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勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


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第37話 困っているなら放っておけない

 旅を続ける途中。


 リュカとフィオナは、小さな村へ立ち寄った。


 村へ入った瞬間、リュカは足を止める。


「どうしたの?」


 フィオナが尋ねる。


 リュカは少し先を指差した。


「あれ……」


 畑は乾ききっていた。


 本来なら水が流れているはずの用水路は途中で崩れ、水の流れが止まっている。


 村人たちは鍬や木材を手に、一生懸命修復しようとしていた。


「困ってるみたいだね」


「うん」


 二人は近くにいた老人へ声を掛ける。


「何かあったんですか?」


 老人は困ったように笑った。


「昨日の大雨で水路が崩れてしまってのう」


「畑へ水が届かんのじゃ」


「冒険者ギルドへ依頼は?」


「こんな小さな村では、十分な報酬を用意できんからの」


 リュカは静かに崩れた水路を見つめた。


 少し考えてから、フィオナを見る。


「……少し手伝っていこうか」


 フィオナは微笑む。


「そう言うと思った」


 二人は荷物を置き、すぐに作業へ取りかかった。


 リュカは妖精眼鏡をかける。


 世界が、四色の光で満たされる。


「ノーム」


「なあに?」


「水路を少しだけ直したいんだ」


「いいよー」


 黄色い魔粒子がゆっくりと集まり、大地が静かに動き始める。


 崩れていた土が持ち上がり、水路が元の形へ整えられていく。


「ありがとう」


「どういたしましてー」


 続いてリュカは、小川へ視線を向けた。


「ウンディーネ」


「呼んだー?」


「水を流してもらえる?」


「もちろん!」


 青い魔粒子が流れに寄り添う。


 止まっていた水が、再びゆっくりと用水路を流れ始めた。


「流れた!」


「畑に水が来たぞ!」


 村人たちから歓声が上がる。


 リュカはほっと胸を撫で下ろした。


「シルフ」


「はーい!」


「土埃を飛ばしてくれる?」


「任せて!」


 優しい風が吹き抜ける。


 舞い上がっていた土埃は空へ流れ、作業を終えた村人たちは気持ちよさそうに息を吐いた。


 最後にリュカは笑って言う。


「サラマンダー」


「ご飯?」


「うん。村のみんなの分も作ろうと思って」


「それなら任せて!」


 赤い炎が薪へ灯る。


 村人たちは鍋を囲み、温かな料理を作り始めた。


 妖精誘導法。


 かつて竜族が、人々の暮らしを豊かにするために伝えたという魔法。


 火は食事を作るために。


 水は命を育むために。


 風は人々を助けるために。


 土は大地を整えるために。


 その本来の姿が、今ここにあった。


「助かったよ!」


「本当にありがとう!」


 一人の少女が駆け寄り、リュカへ深々と頭を下げる。


「お兄ちゃん、ありがとう!」


 その言葉に。


 リュカは一瞬だけ目を丸くした。


 そして、自然と笑みを浮かべる。


「どういたしまして」


 誰かの役に立てた。


 誰かが笑ってくれた。


 それだけで胸の奥が温かくなる。


 かつて。


 どれだけ頑張っても、感謝されることはなかった。


 料理を作っても。


 荷物を運んでも。


 雑用を引き受けても。


 返ってくるのは文句や叱責ばかりだった。


 けれど今は違う。


 自分が助けたいと思ったから助けた。


 その気持ちが、「ありがとう」という言葉になって返ってくる。


 それが。


 こんなにも嬉しい。


 少し離れた場所から、その様子を見つめていたフィオナは、小さく微笑んだ。


「やっぱり」


「何?」


 リュカが振り返る。


 フィオナは優しく笑った。


「困ってる人を見ると、放っておけないんだね」


 リュカは少し照れくさそうに頭をかく。


「……そうみたい」


 フィオナはそんなリュカを見つめながら思う。


 強いから優しいのではない。


 優しいから、この人は強いのだと。

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