第41話 美味しいものを食べよう
翌朝。
宿を出ると、気持ちのいい青空が広がっていた。
大きく伸びをしたフィオナが、くるりとリュカを振り返る。
「ねえ、リュカ」
「何?」
「美味しいもの食べよう」
リュカは思わず笑う。
「また?」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど」
「じゃあ決まり!」
フィオナは満足そうに頷いた。
「次の街には、きっと美味しいものがあるよ」
「その根拠は?」
「勘!」
「不安しかないなあ」
「あははは!」
笑いながら歩き出す。
リュカも、その隣を歩いた。
旅は続いていく。
温泉へ入った。
祭りではしゃいだ。
初めて喧嘩もした。
そして仲直りもした。
困っている人を助けた。
勇者パーティとも再会した。
楽しいことも。
苦しいことも。
少しだけ辛いこともあった。
それでも。
二人の足は止まらなかった。
フィオナは、少しずつ気づき始めていた。
一人で世界を旅していた頃も楽しかった。
知らない景色を見て。
知らない土地を歩いて。
自由気ままに過ごす毎日。
それも悪くなかった。
けれど。
今は違う。
同じ景色でも。
隣にリュカがいるだけで、もっと楽しい。
同じ料理でも。
一人で食べるより、ずっと美味しい。
思わず笑ってしまった時。
隣でリュカも笑っている。
そのことが、なんだか嬉しかった。
一方で。
リュカもまた、気づき始めていた。
フィオナが笑うと。
自分も嬉しくなる。
フィオナが美味しそうに料理を食べると。
もっと美味しいものを食べさせてあげたいと思う。
フィオナが困っていると。
力になりたいと思う。
その笑顔を見ているだけで。
旅が、少しだけ特別なものになる。
まだ。
二人は、その気持ちを恋とは呼ばなかった。
けれど。
いつの間にか。
目的地のなかった二人の旅には。
一つだけ。
なくてはならないものができていた。
それは。
隣を歩く、互いの存在だった。




