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宇宙(そら)の女神~転生先は異世界ではなく 異星でした~  作者: 三毛猫乃観魂


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第七十九章 ダイアナの叫び

 思いっきり叫ぶ。

「何か、あいつら速くなってきてないすか?」

 戦士の一人が恐る恐る言うと、

「気のせいじゃない、本当に速くなってきていやがるぞ」

 戦士の一人がさも嫌そうに答えてあげた。

 フィリップ・マウスの突進のスピードは確かに速くなってきていた。今は躱せているが、このままスピードが上がり続ければいずれは躱せなくなり、犠牲者が出る。

 あんなのに体当たりされたら、ミンチになってしまう。そんなのは嫌だ。

 おまけに倒しても倒しても分裂して数が減らない。

「報告では聞いていたが、これは厄介だな」

 ぼやきながら戦士は対エイリアンライフルぶっ放し、フィリップ・マウスを撃ちまくって数が増えすぎるのを押さえているが、数も減らない。

 今は余裕があっても、このまま増え続け、スピードが上がり続ければいずば危険な状況になる。

 二年前には猫の精霊と融合したスペリオルのスリューがいてくれたおかげで戦士たちは疲労はしなかったが、今回はいずれ疲労し疲れが出てくるだろう。そうなれば死傷者も出てもおかしくはない。

「解析できた」

 フィリップ・マウスをじっくりと見ていたダイアナは、フィリップ・マウスが一塊になっているところ目掛け、

「鬱陶しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」

 と“叫ぶ”。

 ダイアナの叫びの直撃を受けたフィリップ・マウスたちの体に罅が入り、粉々に粉砕された。

 見つめることでフィリップ・マウスの固有振動数を解析し、同じ振動数の叫びをぶつけることで強振させ、細胞の結合を砕いたのだ。

「あんたなんてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」

 しかも異なる固有振動数には影響を与えない、フィリップ・マウスへのピンポイント攻撃。

「お呼びじゃないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」

 ダイアナは次々とフィリップ・マウスの群れに“叫び”を放ち、次々と粉砕していく。

 数を減らしてもフィリップ・マウスは分裂して増えていく。

「こいつら二年前より、分裂が早くなっていやがる」

 ケイシーの指摘通り、二年前より分裂するスピードが上がっている。分裂に特化させた体を造り上げた分裂体フィリップ・マウス。その分、戦闘力が落ち、針だらけの体で突進しかしてこないが。

 突進しかしてこないと言っても、あれに直撃されたら無事じゃ済まないけど。

 戦士たちだって負けてはいない、フィリップ・マウスの突進を躱しながらダイアナの“叫び”と連携を組んでフィリップ・マウスを駆逐して行く。

 駆逐が分裂スピードを上回ったかと思った瞬間、フィリップ・マウスが飛び上がり、空中でお互いの体をぶつけて跳弾した。

「うあっ」

 戦士の一人が何とか躱す。実戦で磨き鍛え上げた身体能力、動体視力、直感が無かったら直撃していた。

 次々にフィリップ・マウスたちが飛び上がって体をぶつけ合うことで加速して跳弾。

 変則的な跳弾攻撃は読み辛く、躱すのが精一杯、反撃する余裕がない。

 この間にフィリップ・マウスは分裂、減った数を補い増殖。

 跳弾したフィリップ・マウスがケイシーに向かってくる。引き金を引くのは間に合わない、

「ふざけるんじねぇ、フィリップ!」

 対エイリアンライフルをバット代わりにフィリップ・マウスをぶん殴る。

 芯を捕らえられて吹っ飛んだフィリップ・マウスは戦士に突進しようとしていた別のフィリップ・マウスと衝突。

「ありがとう、助かった」

 お礼を言い終えるなり、戦士はすぐさま参戦、対エイリアンライフルを撃つ。

 次々とフィリップ・マウスはジャンプ、二体がぶつかり、跳弾、加速を繰り返す。

 その内の一体が加速し、真っすぐダイアナに向かう、それも背中目掛けて。

 “叫び”を放っていたダイアナに振り返る余裕も躱す余裕もない。他の戦士たちの対エイリアンライフルでの射撃も間に合わない。

「エリス」

 自然に思い人の名前が口から声が出た時、今にもダイアナに衝突しそうだったフィリップ・マウスは空中に浮き上がった。

 一体だけではない、キスブキノスカにいる全てのフィリップ・マウスが空中に浮かび上がり、一か所に集められ直径2m程の球体型の結界に閉じ込められる。

 球体型の結界内でもフィリップ・マウスも増殖するが結界の外に出ることが出来ない。

 どんなにフィリップ・マウスが数を増やそうとも球体型の結界は壊れることなく、大きさも形も変えることなく、一体たりとも結界から逃がすことなく閉じ込め続ける。

「エリス」

 ダイアナは助けてくれた幼馴染の名前を呼んだ。

 いつの間にそこにいたのか、エリスが立っていた。光り輝く鎧のような光のオーラを身に纏い、背には何枚もの翼にも後光のようにも見える光を放ちながら。

 集まった戦士の中には神々しさと美しさに、思わず見とれてしまう者も。

「女神様」

 と呟いた戦士。間違っていないけど。

 ダイアナとケイシーは駆け寄りたい気持ちを堪えた。今はそんな場合ではない。

 エリスはフィリップ・マウスを閉じ込めた球体型の結界の中に最強クラスの磁場を発生させる。

 最強クラスの磁場を受けたフィリップ・マウスの群れの生命活動が維持できなくなる。そして原子を構成する電子の軌道は長細くなり、針状の形状になって崩壊。

 一体も残らず細胞の一片たりとも残さず崩壊させ消滅させる。

 こんなこと地上でやったら、全てのものが消滅していた。エリスは球体型の結界の中だけで磁場を発生させ、一切外には影響を出さなかった。

 発生させて磁場ごと球体型の結界を消し去る。

 エリスに見とれていた戦士の一人が我に返り、周囲を見回す。どこにもフィリップ・マウスの姿は見えない。

 一体も残らず、フィリップ・マウスは消滅した。

 エリスには言いたいことが沢山あった。二年分の思い、でもダイアナの口から出た最初の言葉は、

「おかえりなさい」

 の一言だった。







 思い人の名前。

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