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シルバーバレット  作者: 顔のない人間
第二章 腐敗都市リベリオン

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第24話 サイボーグ

 ――その光景を目にした瞬間、リボルは思考を止めた。


「……なんだ、これ」


 思わず、素の声が漏れる。


 視界の先。

 崩れかけた通路一帯を埋め尽くすのは、無機質な金属と肉体が融合した男たちだった。


 義肢、外骨格、露出した配線。

 無理やり継ぎ足された装甲が軋みを上げ、ぎこちなく動くたびに油の匂いが漂う。


「むさ苦しいどころの話じゃねぇ……」


 喉の奥で乾いた笑いが出る。


「こんなの、サイバーパンクの映画以外で見たことねぇぞ」


 次の瞬間。


 ――視線が、こちらを捉えた。


 電子音混じりの駆動音。

 男たちが一斉に顔を向け、赤く点灯するセンサーがリボルをロックオンする。


「……気づかれたな」


 その刹那金属音と共に、群れが襲いかかってくる。


「マジかよ!」


 反射的に叫び、リボルは腰のポーチから煙幕弾を引き抜いた。


「おぉぉぉぉっ!」


 床に叩きつけると同時に、白煙が爆発的に広がる。

 視界が遮断され、センサーの警告音が乱れた。


 リボルは壁際へ転がり込むように身を隠す。


(ざっと……三十)


 煙越しに響く重たい足音。


(しかも、キメラ混じりか。冗談じゃねぇ)


 歯を噛みしめながら、冷静に状況を整理する。


(こういうのは本来、クライドの仕事だろ……)


 一瞬、脳裏に雷神の姿が浮かぶ。


(だが、今は無理だ)


 視線の先――ソフィアが向かったルート。


(ここで足止めしなきゃ、あいつが危ない。作戦も瓦解する)


 短く息を吐く。


(……やるしかねぇか)


 覚悟を決め、リボルは銃を構え直した。

 指が引き金の感触を確かめる。


「――ウォズ!」


 低く呼ぶ。


 次の瞬間、足元の影が不自然に揺らぎ、

 そこから小さな人影が、ぬるりと這い出てきた。


「やっと私の出番か」


 ミニウォズは、どこか気怠そうに肩を回す。


「で、用件は?」


「小血弾を作れ」


 ウォズの眉が、ぴくりと動く。


「報酬は?」


「二十年物の――若い女の血でどうだ」


 一瞬の沈黙。


「……心得た」


 ウォズは口元を歪め、愉快そうに笑う。


「五分待て」


「はいよ」


 リボルは再び前を向いた。


 煙の向こうで、金属と肉が擦れる音が近づいてくる。


(五分か……)


 銃口を上げ、静かに息を整える。


(上等だ。地獄の果てまで、付き合ってやる)


 白煙の奥から、赤い光がいくつも瞬いた。


 リボルは一切の躊躇なく、サイボーグの群れへと踏み込んだ。


 黒い床を蹴る音と同時に、両手のピストルが火を噴く。

 乾いた銃声が連なり、先頭のサイボーグが動きを止めて崩れ落ちた。


「……よし」


 息を整える間もなく、次の標的へ照準を移す。


(制限時間は、せいぜい十分ってところか)


「張り切っていきますか」


 その呟きを合図にしたかのように、

 金属の体を軋ませながら、サイボーグたちが雄叫びを上げて突進してきた。


「この動き……レベル3、ってとこだな」


 リボルの表情に、焦りはない。


 銃口がわずかに揺れ、

 ――一発。


 キメラ型の個体に放たれた小血弾が、動力部を正確に貫き赤色の棘が頭蓋骨を砕く。

 続けざまに放たれるバレット弾は、サイボーグの弱点を寸分違わず撃ち抜いていった。


 心臓部。

 後頭部。

 制御中枢。


 無駄のない射撃。

 弾丸は迷わず、確実に仕事をする。


「まだまだだな」


 だが、そのとき。


 数体のサイボーグが、不自然に動きを止めた。


《自動AIモード起動》

《敵性存在を速やかに排除します》


「……チッ」


 リボルは即座に状況を理解した。


(まずいな。AIは単純だが、長引くと学習される)


 口角が、わずかに上がる。


「なら――二秒で終わらせる」


 次の瞬間、彼は二丁の銃を同時に構えた。


 ――コンマ0.001秒。


 人間の知覚を完全に置き去りにする早撃ち。

 閃光のような銃声が連続し、空気そのものが震える。


 気づいたときには、

 十体近いサイボーグが、声を上げる暇すらなく沈黙していた。


 硝煙がゆっくりと漂う中、リボルは銃口を下ろす。


「……やっぱり、おかしいな」


 胸の奥に、微かな違和感が残る。


(この数、この配置……)


「ここまで揃えられるってことは、

 相当強力な統率者がいるはずだ」


 背筋を、冷たいものが走った。


「……嫌な予感しかしねぇ」


 だが、それでも――

 彼の歩みは止まらない。


 影の中へと、リボルは静かに進み続けた。

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