SS 第5話 フィオナお姉ちゃん
それからというもの。
フィオナは時折ルネの家を訪れ、一緒に遊ぶようになった。
森では妖精たちを追いかけて駆け回り。
「フィオナお姉さん!」
「こっちこっち!」
「そんなに走ったら転んじゃうわよ」
「だいじょうぶー!」
元気いっぱいに笑うルネを見て、フィオナも思わず笑ってしまう。
二人で城下町へ出掛ける日もあった。
お菓子屋さんでは甘い焼き菓子を頬張り。
「おいしい!」
「ふふっ、そんなに慌てて食べなくても逃げないわよ」
おもちゃ屋さんでは木で作られた剣や動物の人形に目を輝かせる。
「これ、かっこいい!」
「気に入ったの?」
「うん!」
「じゃあ、お姉さんからのプレゼント」
「ほんと!?」
ルネは飛び跳ねるように喜んだ。
公園では一緒に鬼ごっこをして。
森では競争するように木へ登った。
「フィオナお姉さん!」
「早く早く!」
「ルネ君には、まだ負けないわよ」
気付けば、フィオナも子どものようにはしゃいでいた。
そんな二人の姿を見て、街の人々は自然と笑みを浮かべる。
「あら」
「仲の良い親子みたいね」
その言葉に、ルネはきょとんと首を傾げた。
フィオナは少し照れくさそうに笑う。
「親子ではありませんよ」
「でも」
「私にとって、とても大切な人なんです」
その言葉に、街の人々も温かく微笑んだ。
夕暮れ。
ルネの家まで送る帰り道。
ルネは突然立ち止まり、フィオナを見上げる。
「ねえ」
「どうしたの?」
ルネは少し照れくさそうに笑った。
「フィオナ……」
一度言葉を止める。
そして、満面の笑みで呼んだ。
「フィオナお姉ちゃん!」
その一言に。
フィオナは目を丸くした。
けれど次の瞬間。
とても嬉しそうに微笑む。
「うん」
「何かな? ルネ君」
ルネも嬉しそうに笑う。
その日から。
ルネは「お姉さん」ではなく。
「フィオナお姉ちゃん」と呼ぶようになった。




