SS 第7話 夢
夕暮れ。
森を吹き抜ける風は心地よく、妖精たちも一匹、また一匹と家路についていた。
ルネを家まで送る帰り道。
ルネはフィオナの手を握りながら、嬉しそうに歩いていた。
「フィオナお姉ちゃん」
「ん?」
「今日は楽しかった?」
フィオナは優しく微笑む。
ルネは大きく頷いた。
「うん!」
「すっごく楽しかった!」
「それは良かった」
二人はしばらく並んで歩く。
やがて。
ルネは少しだけ不思議そうな顔をした。
「ねえ」
「どうしてフィオナお姉ちゃんは、僕と遊んでくれるの?」
フィオナは少し考えてから、小さく笑った。
「さあ」
「なんでだろうね」
ルネも笑う。
「変なの」
「でもね」
ふと、空を見上げる。
「フィオナお姉ちゃんとは、初めて会った気がしないんだ」
その言葉に、フィオナは静かに足を止めた。
「そうなの?」
「うん」
「夢を見るんだ」
「夢?」
「うん!」
ルネは嬉しそうに話し始める。
「フィオナお姉ちゃんみたいな人と、いっぱい遊ぶ夢!」
「いっぱい笑って」
「いっぱい美味しいものを食べて」
「いろんなところへ行って」
「すっごく楽しいんだ!」
その無邪気な笑顔に、フィオナも自然と微笑んだ。
「素敵な夢ね」
「うん!」
「だからね」
「フィオナお姉ちゃんといると、なんだか安心するんだ」
フィオナは何も言わず、その小さな手をそっと握り返した。
胸の奥が、優しく温かくなる。
記憶はなくても。
魂はきっと、覚えている。
フィオナはそう信じた。
二人は夕焼けに染まる森の小道を、ゆっくりと歩いていった。




