32.5話 幕開「リュード、早朝の街角で」
朝のリュード。
遠くに鐘の音が響き始めると、まだ新しい街の冷たい空気のなか、
パーティーの面々は宿屋の食堂に自然と集まっていた。
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◆サリナの“いつもより大胆”な朝
この日はギルドの制服ではなく、
白いブラウスとゆるいカーディガン姿のサリナがテーブルに座っている。
少し髪を下ろしているだけで、雰囲気がどこか柔らかく感じられた。
「今日は事務仕事がなくて……少しリラックスしてるんです」
レイルが「なんだか、いつもと違う感じ」と照れたように言うと、
サリナは「似合いますか?」と小さく微笑んで、頬をほんのり染める。
モモンがサリナの膝に“ぷるぷる”と飛び乗り、
「ふふ、モモンは甘えん坊さんですね」と楽しそう。
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◆カレンの屋台、朝の誘惑
一方、屋台街で忙しそうに働くカレンは、
いつもよりちょっと大胆なチュニック姿。
「レイルくん、今日は“特製フルーツタルト”も付けとくね!」
と、わざと身を乗り出してお皿を渡す。
胸元のリボンがふわりと揺れるのが、レイルの視線を惑わせた。
「……ありがとう」
困った顔のレイルに、カレンはいたずらっぽく笑いかける。
“ま、あたしはリシェルほどじゃないけど、
レイルくんの優しさには、つい目で追っちゃうことがある。
……あー、なんだろ、これって。”
カレンはリシェルをからかう一方で、
時々自分でも説明できない気持ちに気づき始めていた。
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◆リシェルの“意外な一面”と静かな想い
リシェルはギルド制服の上にカレンが選んだ淡いストールを羽織っている。
「似合ってるよ!」とカレンに背中を押されて、ぎこちなく「ありがと……」と返す。
朝食の配膳の時、リシェルがうっかりレイルにぶつかり、
「ご、ごめん……」と手を添えたまま、思わず長い時間目を合わせてしまう。
カレンが「リシェル、最近レイルくんと仲良いもんね?」と軽くからかうと、
リシェルは「そ、そんなこと……」と口をつぐむ。
“だって……レイルは、仲魔にも私たちにも本当に誠実で――
信頼できる人だって、自然に思うようになった。
最近は……それが、胸の奥で小さく膨らんでいく。”
自分でもまだ整理できない「信頼と好意の入り交じった感情」に、リシェルは小さく戸惑っていた。
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◆ギルドの朝――男たちの視線
ギルドでは、常連の冒険者たちが朝から
「今日はギルドが華やかだな」
「カレンちゃん、リシェルちゃん……」
と、いつもより賑やかにざわついている。
レイルは落ち着かない気分でパンを齧り、
モモンとミルは気にせずパンくずを拾っている。
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◆さりげない“火花”と、安らぎの時間
配膳のとき、リシェルがレイルに接近しているのをサリナがちらりと見て、
そのあとカレンも冗談っぽく「リシェル、もうちょっと押してみなよ」と耳打ち。
それぞれの想いが、
“仲間”のなかに、静かに火花を散らせていた。
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◆街での、はじまりの朝
温かな空気に包まれて――
「ここで、俺達も成長していくんだ」とレイルも胸の中で呟く。
恋心とは呼べないまでも、信頼と親しみが少しずつ積み重なり、
大人の雰囲気がほんのり漂う、静かな朝。
新しい一日の始まりに、
パーティーの未来の予感がそっと揺れていた。




