第104話 覚悟
謁見の間は静まり返っていた。
白竜皇オルドは、静かにリュカを見つめる。
黄金の瞳には、千年を超える時を生きた者だけが持つ深い静けさが宿っていた。
「魔王ニコラスも」
「其方と同じ願いを抱いた」
リュカは息を呑む。
オルドは続ける。
「死にたくない」
「永遠に生きたい」
「誰しも一度は抱く願いよ」
「ニコラスもまた」
「その願いから始まった」
千年前。
ニコラスもまた、一人の人間だった。
死を恐れ。
永遠を願った。
それだけなら、何も罪ではない。
オルドは静かに問いかける。
「其方はどうする」
その一言だけだった。
だが。
その問いには、あまりにも重い意味が込められていた。
もし。
目の前に魔核融合体があったなら。
もし。
永遠を得る方法がそれしかなかったなら。
其方は、その手を取るのか。
リュカは迷わなかった。
ゆっくりと首を横へ振る。
「そんな方法なら」
「いりません」
その答えに、一切の迷いはなかった。
「世界を犠牲にしてまで」
「僕は生きたいとは思いません」
「誰かの命を奪ってまで」
「フィオナと一緒にいたいとも思いません」
リュカはフィオナを見つめる。
そして、もう一度オルドへ向き直った。
「僕は」
「フィオナと同じ時を生きたい」
「でも」
「そのために生命の理を踏みにじるつもりはありません」
フィオナは何も言わない。
ただ、隣で静かに微笑んでいた。
オルドもまた、何も答えなかった。
黄金の瞳で、ただ静かにリュカを見つめ続ける。
その沈黙は。
まるで、目の前の青年の覚悟を見極めているかのようだった。




