第七十二章 キスブキノスカの戦い
地上での決戦開始。
ラースにある歓楽街、キスブキノスカ、日が暮れれば食事や酒や娯楽を求めて沢山の人が集まる、夜に活動する街。
しかし今日は日が暮れても誰一人もキスブキノスカに訪れる者はいない。
店もシャッターが下ろされていて、一店も営業しておらず。
くまなくラースを調査した結果、フィリップの姿がキスブキノスカで確認された。
神官たちが更なる結界を張ってフィリップをキスブキノスカに閉じ込めた後、住民たちを一人残らず非難させ、無人にした。
ラースに張られた結界とキスブキノスカに張られた結界。二重の結界で閉じ込めせれたフィリップ。
ラースからもキスブキノスカからも出られないうちに決着をつける。
各店のオーナーや地主には了承済み。店が破壊され、更地になる可能性があっても受け入れてくれた。
ラースや宇宙が消えてなくなることに比べれば、街一つ諦めるのも仕方なし。
復興は軍部や各星の政府が保証してくれる。
キスブキノスカに集まる精鋭たち、御子と神官たち、指揮を執るエックハルトにサポートのボドワン、ローズモンド。
エリスの父親のアラン。戦いで負傷してスチールになったが、戦士であることには変わらない。幼いころからエリスの訓練相手をしてくれた手腕は健在。
ジェイニーと荒くれ者みたいな部下たちにトムにライパ星人のジョナサン、レーフォ、ヘレ、リグス、ルザーレ、全宇宙のありとあらゆる星から集った戦士たち。スチームにビーストもいる。
イデアにジャックにエマにスリューの四人のスペリオル。
同じスペリオルであるエリスとダイアナとケイシーの三人。
戦士たちは対エイリアン武装済み、これまでのイヴィル戦のデーターを元に開発された特別品。
みんな、全宇宙から集まった選りすぐりの精鋭と言っても過言ではないだろう。
相手は一人とは言え、相手は宇宙の消滅神。戦力は多ければ多い程が丁度良い。
「今、宇宙でも戦ってくれて来るんだな」
ラース出身の戦士が空を見上げながら、ぽつりと言った。
オーギュストたちがエイリアンと交戦している情報は地上にも届いている。
今もこの時、一体のエイリアンをラースに入れないために戦ってくれている。地上での戦いが不利にならないために。
ならば、自分たちも答えるのみ。全戦士のやる気か漲って行く。
「……」
「どうしたの、エリス」
何か考え事をしているエリスにダイアナが声を掛けた。
「何でもないよ」
誤魔化しておく。
『いざとなったら、“アレ”をやるしかないよね』
思い浮かぶのは軍施設での御子の話。誰にも伝えていないエリスと御子だけの作戦。
「どうぞ、これを」
神官は集まった戦士たちに白いメダルの付いた首飾りを渡す。
「闇除けのお守りです。これがあれば“置き見上げ”化を防げます」
各星でフィリップはヒューマンを“置き土産”に変えて、一種のゾンビパンデミックを起こして回った。
フィリップと戦うことになったとしても“置き土産”に変えられてしまったら、洒落にならない。
闇の精霊を浄化する魔法を開発すると同時に闇除けのお守りも開発。
相手が相手だけに打てる手は打てるだけ打っておくべき。
「感謝する」
アランはお礼を言い、闇除けのお守りを首にかけた。続いてエリスとダイアナとケイシーがかけ、やがて全員がかけた。
「さぁ、行くぞ」
ローズモンドの掛け声とともに全員、キスブキノスカ、結界の中に突入。
夕暮れにも関わらず、人っ子一人いない異様な光景の繁華街を突入した戦士たちは進んで行く。
「これ、終わったら一杯やりたいスッ」
「俺も~」
「報酬もたっぷり貰えそうだし」
「あの店なんかいい雰囲気」
軽口を叩いて荒くれ者みたいな部下たちが場を和ませてくれた。顔が緩んだ戦士いる。
場が和んでも四方どころか上も下も警戒を怠らない戦士たち。
何せ得体がしれない相手、どこから襲撃してきても不思議ではない。
いつでも攻撃できる体制で進みながら、宇宙の消滅神・フィリップを探索。
静かな繁華街に戦士たちの足音が響く。姿は見えないが、結界によってフィリップはキスブキノスカに閉じ込められている。
この繁華街にいることは確実なのだ。
曲がり角からフィリップが現れ、戦士たちに突撃をかましてきた。ローズモンドに叩き込まれた炎の鉄拳の傷跡は見当たらない。治癒したのだろうか?
一番近くにいたジョナサンが対エイリアンライフルを撃つ。
見た目がエルフだろうが躊躇なんかしてられない相手。地球で戦ったイヴィルよりも質の悪さは上位。
近くにいた戦士たちも続く。
ズタボロになって倒れるフィリップ。誰もやったかと言わない、倒したとも思わない。
「おかしい、簡単すぎる」
アランの言ったことが総意。集められたのは精鋭ばかり、宇宙の消滅神・フィリップがこんなにも簡単に倒せる相手ではないことは解っている。
崩れ去り、真っ黒な塵になって消えるフィリップ。
ピクっとジェイニーの耳が動く。ビーストの耳が物音を捉える。
「何か来るぞ」
警告と同時に戦士全員戦闘モード。
足音が聞こえてきた、それも一人や二人のものではない。
曲がり角、物陰、路地裏から大量のフィリップが溢れ出て来たではないか!
フィリップ?




