130/143
第129話 七十年
それから、七十年の歳月が流れた。
かつて十九歳だったリュカは、白髪の似合う老人となっていた。
その隣には、変わらぬ姿のフィオナがいる。
エルフである彼女の美しい面影は、出会ったあの日とほとんど変わっていなかった。
けれど。
二人が共に歩んできた年月は、決して変わらない。
旅をした。
たくさん笑った。
涙も流した。
喧嘩もした。
仲直りもした。
恋をした。
夫婦になった。
世のため。
人のため。
多くの人を助けながら、共に生きた。
振り返れば、あまりにも長く。
それでいて、あまりにも短い七十年だった。
リュカは穏やかに微笑み、隣に座るフィオナを見つめる。
その笑顔は、初めて出会った頃と何一つ変わらない。
リュカは静かに目を細めた。
「幸せだったな」
その一言には、七十年分の想いが込められていた。




