第七十八章 再びキスブキノスカ
再びキスブキノスカに現れた敵。
武装を整えキスブキノスカに駆けつけたダイアナとケイシー。
「よく来てくれました」
キスブキノスカの前に集結している戦士たち。
「既に住人の非難は終えております」
まだ日は落ちておらず、キスブキノスカが本格的に活動する前だったので避難もスムーズに済む。
「私たちが呼ばれた理由はやはり……」
「はい」
従来のエイリアンならば、ここに集まった戦士たちで十分に対処可能。しかし、タイプ不明のエイリアンなれば話は別。
得体のしれない相手、スペリオルがいれば心強い。それにダイアナとケイシーは二年前、ここで宇宙の消滅神と戦った経験がある。
イデア、ジャック、エマ、スリューは今ラースにはいない。一番、近い場所にいたスペリオルがダイアナとケイシーだった。
既に準備は整っている。ダイアナとケイシーの意思を確認。頷くことでこちらも準備は整っていることを伝える。
「行きます」
リーダーの掛け声でキスブキノスカに突入。
部隊を分け、キスブキノスカ全域を捜索する。
二年前の戦闘で破壊された建物はすっかりと建て直され、壁も道も修復済み。殆ど痕跡が見当たらない。
戦士以外誰もいないキスブキノスカでエイリアンを探していると、ダイアナとケイシーは二年前のことを思い出す。
あの時の戦友は元気でジェイニーやジョナサンたちとは今もメールのやり取りをやっている。
『見つけました』
捜索していた部隊の一つから連絡が入った。ダイアナとケイシーたちは連絡のあった場所に向かう。
連絡のあった場所に着くと、既に戦士たちがエイリアンを包囲して対エイリアンライフルを構えていた。
「あれは……」
タイタンと融合してスペリオルになったケイシーの声が微かに震えていた。ダイアナも似たような状態。
戦士たちに包囲されたエイリアンの姿は犬ほどの大きさのネズミ。ネズミと言っても凶悪な姿ををしていて、最大の問題は顔にエルフの面影があること。
その面影をダイアナとケイシーはよく知っている。
「フィリップ……」
ダイアナは呟いた。ネズミの顔はフィリップに似ていた。二年前、エリスと戦った宇宙の消滅神顔を持つエイリアン。
「やはり、あれはイヴィル……」
戦士の一人が言った。少々声が引きつっている。イヴィルは並のエイリアンなど足元にも及ばない強敵。
「馬鹿なイヴィルは全滅したはず」
別の戦士が言う。確かにイヴィルはフィリップの取り巻きが変貌したものであり、既に全部討伐された。
だが、今、目の前にいるエイリアンはタイプ不明であり、イヴィルの特徴を有している。おまけにフィリップの顔まで持っているではないか。
フィリップの顔がネズミと一緒に凶悪としか言えない表情になる。
「まさかだよな……」
ここにフィリップがいると言う事はエリスは……。ケイシーが最悪の予感を抱きそうになった時、戦士たちのカード型スマホにヴァルミネからの星間通信が入った。
『それはネズミに寄生して生き延びた分裂体。身を潜めて力を蓄えていたのです』
分裂体の生き残りの気配を感知した御子が知らせてくれた。
最悪の事態でなくてダイアナとケイシーはほっとした。
分裂体はネズミに寄生して二年間キスブキノスカに隠れ続けた。ラースに居ないとはいえ、御子に感知できないレベルで。
力を蓄え、活動したことで御子に感知されたのだ。
分裂体の生き残り、フィリップ・マウス。
フィリップ・マウスの体が変化して全身が黒光り。
戦士の一人が対エイリアンライフルを発砲。黒光りする体が弾丸を弾き飛ばす。
フィリップ・マウスは全身をを金属に変えた、それも対エイリアン弾丸を弾き飛ばす硬度の金属に。
さらに体のいたるところから針を生やし伸ばした。これではまるでハリネズミ、可愛さなんて全くないけど。
あんなのに体当たりされたら、一巻の終わり。
「ケイシー、あれが分裂体なら……」
「怖いこと言うなよ」
二年前、二人はここで目の当たりにしたのだ。そして戦士たちも今ここで目の当たりすることになる。
分裂を始め、フィリップ・マウスは数を一気に増やす。
「ゲッ」
つい戦士の一人が声を漏らしてしまう。
「言っている傍から、増殖しやがった!」
一歩下がってケイシーは距離を取り、対エイリアン用ライフルをレーザーに切り替え、フィリップ・マウスを焼き切る。
戦士たちも距離を取り、レーザーや対エイリアン用徹甲弾に切り替え一斉射撃。
高速回転を始めたフィリップ・マウス、削り取られる石畳。
「やべぇ」
突進してくるフィリップ・マウスを咄嗟に避けた戦士の横をすり抜け、壁を砕く。
「折角、修理したんだぞ」
戦士が何発もの徹甲弾を撃つ込み、壁を砕いたフィリップ・マウスを仕留める。
他のフィリップ・マウスも高速回転を始める。
「全員、来るぞ!」
戦士の一人の叫びは全員共通の叫び。
次々に突進をかましてくるフィリップ・マウス。素早く躱す戦士もいれば、体当たりされる前に対エイリアンライフルのレーザーや徹甲弾をぶっ放して仕留める戦士も。
「とことん、嫌ななことする奴だな」
対エイリアンライフルを撃ちまくり、突進してくるフィリップ・マウスたちを倒して行くケイシー。
あんな針だらけの奴ら、いくらタイタンでも殴ったり蹴ったりしたら痛い。
何体ものフィリップ・マウスの突進を躱しながら、ダイアナはスペリオル・モードを発動。しっかりと見つめてフィリップ・マウスを解析する。
戦士たちは果敢にも戦い、今のところ死傷者無し。
ハリネズミは可愛んだけどね。




