第六十一章 迫り来るもの
MIBの人工衛星が捉えたものとは。
地球を周回している人工衛星の中にはMIBの管轄の、つまり地球外の技術で造られた物がある。性能は地球の人工衛星では捉えきれない遠望もクリアに見ることが出来る。
その人工衛星が地球に迫りくるエイリアンの姿を捉えた。大きさは月と同じ、横幅の広い三角形の体に長い尾っぽ。その姿は宇宙を泳ぐ巨大マンタの様。
三角形の体の中心に顔がある、エルフの特徴である長い耳を持つ顔が。
これらの特徴が示すのは巨大マンタ型のエイリアンがイヴィルであると言うこと。
その周囲にはヒューマノイドタイプ、昆虫のタイプ、爬虫類タイプが群れを成す。
地球に巨大なイヴィルが接近してきている。この情報は、たちまち全世界のMIBに伝えられた。
勿論、エリスとダイアナとケイシーにも伝えられ、緊急招集。
MIBの日本支部。エリスとダイアナとケイシーが席に着いたところで壁のモニターに各国のMIBのエージェントたちが映し出された。
イヴィルが地球に到着するまで、まだ時間はある。今のうちに対策を話し合う。
緊急会議が開始された。様々な言語が使われるが、翻訳機があるので問題なし。
モニターには地球に迫りくるヒューマノイドタイプ、昆虫のタイプ、爬虫類タイプの群れを引き連れた巨大マンタ型のエイリアンが映像が映し出される。
「なんて大きさなんだ……」
炭田の顔が青ざめる。巨大マンタ型のエイリアンもさることながら、エイリアンの群れ。
各国のMIBのエージェントたちも声が出せない。
到達したら、地球が破壊されてしまう。
各国のMIBのエージェントたちは地球に住んでいる、家族も一緒に。友人も知人も地球で暮らしているのだ。
地球人全員を異星に避難させることは不可能。それに沢山の動植物が住んでいる。命溢れる星、地球。
自然だけではない、子供の頃に通った学校に遊んだ公園、デートで行った水族館や遊園地、勉強になった博物館。沢山の思い出の場所も何もかもが失われる。
巨大マンタ型のエイリアンを倒さなければ、地球に住むものたちにとつて最悪の事態になる。
言い知れぬ、恐怖と不安に包み込まれる各国のMIBのエージェントたち。
エリスは前世は地球人、今も前世の両親や友人が住んでいる。対岸の火事なんてとても思えやしない。
『地球到着予測は約一か月後。迎え撃つため、オーギュスト・バルバストル艦長が来てくれることになりました』
モニターから翻訳機を通じて流れる声。オーギュスト・バルバストル、エリスとダイアナとケイシーが卒業前の実践訓練の時の艦長であり、卒業後の宇宙戦の時にも彼の戦艦に乗った。ダイアナと同じフェガヌ出身。
十分に信頼できる人物。MIBのエージェントにも知っている人がいて、少しホッとしていた。
戦艦はワープしてくるのに対し、イヴィルは自力でくる。先に地球に到着するのは戦艦。
こちら側に対策を取れる時間がある。約一ヶ月後とはいえ、対策を取れる時間があるのは利点。
「すいません」
エリスは頭を下げた。
「僕はフィリップたちと因縁があります。イヴィルが地球に来るのは僕の所為かもしれません」
前世の故郷を巻き込んでしまった。地球に何があれば、耐えがたいほどに辛い。
『エリス君の気にする必要は無い。奴らはヒューマンの全てをターゲットにしている。地球はヒューマンの星。エリス君がいなくてもいずれはターゲットにされていただろう。それが早いか遅いかの違いに過ぎない』
モニターに映るエージェントの一人が言う。
『むしろ、地球にスペリオルが三人もいてくれたのは幸運だ』
『戦略が立てやすくなった』
『君たちは我々の切り札になりうる』
『責任を感じるなら、戦果で返せばいい』
他のエージェントも続いてくれた。
「はい、地球は何としても護ります」
エージェントたちの気持ちがエリスにやる気を起こさせた。何としても地球を護って見せるんだと気構えはダイアナとケイシーに伝わり、同じ気持ちを呼び起させる。
全世界の危機の訪れ。




