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3話 卑怯者

ひゅう!コイツは“半生”じゃねぇか!


 俺は生暖かいグリップを握り感触を確かめる。シートの後ろからドクン、ドクンと脈打つ心臓の拍動がまるでエンジンの振動の様に感じられた。




 まるで「お前にやれんのか?」と機体そのものが問いかけて来ている様な“圧”を感じるシートに深く座り込みグリップを確かめる。




 「なんだそのトラクターは!ぎゃははは!マトモに修理する金が無くて魔獣の毛皮でも使ってるのか?うわ貧乏くさ〜」




 挑発とともに手に持っていた剣を振り下ろして来る敵トラクターの運転手。


 だがぜんぜん焦りも恐怖も無い。だって“慣れて無い”からな。


 コイツは普段、“向こう側”の世界に飛び込んで「魔法」をバンバン撃ってる様な人間だ。




 ふだん“こっち側”で戦ってる俺達は「魔法」無しで、かつパワーもスピードも圧倒的に上の巨獣と戦ってんだ。そいつ等の爪と牙にくらべたらあくびが出るぜ。




 あえて手斧で受ける。2度、3度と切り結ぶ。


敵は「これならイケそう」と思ったのか大振りな一撃のために大きく振り被った!




「魔獣といつも戦ってる俺の敵じゃねぇんだよバルガ・リツカァ!お前ら徹甲団は素直に俺達のおこぼれを漁ってりゃあ良いんだァ!」




 大振りの動きで振り下ろされた剣は敵運転手の叫びも虚しく俺のトラクターにかすりもせずに地面に突き刺さる。




 伸び切った両腕の関節部分に手斧をガァン!と叩き込む!まるで虫の関節を折った様に手首から先がぷらーんとなって剣を握れなくなる敵トラクター。




「てめー卑怯だぞ!なにグズのクセに躱してんだ!!」




「お嬢様、こんなチンピラもトラクターを乗り回せるって結構問題なのでは?」




「いかんせん、「何かと戦おう!」ってなる人間は多少なりとも気性の荒い所はあるでしょうから。まぁ、多少は……という所かしら」




 少し離れた所で呆れた顔をしているソリス・ヘスペリアとユーダン。あっ、ユーダンの野郎流れる様にソリス・ヘスペリアの荷物持ちしてやがる。いまそのちっさい望遠鏡どっから出した?




「こんな事もあろうかとォ!魔ッテリー駆動のファイヤーボール・スロワーだ!黒焦げになっちまいな!」




 二の腕の装甲が開いて砲身が飛び出すとそこから勢いよく火球を放ち始める敵トラクター。


 クソッ、肘から切り落としてれば良かった!


 手甲で顔と胴体をガードするが、ガードの上から何発も火球を叩き込まれる。苦し紛れに持っていた手斧を投げつけるが何も無い空中で弾かれた。




「ぎゃはははは!普段魔法の使えない“こっち側”でしか戦った事が無いから見た事無かったかぁ?魔力障壁だぁ、ハンパな攻撃は魔法の壁で防いでくれるのサァ!」




 そうだった!“こっち側”の巨獣はパワーが凄い分そういうギミックみたいなのは使わないもんな!忘れてた!




「俺の機体の魔ッテリー切れかテメェの装甲が焼き切れるか、チキンレースでも構わないんだぜ?俺はよぉ」




 敵トラクター運転手が挑発してくる。


ムカつくから挑発で返して隙を作れないか試す。




「いきなり手首を切り落とされたからビビって近づけないだけだろ、最初から不意打ちでトラクターを真っ先に壊すし真正面から戦ったら敵わないですって言ってる様なモンじゃないか。悔しかったら殴りかかって来いよ!雑魚!」




 「“向こう側”に突っ込んで来る度胸の無いフニャチンが一丁前の口効きやがって!お望み通りぶん殴ってやんよ!ファイヤーボール・スロワー!射出をキャンセル!火球を砲口に収束・滞留!疑似拳を形成!ぶちかます!ファイヤーボール・ナックル!!」




 釣れた!




「ソリスのお嬢!コッチもマジック・ギミックは何か積んで無いのか?」




「あります。「熊襲クマソ」と叫びながらぶん殴りなさい。」




「あいさ!うぉぉぉ!どついたる!「熊襲クマソ」ォォォォォォォ」




 火球で出来た拳に向かって俺はトラクターの拳を突き出す。俺の叫びに反応して手甲が開き、白い蒸気が吹き出す。




 火球拳とこっちの拳がぶつかった瞬間、手甲から衝撃波が放たれ、火球拳を掻き消し、ファイヤーボール・スロワーをスクラップにし、二の腕をひしゃげさせて最後に肩を胴体から引き千切った。




 残った左腕のファイヤーボール・スロワーから火球を放とうとする敵ドライバー。こっちの俺も知らない隠し球にビックリして手を止めないのか……性格は糞だが……プロやな──。




 二の腕を左腕で掴んで捻り上げる。向こうは片手でコッチは両腕だ。勝負は明らかだった。




「余計な恨みは買いたくないんでな。殺されたくなかったら降りろ。それとも自爆とかしてみるか?」




「クソッ!降参だ。降りるよ!その代わりに殺さないでくれよ」




「あぁ。どうせお前、この様子を配信してんだろ?配信者みたいだしな。」




 カメラを持ってのっそりと運転席から出て来るドライバー。




「あれ?お前見た事ある顔してんな。ウチの団員にお前のファンだって奴居たな……確か………アニオだったか?」




 つまらなそうに両手をあげてユーダンに手を縛られてる男は少し前に「イケメン人気EXP特集!」みたいなので見た気がする男だった。




「お前らが戦線を崩したせいで俺のバックアップチームの仲間が3人死んだ。ユカリも左腕がつぶれて無くなっちまった。テメェらのせいだ。テメェらが死ねば良かったんだ。」




 トラクターに乗っている間はキャラを作って居たのか、降りた途端に落ち着いた声でストレートに恨み節をぶつけて来た。




「はぁ……ユーダン、行くぞ。トレーラーもぶっ壊れちまったし、コレお前のトラクターにしようぜ」




「おい待てよ!なんとか言ったらどうなんだ!」




「待てよ!!」「待てったら!」「勝手に逃げて死人を出した事をどう思ってるのか言ってみろよ!」「卑怯者!死ね!お前達が死ねば良かったんだ!」



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