第六十七章 ラースへ緊急帰星
エリスくんたちは懐かしい面々に会います。
「ただいま、父さん、母さん」
緊急の指令を受け、急いで地球からラースに帰ってきたエリスとダイアナとケイシー。空港にはアランとシャーロットが迎えに来てくれていた。
「車を用意してある、すぐに行くぞ」
父親に頷くエリス。ダイアナとケイシーが続いて頷いた。
大変な事態になっていることは既に聞いている。
前の座席にアランとシャーロットが座り、後部座席にはエリスとダイアナとケイシーが座る。シートベルトも忘れずに締める。
みんなが座るとドアが閉まり、入力していた目的の場所に向かって車は自動的に走り出す。
走行中は誰も何も話さない、地球の土産話もしない。今はそんな場合でないことを知っているから。
駐車場に入った車が停止。付いた先は軍施設。
ドアが開き、車から降りたエリスたちは軍施設へ。
「お久しぶりです、エリスくん、ダイアナさん、ケイシーくん」
軍施設に入ったエリスたちをエックハルトが出迎えてくれた。
「お久しぶりです、校長先生」
エリスが挨拶を返し、ダイアナとケイシーも挨拶。
「アランさんですね、あなたの話は聞いています」
「私もあなたのことは聞いています」
エックハルトとアランは握手。
施設にはローズモンドとボドワン、御子がいる。
懐かしい面々。だが、思い出話をするためにラースに帰ってきたのではない。
御子がここにいると言う事は、それだけの事態が起こっている証。
「話は聞いているな」
ローズモンドにエリスとダイアナとケイシーは頷く。およその事情は緊急指令を受けた際に聞いている。
「そうか、だが、直接見た私の話も聞いて置け」
モニターで見るのと、目撃者の話では受ける印象に大きな差が出る。
「先日、私たちはフィリップを見た。あれはフィリップだったが、雰囲気は学生の頃とは別人。実際にもうフィリップじゃないんだろうな……」
変わり果てたフィリップの姿を思い出したローズモンドの声のトーンが落ちる。
ラースに現れた変わり果てたフィリップに遭遇したエックハルトとローズモンドとボドワン。人類の敵となった生徒に襲われた三人の教師の辛い気持ち。性格に問題があっても教え子には変わらないのだ。
エリスとダイアナとケイシーも感じ取れる。生徒だったのだから。
取り巻きの四人がイヴィルになっていた。ならばフィリップもイヴィルになっていることは想定されていたが。
倒したイヴィルは四体。フィリップが最後の一体になる。
「何処に潜んでいるかはまだ解りませんが、ラースから出ていないことは確実です」
フィリップの放つ気配で御子には解る。エリスも同じものを感じ取っていた。何故なら――。
「直に接触して解りました。フィリップと融合したのはただの闇の精霊ではありません。宇宙の女神と対極をなす、宇宙の消滅神と言う存在です」
宇宙の女神と対極をなす存在だからこそ、エリスにも感じることが出来た。近くにいるからもあるけど。
「宇宙の消滅神ですか? それはどのような存在なのでしょうか」
ボドワンが尋ねた。名前からしてろくでもなささと危険さが解る。しかも宇宙の女神と対極をなす存在となれば尚更。
「宇宙の女神が宇宙を護る存在ならば、宇宙の消滅神は宇宙を破壊する存在。宇宙の女神により、倒されたのですが、フィリップに受肉することで復活を果たしました」
宇宙の消滅神、名前そのままの存在。御子の話を聞いた軍施設にいた全員が何も言えなくなる。
「宇宙の消滅神が依り代にする相手は誰でい良いというわけではありません。フィリップは選ばれ、自ら進んで受け入れた」
フィリップの闇の心、歪んだエルフのプライド、エリスへの対抗心。そこを付けこまれたのだ。そしてフィリップ自身も宇宙の消滅神を受け入れた。“力”が欲しかったので。
巨大マンタ型イヴィルは地球を壊す危険性があった。宇宙の消滅神は宇宙そのものを壊す危険性がある。宇宙となれば、何処にも逃げ場所がない。宇宙を護るためには勝つしかない。
「何故、フィリッ――宇宙の消滅神は宇宙を――」
何故、宇宙を破壊するのかと聞こうとしてローズモンドは止めた。エイリアンの行動に意味など無いのだ。学校で教えてきたこと。
「強いて言えば宇宙の消滅神は宇宙を破壊するために存在しているからです」
皆まで言わなくても御子は答えてくれた。その答えに一同は静まり返った。
エイリアンは理性ではなく、本能のみで行動する。宇宙の消滅神も理性ではなく、存在そのものが宇宙を破壊するためにあるのだ。
そこに目的も意味もない。
理解したとは言え、エリスたちは宇宙の消滅神の好きにはさせる心算はない。受け入れたくないことに対して目を瞑って耳を塞ぐようなならばエイリアンと戦う戦士になんかにはなったりはしない。
受け入れ、戦う覚悟を決めたから、皆ここにいるのだ。
「ヴァルミネから神官たちが来てくれました。今、ラースに結界を張って宇宙の消滅神を星の外に逃げられないようにしています」
つまり、宇宙の消滅神はラースに閉じ込められている状態。
「ラース(ここ)で決着をつけるというのですね」
エックハルトに頷く御子。
果っての生徒を仕留めなくてはならない、教師の辛さはどれほどのものか。それでも仕留めなければならない、宇宙の命運がかかっているのだから。
「最悪の場合、ラースごと破壊しなくてはならないかもしれません」
教頭のボドワンに御子を除く皆が視線を向けた。言ったことは非情なれど、全宇宙を護るために星一つを犠牲にする選択。
その事を解るからこそ、誰も非難できない。
「俺たちがラース(ここ)にいるんだ、そうはさせはしない」
拳を構えるケイシー。
「その通りだよ、僕たちがいるんだ。最悪なんかにしたりしない」
「フィリップでも宇宙の消滅神でも、私たちがやっつけてやるわよ」
生徒だったエリスとダイアナとケイシーの言葉に、教師たちは勇気と元気を与えられた、
教え子たちの成長にローズモンドはつい微笑んでしまう。
フィリップと融合した存在。




