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勇者パーティを追放された僕は、エルフの君と来世まで恋をする  作者: Atelier Lotus


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第130話 また会おう

 静かな朝だった。


 窓から差し込む柔らかな陽の光が、部屋を優しく照らしている。


 ベッドには、穏やかな表情で横たわるリュカ。


 その傍らには、フィオナが寄り添っていた。


 部屋には、精霊王アルディオンと、精霊王妃エルミニアの姿もある。


 誰も言葉を発さない。


 ただ、静かな時間だけが流れていた。


 やがて、リュカはゆっくりと目を開ける。


 その視線は、アルディオンへ向けられた。


 アルディオンは、小さく笑った。


 だが、その笑顔は震えていた。


「リュカ君」


「……君は、私の自慢の息子だ」


 一度、言葉を切る。


 潤んだ瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。


「そして」


「君は、本当に親不孝者だ」


 その声は、涙で震えていた。


「父より先に逝く息子が、どこにいるんだ」


 理を知る精霊王であっても。


 愛する息子との別れだけは、受け入れることができなかった。


 その隣で。


 エルミニアは堪えていた涙が溢れ出す。


「嫌……」


 震える声が漏れる。


「嫌よ……」


 ベッドへ駆け寄り、リュカの手を両手で包み込む。


「まだ行かないで……」


「もっと一緒にいたいの……」


「あなたは、私たちの大切な息子なんだから……」


 その姿は、精霊王妃ではなかった。


 一人の母親だった。


 部屋の入口で控えていた護衛のエルフたちは、言葉を失う。


 いつも冷静沈着な精霊王が涙を流している。


 誰よりも気高い王妃が、声を上げて泣いている。


 一人の護衛が、心配そうに呟く。


「陛下……」


「王妃様……」


 だが、誰も近づくことはできなかった。


 今、この部屋にいるのは。


 王と王妃ではない。


 息子を見送る父と母だった。


 リュカは弱々しく微笑む。


「お義父さん」


「お義母さん」


「今まで、本当にありがとうございました」


「僕を家族として迎えてくださって……」


「とても幸せでした」


 アルディオンは静かに目を閉じる。


 エルミニアは涙を流しながら首を横に振った。


 そして。


 リュカはフィオナへ視線を向ける。


 七十年間。


 誰よりも愛し続けた人。


 フィオナは涙を流しながら、それでも笑顔を浮かべていた。


 そっと、リュカの手を握り締める。


「安心して」


「魂は、肉眼では見えない」


「精霊眼でも見ることはできない」


「でも」


「私は、魂を観る魔法を完成させたわ」


 リュカは静かに目を見開く。


 フィオナは優しく微笑む。


「この魔法で」


「どれだけ時間がかかっても」


「必ず、あなたを探しに行くから」


「だから」


「安心して旅立って」


 その言葉を聞いた瞬間。


 リュカの目から、一筋の涙が零れ落ちた。


「……フィオナ」


 弱々しく笑う。


「最後まで……ずるい人」


 フィオナは泣きながら笑った。


 そして、優しくリュカの涙を拭う。


「あなたは」


「最初に会った時から、泣き虫なのは変わらないわね」


 あの日。


 森で出会った時と同じように。


 リュカは少し照れくさそうに笑う。


「絶対に……見つけてね」


 フィオナは力強く頷いた。


「うん」


「約束」


 二人は最後まで笑っていた。


 その笑顔を見届けるように。


 リュカは静かに目を閉じる。


 穏やかな寝息のように。


 愛する人たちに見守られながら。


 静かに、その生涯を終えた。


 魔王ニコラスは、死を拒絶した。


 リュカは、死を受け入れた。


 そして、生きている間に交わした約束を、一つずつ守り続けた。


 世のため。


 人のため。


 誰かの笑顔のために生きる。


 その生涯を貫いた二人を、人々はいつしか――


 誠の勇者と呼ぶようになった。

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