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2話 勧誘

「なにっ!ミタがいる病院に県警が乗り込んで来た?!」


 吊し上げを食らってた俺を助けに来てくれたユーダンが言うにはいきなりやってきて身柄を拘束されそうになったとのこと。


 マジかよ、何人死んだか知らねぇが俺達徹甲団だけに“こっち側”の対処を押し付けてたのはアイツらだぞ!


 俺は何度も「このままじゃあいつか大変な事になる。あの惨劇、“ラッパが吹かれた日”みたいになるぞ」って言い続けたのに、リソースを“向こう側”に注ぎ込みたくて相手にして来なかった!そのツケじゃねぇか!


「ユーダン、徹甲団の仲間達はどうなってる?」


「あぁ、バルガ団長。ユノとマサヒロがすぐに他県に逃がした。小さいガキどもまで追い回されるとは思いたくねぇが、念には念をだ。」


「ユーダン、連絡が付くならアイツらにはしばらく別行動を取って俺達とは距離を取れと言っといてくれ。なんなら新しくチームを立ち上げて、悪目立ちしない様に“向こう側”を冒険するEXPになって俺達の事は忘れろって伝えとけ」


 俺の言葉にユーダンはバリバリと頭を掻きむしり、「あー、」「うーん」と唸った。


「それがさぁ団長、アイツらも団長とミタの為にって燃え上がっててな。非戦闘員の裏方とかトラクターの整備士とかを逃がした後は体勢を整えてから殴り込みをかけるって息巻いてンだわ。」


「血の気の多い奴らを抑えとくのがリーダーの役目だろうが!なにを先頭切って戦かおうとしてんだ!アイツらバカなのか?」


「そりゃな徹甲団の奴らは基本的には“ラッパが吹かれた日”に家族を無くした奴らだ。しかも今回はちゃんと準備してたら防げた。アイツらの気持ちも分かるぜ。オレはよ」


 キャンディを取り出し口に放り込むと懐から出した書類を俺に差し出して来る。


 そこには本来“向こう側”からの影響を受けた“こちら側”の対処をする予算がよく分からない活動家に流れて最終的に地元議員の口座に入っている事を示す内容が書かれていた。


 「なんだ………?コレ。ガキのラクガキにしてはシャレにならん内容だが……」


「俺達にタレコミがあったんだよ。その議員さんの娘さんからな。」



────────




 「貴方が徹甲団の団長、バルガ・リツカね。私はコロナエ県議会議員イカリア・ヘスペリアの娘、ソリス・ヘスペリアよ。」


 生真面目そうな女がそこにいた。必要以上に飾り付けられていない。が、かと言って容姿に無沈着でもない。


 薄い化粧、控えめなアクセサリー、なんというか小綺麗に纏った感じの品の良い女だ。


「あぁ、俺が徹甲団団長、バルガ・リツカだ。アンタ何考えてんだ?今の俺とコンタクト取ろうだなんてよ。しかも一方的にこんな爆弾をよこしやがって……まさかジャンヌダルクにでもなるつもりか?」


「ジャンヌダルク………良いわね。さしずめ解放の女神。分かりやすい旗印は必要よ。そしてそれは女の方が都合が良い。そうでなくって?」


 なんだこの女?イカれてんのか?こっちはすぐにでもミタを筆頭に県警の手に落ちたであろう仲間達の安否を確認したいのに。


「この県はかなりガタが来ています。でも私は故郷であるこの県がもっと安心して住めるにぎやかで楽しい場所になって欲しい………今の火星政府の方針の「地球の為に“向こう側”から資源を持ち帰る事を最優先にする」って言うのを続けていると、発展なんて夢のまた夢。だから徹甲団とその団長には火星政府に反省を促す為の生存者となって欲しいのです。」



 ……………なんて?

 つまり俺達にテロリストの片棒を担げと、このお嬢様はそう仰るのか!


 ドガシャアアアン!と突然の爆発音、ユーダンのトレーラーとその荷台に鎮座していた俺のトラクター、クボッタが爆発炎上していた。


「見つけた見つけた!敵前逃亡して皆に迷惑かけた最低チーム徹甲団のバルガ!しかも県庁からも逃げたらしいじゃないか!お前の首には賞金が掛かってるんだ!大人しくついてきて貰う!」


 いきなり現れたトラクターがけたたましい声でこちらを責める。どの口が……ッ!美味しい報酬しか目に入らないクズども………お前達が向こう側に行けるって事は、向こう側からも怪物や魔法物質がコッチに来てんだよ。


 俺達はそういう、誰もやりたがらないけど、誰かは対処しなきゃならんモノに普段は対応に当たってんだ。それをスカベンジャーだの掃除屋だの見下しやがって、そのクセいざとなったら矢面に立たせる。図々しくて恥ずかしいとは思わねぇのかってんだ!


 今にも飛び掛かりそうなユーダンを手で制す。

 ユーダンは拳を握りすぎて手から血が滲んでやがる。


「お嬢様、この状況でも慌てないってんなら良いオモチャを揃えてるんだろうな?」

「えぇ、きっと気に入りますわ。あの子は貴方と同じで凶暴ですもの」

「気に入った。アンタの剣となり銃となろう」

「よくってよ」


 隣の建物から壁を突き破りトラクターが現れる。大きな手甲を備えて、デカいブーツを履いている末端肥大なシルエット。顔には大きなバイザーが被せられ、身体を守る様に配置されているアーマーの下には毛皮が見え隠れしていた。


 がぱり、とまるで猛獣がエモノを見つけたと言わんばかりに胸のコクピットを開く。

 俺はためらいもせずに飛び込んだ!

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