本当の事だ
「シシグモ」、ソリスのお嬢様が言うにはこの半ナマのトラクターはそんな名前らしい。
なんでお嬢様がこんなモンを、とかそもそもコレの出どころは、とかいろいろ聞きたい事もあるけど……
一番は昨日かっぱらったアニオのトラクターのボクタ、右腕をぶっ飛ばしちまったから代わりの右腕だな。それとこのシシグモを積んどく船、だな。ソリスお嬢様はそこまで用意しているらしく、そのドックに向かってシシグモの肩にお嬢様を乗せて歩いていた。
「エラーイン県知事が被せて来た汚名を濯ぐ為にはまずは体勢を立て直さないとな。ユーダン、カエルの野郎は連絡付いてるか?」
「カエルはな、ユノとマサヒロが徹甲団の団員の非戦闘員を逃がすのに同行させた。修理出来る人間は必要だろう?」
「仕方ねぇ、じゃあリーリン。アイツは?しょっ引かれたりはしてねぇだろうが、徹甲団のメカニックと言えばカエルかリーリンだろ?」
後ろをノシノシ歩いていたユーダンのボクタが左腕をブンブンと振る。本気で嫌がってるみたいだ
「嫌だ!!リーリンの弄ったトラクターなんて乗りたくない!良いじゃねぇかバルガ、この際連絡先が分からなくなったとかでアイツからフェードアウトしようぜ?」
「そのリーリンさんという方なら、今から私達が行くドックにいらしてますよ。何処で嗅ぎ付けたのか「向こう側とのハイブリット!すンばらすぃ〜!」とか言って私の研究員を困らせてるそうです。」
ソリスお嬢さんのセリフの後に無線機がザピッと鳴ると勝手に通信を始める。
「まっさか〜ソリソリの雇った人達はぁ、み〜んなソリソリの為にがんばろ〜!って私を迎え入れてくれたよぉ!」
「あとユーダン!テメェアタイから逃げられるとか思ってんじゃねぇだろうなぁ!テメェはトラクターよりクルマのが性に合ってんだから大人しくアタイの組んだチキチキマシンを乗り回してりゃ良いんだよ!クレーンちゃんを廃車にしたのは今回だけは大目に見てやるが、次スクラップにしたらテメェ自身をエンジンに直結してやるかんなァ!」
ユーダンはヒィッ!と縮み上がる。
昔は「ユーダンの族車はアタイが仕上げるんだ!」って可愛い所があったのに、ユーダンがヤンチャな走り方を辞めたらメチャクチャ当たりが強くなったんだよなぁ。
愛されてんな、ユーダン。
「おいバルガ!モニターに顔が浮かんでんだ、テメェニヤニヤ笑ってんじゃねぇよ!」
「愛されてますねユーダンさん。そうだリーリンさん。そこに居る人達と協力して最高の船を作るのに協力してくれたら、ユーダンさんに贈る乗り物を好きに作ってくれて構いませんよ。」
「この船の操舵士もユーダンで?」
「ええ、我々が生き残る確率が高まるならば。ユーダンさんの運転のスキルは確かなのでしょう?」
そこからしばらくしてソリスお嬢さんの隠しドックに到着した。
──────
「ユーダン、生きてたぁ!あ、指名手配されてたバルガ団長だウケる。」
ウケんで良い!
町外れの小さな丘を回り込んだ所にソリスお嬢さんの用意したというドックの入り口があった。
荒野にあっても違和感の無い赤茶色の岩に偽装していた扉をくぐると、そこには鉄とコンクリートの灰色で無機質な光景が広がっていた。
慌ただしく行き交うメカニック、積み込み作業をしているロボット。そして何より目を引くのは百メートルはゆうに超えるであろう巨大な船影だった。
「ヒュウ!この船でなら、駆除が間に合わない地域の巨獣をシバきに行くのも楽に行けそうだな!」
「あぁ、トレーラーで走り回るしか無かった船の買えない貧乏チーム徹甲団がスポンサーのおかげでコルベット乗り回せるなんて夢の様だぜ」
俺とユーダンは肩を組んで喜ぶ。
ワリに合わないし被害が出た時に面倒臭いからと放置されがちな巨獣、俺達がメインに狩ってきたエモノだが、どうしても後手後手になってしまう現状だったが、コレで少しは改善出来たな!
「はぁ……貴方達は今の自分達が置かれている状況を分かってるんですか?おたずねものなんですよ?!それでどうして真っ先に「巨獣を早く狩れる」なんですか!そこは仲間を集めるとか、濡れ衣着せたエラーイン県知事を打倒するとかそういうのじゃないんですか?」
はぁ、分かって無いなお嬢様は。俺達徹甲団はな「誰かがやらなきゃならん事に徹して、人々を守る甲となる」だから徹甲団なんだ。
徹する。役割を最後まで突き通す事だ。俺達みたいな巨獣のせいで親が居ない奴らが集まって巨獣狩りを始めた。俺達みたいなのがこれ以上増えない様にな。
「バルガ、あなた達徹甲団だけじゃあ巨獣を狩るのも追いついて無いでしょう?だから皆が狩る様にそういう話を付けて新しくルールに組み込まなくちゃいけないんです。“向こう側”で好き放題してる人達のお尻を拭くためにあるのですか?徹甲団は?」
ソリスの足元に電動ドライバーが突き刺さる。
「リーリンやめろ!………本当の事だ」
「だからちゃんとした方法で議会に承認を得られる様にしなきゃ行けないんです。その為に火星最大の山脈、オリンポス山にあるオリンポスシティ。そこまで私を連れて行って下さい。そこに居るアルバ翁が働きかけてくれる手筈になってます」
「なるほど、だからジャンヌダルクも悪く無いって言ったのか」




