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勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


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第14話 薬草採取なら任せて

 冒険者ギルドを出たリュカとフィオナは、依頼書に記されていた森へと向かった。


 今回受けた依頼は、薬草の採取。


 危険な魔物の討伐でもなければ、難しい護衛任務でもない。


 冒険者になったばかりの新人でも受けられる、ごく簡単な依頼だった。


 森へ入り、しばらく歩いたところで。


「あった」


 リュカが足を止めた。


「え?」


「薬草」


 リュカは木の根元にしゃがみ込み、そこに生えていた草を指差した。


 細長い緑色の葉。


 フィオナには、どこにでも生えていそうな普通の草にしか見えない。


「これが?」


「うん」


 リュカは丁寧に根元へ手を伸ばし、傷つけないよう慎重に薬草を摘み取った。


「へえ」


 フィオナが興味深そうに覗き込む。


 リュカは採取した薬草を布袋へ入れると、再び歩き始めた。


 すると。


「あ、ここにもある」


「もう?」


「うん。それから、あっちにも」


「どこ?」


「あの木の陰」


 フィオナが目を凝らす。


 しかし、よく分からない。


「……どれ?」


「ほら、あそこ」


「分かんない」


「え?」


「全部同じ草に見える」


「全然違うよ」


「そうなの?」


 今度はリュカが不思議そうな顔をした。


 そして、少し離れた場所に生えていた二種類の草を摘み取る。


「例えば、これ」


 リュカは右手と左手に、それぞれ一本ずつ草を持った。


「こっちが薬草」


「うん」


「それで、こっちは毒草」


「……同じじゃない?」


「全然違うよ」


「どこが?」


 フィオナは二つの草を交互に見る。


 葉の形。


 大きさ。


 色。


 どれもほとんど同じに見える。


 リュカは苦笑しながら、二枚の葉を裏返した。


「葉の裏を見ると分かるんだ」


「葉の裏?」


「うん。こっちの薬草には、細い葉脈が七本ある」


「……本当だ」


「でも、毒草の方は九本」


 フィオナは顔を近づける。


 一、二、三、四。


 慎重に数えていく。


「本当だ。九本ある」


「でしょ?」


「すごいね」


「間違えて混ぜると危険だから、気をつけた方がいいよ。乾燥させるともっと見分けにくくなるし」


「へえ……」


 フィオナは感心したようにリュカを見る。


「リュカって詳しいんだね」


「……僕が?」


「うん」


 リュカは少し戸惑った。


 そんなことを言われたのは、いつ以来だろう。


「三年間、ずっと素材の回収をしてたから」


「素材の回収?」


「うん」


 リュカは歩きながら答える。


「勇者パーティにいた頃、僕は戦闘じゃ役に立てなかったから」


 荷物持ち。


 炊事。


 洗濯。


 魔物の解体。


 素材の回収。


 薬草の選別。


 魔物から取り出した魔素袋の処理。


 戦闘が終われば、リュカの仕事が始まった。


 仲間たちが休んでいる間に、魔物を解体する。


 使える素材を見分ける。


 売れる部位を傷つけないよう切り取る。


 毒のある部位を取り除く。


 森を歩けば薬草を探し。


 珍しい植物があれば採取し。


 野営地へ着けば、今度は食事を作る。


 誰も褒めてくれなかった。


 やって当然だと思われていた。


 少し遅れれば怒鳴られた。


 失敗すれば無能と呼ばれた。


 だから。


 リュカ自身も、それを大したことだとは思っていなかった。


「僕ができるのは、それくらいだったから」


 何気なく。


 本当に何気なく、リュカはそう言った。


 けれど。


 フィオナは足を止めた。


「それくらい?」


「え?」


「これだけたくさんの薬草を見つけられて、毒草との違いも分かって、魔物の解体もできるんでしょ?」


「まあ……うん」


「それって、すごいじゃん」


「……え?」


 リュカは足を止めた。


 フィオナは何でもないことのように笑っている。


「すごいよ、リュカ」


「……」


 リュカは何も言えなかった。


 すごい。


 たった一言。


 それだけだった。


 けれど。


 どう答えればいいのか、分からなかった。


「……どうしたの?」


「いや……」


 リュカは困ったように視線を逸らした。


「そういうこと、あんまり言われたことないから」


「そういうこと?」


「褒められること」


 フィオナは少しだけ目を見開いた。


 リュカは誤魔化すように笑う。


「僕、無能だったから」


「また言った」


「え?」


「無能って」


「あ……」


 フィオナは腰に手を当てた。


「私から見たら、リュカはすごいけどね」


「……僕が?」


「うん」


「薬草を見つけられるだけだよ?」


「私は見つけられなかったよ」


「でも、フィオナは魔法が使えるだろ」


「それとこれとは別でしょ」


 あまりにも簡単に言われて。


 リュカは黙り込んだ。


 できないことがある。


 できることもある。


 ただ、それだけ。


 フィオナは以前もそう言った。


 できないことがあるなら、できる方法を探せばいい。


 そして今。


 自分ができることを、すごいと言ってくれた。


 三年間。


 勇者パーティでは雑用だった。


 誰も評価してくれなかった。


 魔物の解体。


 素材の回収。


 薬草の選別。


 それらはすべて、戦えない自分が仕方なくやっていた仕事だった。


 けれど。


 その三年間は。


 もしかしたら。


 本当に、何も残らなかったわけではないのかもしれない。


「リュカ!」


 少し先を歩いていたフィオナが振り返る。


「早く行こうよ!」


「あ、うん!」


 リュカは駆け出した。


 そして、フィオナの隣に並ぶ。


「あっ」


「今度は何?」


「そこ、踏まないで」


「え?」


「薬草」


「うわっ!」


 フィオナは慌てて足を引っ込めた。


 リュカは思わず笑う。


「フィオナ、薬草採取は苦手なんだね」


「……見えないんだから仕方ないでしょ」


「僕には見えるよ」


「はいはい。すごいね、リュカ」


「……」


「何?」


「いや」


 リュカは少しだけ笑った。


「ありがとう」


 その言葉を聞いて、フィオナも笑う。


 誰にも評価されなかった三年間。


 無駄だと思っていた三年間。


 けれど、その日。


 初めて誰かが。


 リュカが積み重ねてきたものを見つけてくれた。

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