第107話 魂
謁見の間は静寂に包まれていた。
白竜皇オルドは、穏やかな黄金の瞳でリュカとフィオナを見つめ、静かに口を開く。
「これより語るは」
「神話の時代より命を見届けてきた、我ら竜族が辿り着いた生命の理」
「世界には様々な考えがあろう」
「だが」
「我ら竜族は、そのように理解している」
リュカは黙って耳を傾けた。
「生命は」
「死で終わるものではない」
一拍置き、オルドは続ける。
「死とは」
「新しい生の始まりでもある」
その一言に、リュカは静かに目を見開いた。
「人は死ねば」
「刹那の空白すらなく」
「魂は次なる世界へ赴く」
「それが生命の流れ」
「それが輪廻である」
静かな声が、謁見の間へ響き渡る。
「真の己とは」
「この肉体ではない」
「魂こそが、真の己である」
「肉体とは」
「神より一時借り受けた器に過ぎぬ」
「ゆえに」
「定められた刻が来れば、神へ返す」
オルドはゆっくりと自らの胸へ手を当てた。
「滅びるのは肉体だけ」
「魂は滅びぬ」
「魂は生命を終えることなく」
「新たな生命として、再び歩み始める」
黄金の瞳が、優しく二人を見つめる。
「だからこそ」
「死とは終わりではない」
「新たな旅立ちなのだ」
リュカは、その言葉を静かに胸へ刻んだ。
死とは、すべてを失うことではない。
生命とは、肉体を変えながら歩み続ける、終わりなき旅路なのだと。




