表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/70

第27話 僕の魔力、減ってない?

 四種類の魔粒子へ、同時に働きかけることができるようになってから。


 リュカの魔法修行は、さらに長時間に及ぶようになっていた。


 火を灯す。


 水を集める。


 風を吹かせる。


 土を動かす。


 一度だけではない。


 二度。


 三度。


 何度も繰り返す。


 時には失敗する。


 妖精たちの機嫌を損ねる。


 謝る。


 もう一度お願いする。


 そうして。


 朝から始めた修行が、気づけば昼を過ぎていた。


「ふう……」


 リュカは額の汗を拭う。


「今日はこのくらいにしようか」


 フィオナが言った。


「うん」


 リュカは頷く。


 そして。


 ふと。


 自分の身体に意識を向けた。


「……あれ?」


「どうしたの?」


「いや……」


 リュカは首を傾げる。


 何かがおかしい。


「……疲れてない」


「そうなの?」


「いや、身体は少し疲れてるんだけど」


「じゃあ疲れてるじゃん」


「そうじゃなくて」


 リュカは自分の胸へ手を当てた。


「魔力が」


「魔力?」


「ほとんど減ってない」


「……そうなの?」


「うん」


 リュカは戸惑いながら、自分の内側に残っている魔力を確かめる。


 間違いない。


 ほとんど減っていない。


 朝から。


 何度も魔法を使った。


 火を灯した。


 水を集めた。


 風を吹かせた。


 土を動かした。


 それだけではない。


 四種類すべての魔粒子へ同時に働きかける修行まで行った。


 普通なら。


 これだけ長時間にわたって魔法を使い続ければ、相応に魔力を消耗するはずだった。


 少なくとも。


 リュカは、そう教わってきた。


「……おかしい」


「何が?」


「だって、こんなに魔法を使ったんだよ?」


「うん」


「何時間も」


「うん」


「それなのに、ほとんど魔力が減ってない」


「よかったじゃん」


「よくないよ!」


「なんで?」


「おかしいから!」


 フィオナは不思議そうに首を傾げた。


「魔力が減らないなら、いいことじゃない?」


「そういう問題なのかな……」


「違うの?」


「分からないから聞いてるんだよ!」


 フィオナは少し考える。


 そして。


 妖精眼鏡をかけているリュカの周囲へ視線を向けた。


 赤。


 青。


 緑。


 黄。


 四種類の魔粒子が、自然の流れに従って世界を巡っている。


 その中を。


 妖精たちが自由に飛び回っていた。


「たぶん」


 フィオナが言う。


「リュカが、自分の力だけで魔法を使ってないからじゃない?」


「……どういう意味?」


「普通の魔法使いは、自分の魔力を使って魔粒子へ干渉するでしょ?」


「うん」


「魔素から、自分の適性に合った魔粒子を取り出す。そして魔力を使って、望む現象へ変換する」


「うん」


「でも、リュカは違う」


 フィオナは、リュカの周囲を漂う魔粒子を指差した。


「あなたは、もう世界に存在している魔粒子そのものへ働きかけてる」


「……」


「自分の魔力で無理やり動かすんじゃない」


 世界の流れを見る。


 妖精たちの声を聞く。


 お願いする。


 そして。


 少しだけ、力を貸してもらう。


「だから」


 フィオナは続けた。


「リュカ自身は、ほとんど魔力を使ってないんじゃないかな」


「……本当に?」


「たぶん」


「たぶん?」


「だって、私も妖精誘導法を使ったことないし」


「そうだった……」


「それに、もう失われた魔法なんでしょ?」


「そう言ってたね」


「だったら、私に聞かれても分からないよ」


「フィオナが言い出したんじゃないか!」


「あははは!」


 フィオナは楽しそうに笑った。


 リュカは少し呆れながら。


 もう一度、自分の手を見る。


「じゃあ……」


「何?」


「僕は今まで、ほとんど自分の魔力を使わずに魔法を使ってたってこと?」


「そういうことになるね」


「……」


「……」


「じゃあ」


 リュカは少し嫌な予感を覚えながら尋ねる。


「僕の、この莫大な魔力は?」


「ほとんど余ってる」


「……」


「もったいないね」


「そんな言い方ある!?」


 フィオナが吹き出した。


「あはははは!」


「笑い事じゃないよ!」


「だって、せっかくそんなにいっぱい持ってるのに、全然使ってないんでしょ?」


「僕だって好きで余らせてるわけじゃないよ!」


「じゃあ使えば?」


「どうやって!?」


「さあ?」


「無責任だなあ!」


 二人のやり取りを聞いていた妖精たちまで笑い始める。


「余ってるんだって!」


「もったいなーい!」


「私たちにちょうだい!」


「魔力ってあげられるの!?」


「知らなーい!」


「知らないの!?」


 リュカは頭を抱えた。


 けれど。


 その事実が意味するものを。


 この時のリュカは、まだ完全には理解していなかった。


 リュカは、もともと。


 常人を遥かに凌駕する、莫大な魔力を持っている。


 勇者パーティにいた頃。


 四大属性のどれにも適性がなく。


 まともな魔法を一つも使えなかった青年。


 唯一使えると思っていた爆裂魔法さえ。


 その正体は、莫大な魔力によって四種類の魔粒子を強引に引き寄せ。


 衝突させ。


 魔素へ変換する際に生じた、偶発的な大爆発だった。


 だが。


 妖精誘導法は違う。


 世界に存在する魔粒子の流れを読み。


 妖精たちの力を借り。


 その流れを、ほんの少しだけ望む方向へ導く。


 そのため。


 自らの魔力消費は、極めて少ない。


 つまり。


 莫大な魔力を持つリュカが。


 ほとんど魔力を消費しない魔法技術を身につけたということ。


 それが。


 どれほど異常なことなのか。


 リュカ自身は。


 まだ知らなかった。


「まあ、いいんじゃない?」


 フィオナが笑う。


「何が?」


「魔力が減らないなら、いっぱい魔法を使えるってことでしょ?」


「……まあ、そうだけど」


「じゃあ明日は、もっと長く修行できるね」


「え?」


「朝から夕方まで」


「ちょっと待って」


「楽しみだね」


「フィオナ?」


「頑張ろうね」


「休みは!?」


 フィオナは笑った。


 妖精たちも笑った。


 そしてリュカは。


 自分の魔力が減らないことを発見した翌日。


 昨日よりも長い時間。


 魔法の修行をすることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ