第七十七章 戦勝を祝うパーティ
美味しそうな料理を目の前にしても。
キスブキノスカの戦いは人類の勝利で終わった。
「お帰りなさい、料理の用意できているわよ」
シャーロットと使用人がキスブキノスカが帰ってきた戦士たちを出迎えた。
リーン家の庭に置かれた幾つものテーブルの上には各地から取り寄せた食材をシャーロットと使用人が腕を振るって作った料理が所狭しと並べられ、美味しそうな香りを放っていた。
アラン、ダイアナ、ケイシー、エックハルト、ボドワン、ローズモンド、ジェイニーと荒くれ者みたいな部下たち、ジョナサン、トム、イデア、ジャック、エマ、スリュー、ラース、レーフォ、ヘレ、リグス、ルザーレの戦士たち。
空中に投影されたスクリーンにはオーギュストと赤い宇宙戦艦のクルーが映し出される、ギードたち整備士の姿もあり。
他にも投影されたスクリーンには宇宙で戦ってくれた戦士たちが映し出される。
シャーロットが腕を振るって作った料理は食べられないけど、戦勝を祝うパーティには参加してくれた。
オーギュストの赤い宇宙戦艦や他の宇宙戦艦に料理の出来るクルーがいて、シャーロットの料理には及ばないものの美味しい料理を作った。
オーギュストたちが宇宙で戦ってくれたお陰で、ラースにエイリアンは到達することは無かった。
もしエイリアンがラース到達していたら、一気に不利な戦いになっていただろう。
宇宙戦の勝利無くして、地上の勝利は無かった。
リーン邸が広いとは言っても、流石に全宇宙から集まった戦士全員は入れないので代表者たちだけがきた。
御子と神官たちは挨拶済ませた後、ヴァルミネに帰るために空港へ。
確かに御子と神官たちがパーティで楽しむイメージが湧かない。
「では、パーティを始めましょう。一人も欠けることなく、宇宙もラースも護れたことを祝して」 今回、戦いの指揮を執ったエックハルトが音頭を取る。
エックハルトの望み通り、誰一人死者を出すことなく、宇宙もラースも護れた。被害と言えるのは壊されたキスブキノスカのみで、これはちゃんと修復が出来る。
今回の戦いは完全勝利といても間違いではない、そう間違いではない……。
戦勝を祝うパーティが始まる。
ダイアナの表情は明るくなく、一口二口食べるだけあまり食べようとはしない。
「エリスのことを心配しているのか」
ローズモンドが声をかけた。
その通りである。エリスのことを心配しているのはダイアナだけではない、戦勝を祝うパーティの参加者全員がどこかぎこちなく、笑顔も会話も少ない。
ケイシーも目の前に美味しそうな料理が並んでいるにもかかわらず、全然食が進んでおらず。
誰も彼もが静かに料理を食べていた。
キスブキノスカの戦い。宇宙、ラース、宇宙にいる生きとし生けるもの全ての存在を護る戦いに勝利できたのはエリスのお陰。
しかし、そのエリスが今ここにいない。
「心配する必要は無い、エリスは無事だ」
断言するローズモンド。気休めや詭弁で言ったのではない、本心と確信をもって言ったことが解る力のある言葉。
「だってそうだろ、私たちは今こうやって美味い飯を食ってかだから」
リーン家の庭でキスブキノスカで戦った戦士たちがシャーロットの作った料理を食べている。
「ラースも宇宙も未だ存在している、私たちも元気にしているんだぞ。それこそがエリスが無事だと言う証拠だ」
宇宙の消滅神は名前が示す通り、宇宙を消滅させる存在。
エリスは宇宙を護るために宇宙の消滅神と戦った。
そして今も宇宙は存在し、みんなでパーティをしている。例えこの場にエリスが居なくとも宇宙の女神と宇宙の消滅神の戦いの勝敗は明らか。
「勝ったんだから、帰って来るさ、エリスは。私はあいつの教師だったんだ、それぐらいのことは解るさ」
この時、ローズモンドの見せた表情は戦友であり、教師のものであった。
「うん、エリスは必ず帰って来る」
ダイアナは笑顔で返す。
その笑顔はみんなに安心を広めて行った。
「なんだか、急に食欲が湧いてきた」
ようやく、本格的に料理を食べ始めるケイシー。
キスブキノスカで戦った戦士たちも、やっと並べられた美味しい料理に舌鼓を討てるようになった。
「エリスの分も残しておいてね」
「解っているわよ」
笑顔のシャーロットに笑顔で返事。
安心したら、ダイアナもお腹が減ってきた。目の前にあったサンドイッチを摘まんで一口。
勝利を祝うパーティが終わってもエリスは帰ってこず。
フィリップとの戦いで破壊されたキスブキノスカが再建が完了し、再び人が通うようになってもエリスは帰っては来なかった。
そして、月日が流れること二年……。
パーティが終わっても。




