんな言葉が口からこぼれていた。


「え?」


「依頼が終わったら」


 リュカは少し照れくさそうに笑う。


「旅から帰ってきたら、この家に帰ってきたい」


 フィオナは、その言葉を聞いて優しく微笑んだ。


「私も」


 その一言で十分だった。


 二人は顔を見合わせる。


 そして、同じように頷いた。


「ここにしよう」


「うん」


 決め手は豪華さではなかった。


 景色でもない。


 広さでもない。


 ただ一つ。


 ――帰ってきたい。


 そう思えたこと。


 それだけだった。


 二人は、その足で村の不動産屋を訪れた。


 店の奥から現れたのは、白髪交じりの穏やかな老人だった。


「いらっしゃい」


「表にあった売家のことで、お話を伺いたくて」


 リュカが頭を下げる。


 老人は嬉しそうに微笑んだ。


「あの家か」


「はい」


「気に入っていただけたかな?」


「はい」


 リュカは迷わず答えた。


「とても」


 老人は目を細める。


「あの家はね、長い間、一組の夫婦が大切に暮らしてきた家なんだ」


「そうなんですね」


「年を取って、息子夫婦と暮らすことになってね」


 老人は懐かしそうに笑った。


「だから、新しい家族に住んでもらえたら嬉しいと思っていたんだ」


 その言葉を聞きながら、リュカはもう一度フィオナを見る。


 フィオナも静かに頷いた。


 答えは決まっている。


「買います」


 リュカは、はっきりと言った。


 その瞬間。


 二人の旅は、新しい一歩を踏み出した。


 帰る場所を失っていた青年と。


 帰る場所を持とうとしなかった少女。


 そんな二人に。


 生まれて初めて。


 「僕たちの家」ができた。

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