SS 第3話 家族
ルネの家をあとにしたフィオナは、その足で王城へ戻った。
向かった先は、アルディオンとエルミニアの私室。
二人はフィオナの表情を見るなり、何かを察したように席を勧めた。
「何か、あったのだね」
アルディオンが静かに尋ねる。
フィオナは頷き、今日あった出来事をゆっくりと話し始めた。
森で出会った一人の少年。
魂を見る魔法で見た、その魂。
ルネの母から聞いた幼い頃の話。
そして。
その魂が、間違いなくリュカだったこと。
話し終えた瞬間だった。
アルディオンはその場に膝をつく。
エルミニアも口元を押さえ、その場へ崩れ落ちた。
二人の瞳から、大粒の涙が溢れる。
アルディオンは涙を拭いながら、小さく笑った。
「全く……」
「ますます親不孝者だ」
困ったように空を見上げる。
「戻ってきているのなら」
「一言くらい、教えてくれてもよいものを」
その言葉に、エルミニアも涙を流しながら微笑んだ。
「本当に……」
「リュカ君らしいわ」
三人はしばらく笑っていた。
涙を流しながら。
笑っていた。
やがてアルディオンは表情を引き締め、フィオナへ向き直る。
「しかし」
「忘れてはならないことがある」
フィオナも静かに姿勢を正した。
「ルネ君は、リュカ君であって、リュカ君ではない」
「魂は同じでも」
「彼は新たな人生を授かった、一人の少年だ」
「前世は前世」
「今世は今世として、生きる権利がある」
優しく諭すような口調だった。
「だからこそ」
「その境界だけは、決して越えてはならない」
「そこは慎みなさい」
フィオナは静かに頷く。
「……はい」
その返事を聞き、アルディオンは優しく微笑んだ。
「その上で」
「リュカ君との約束を果たしなさい」
「今度は、ルネ君の人生を大切にしてあげるんだ」
フィオナは、まっすぐ父を見つめる。
「はい」
「二人の人生を、大切にします」
アルディオンとエルミニアは穏やかに頷いた。
その笑顔は、愛する息子と再び巡り会えた父と母の笑顔だった。




