ー21ー 殺戮王蔡 ⑦ ナツメと赤い花
アリス......どこですか!?
はあはあ
お姉ちゃんが......早く行かないと、お姉ちゃんが......!
助けて......!!!
魔力が腕を型どり、肉体を修復してゆく......。
なるほど、ふむ。と、ガロは頷く。
「貴様、魔族......しかもその再生力は、高位の......魔王の血が入っているな?」
「ああ、そうだよ。」
ナツメの頭からは悪魔を思わせるような二本の角が額から出てきていた。
長く黒い尾が生え、髪は燃えるような赤に染まっている。
大剣をブンと振り肩に担ぎ、ナツメは言う。
「ノアの居場所を、言え。」
「ふっ......」
「ふははははははは!!!!!」
ガロが笑いだし、腰を折り腹を抱える。
「いや、失礼......しかし、これはこれは......。」
「てめぇ......。」
「ああ、あのエルフの居場所だな。すまない。」
ガロが剣を構えた。
「私に勝てたら教えてやろう。くくっ。」
先程ナツメが切り飛ばした、ガロの腕からは黒い霧のような影がわきでていて、それが手の形を模している。
ナツメに向かって飛び込むガロ。それに合わせ剣を振り抜く。
互いの剣が混じり合い、火花がでる。ギギギギと言う刃の擦れる音。
すると、ガロの剣を伝い影の蛇がナツメの腕を縛る。
しかしナツメはそれを予測していて、縛られたまま尾を使いガロの頭を突き刺す。
ナツメの尾は剣のような形になっている。そしてその突きの威力はガロの身体ごと頭を吹き飛ばす程であった。
蛇のように絡んだ影は、吹き飛ばされてもまだ繋がり続け、ナツメの腕を縛っていた。
あはっ......
あははははははははははははは!!!!!!
ガロの笑い声が高らかに響く。
「貴様、とても、良いぞ。」
剣を床に刺し、身体を起こす。
しかし、起きたガロには顔が無かった。頭部の鎧はナツメの突きによって、割れ半分は無くなっていた。
手と同様に、黒い霧が上へと立ち昇っていた。
驚くナツメに、ガロは続ける。
「ただの鼠では無かったか!あの魔王の血を継ぎし者!素晴らしい!!」
これは全力を出しても簡単には壊れまいな!!と、ガロが言うと背後に大きな黒い翼が這えた。
その翼から舞い落ちる羽が床へと溶けて消える。ガロが身を屈め左手の剣を後方へと向け、右の手のひらをナツメに見せるように差し出す。
そこからは蛇のように絡み付く影が繋がっている。
「行くぞ!!」
と、ガロが言葉を発した瞬間、右手に繋がっていた影が急速に縮み、ナツメは引き寄せられる!
と、同時に地を蹴りこちらに突進、剣を顔めがけガロは振り抜く!
ナツメはそれをギリギリ避け、尾をガロの頭上から振り下ろし反撃した!が、
床に潜んでいたガロの羽がナツメの身体へと銃弾のように放たれる。
「......ぐふっ!!」
その勢いで壁に叩きつけられた。
「クソ、なんで......腕にくっついた影が取れねえ!!」
また引き寄せられ、顔を殴り付けられる。カウンターでガロの腹に尾を突き立て、貫くが効果はない。
どうなってやがる!?こいつ、身体が黒い霧で出来てやがる......!!倒せないのか!?
「はははっはははははー!!!!どうした!!!もっと!もっとだ!!」
ガロはナツメの腕を蹴り抜き、成すがままに、サンドバッグのように攻撃を受け続けた。
だ、ダメだ......強すぎる......。
魔族化によってナツメが得られた能力は、三つ。
1、大量の魔力を使った肉体の再生。(腕を再生させるのに全魔力の1/3を使っていた。)
2、魔族化による身体能力の向上。(この時点での動きはカイを遥かに上回る)
3、血液を攻撃に使う血界の印
血界の印は発動条件があり
一つは対象の能力の解明。
二つ目にナツメの持つ大剣に対象の血液を飲ませる事。
しかしガロには身体が無く、血液がない。もはや血界の印を切り札に置いていたナツメには、勝つ道筋が見えなくなっていた。
やべえ、だめだわ......。
ミライ、ごめん......だめな姉ちゃんで。
アリス
あと頼むわ
床に横たわるナツメ。
外が明るくなってきているのが、ナツメに落ちる日差しでわかった。
ガロがこちらに歩いてくる。
「終わりか......?貴様、中々の動きであったな。私の身体に傷を......ましてやここまで鎧を破壊されるなど、今までに無い事であったぞ!」
くくくっと笑うガロ。ナツメは
あれ?と、何かに気がついた。
そうか......そういう......
ナツメは最後の力を振り絞り、ガロへと大剣を振り抜いた。後ろへ一歩さがる事によりそれを軽々と回避する。
更に、力を込め大剣が振り回される。ガロの後ろの扉が吹き飛ぶ!
破壊された戸のそこに、一人の男がいた。男は紙一重で、ナツメの剣をかわした。
「おっと、はは、危ない。」
コイツは......!!
「む、まだ楽しませてくれるか!ははっ、最高だな!貴様!!」
と、言うとナツメの手に絡めつけている影を縮めた。ガロは引き寄せられるナツメへ引導を渡すべく、黒く禍々しい大剣を首めがけ振った。
しかし、ナツメの首は落ちなかった。
ガロの身体は動く事が出来なかった。
赤黒い影が無数にガロの身体から出ていて、それが壁や天井などに繋がっており、身動きのできないように固定されていた。
「こ、これは......貴様、なぜこの能力を......!?」
ナツメは戦いの疲労と怪我で、今にも倒れそうでいる。
はあはあ......やっと捕まえた......。
「お前の能力は、影を自在に操れる力。影鬼神って言うんだろ。」
「なあ?......アラギアナ!」
扉の向こうに居た男はアラギアナであった。
アラギアナもナツメの赤黒い影に縛られている。
「このガロって暗黒騎士はお前の能力なんだよな?」
「なぜ、お前がこの能力を......いったい......これは」
「俺が魔王の血族だからさ。魔王は......魔力を使用し使う能力を見るだけで、自分も扱うことができた。その力が俺の中にも形を変え存在しているのさ......。」
魔王の相手の能力を完全再現する能力は、魔王だけが持つ力。
相手の能力を劣化版として再現できる者はいるが、完全に相手の力を再現できるのはこの世に魔王だけである。
しかし、魔王の血族であるナツメは条件付きではあるが、発現ですることができた。
それが、血界の印。
これは、相手の血液を大剣によって取り込み、血の情報で能力を知り、一時的に己の血を使い再現することができる。
能力の使用可能時間は、三分間。
「倒れた時に、日が射して気がついた。ガロの足元から影が扉の向こうに伸びていること......」
そして、ナツメの赤黒い影はガロの鎧の中に隠されている依代を掴んだ。綺麗な宝石に封じられた数万の人の魂だ。
「......やめてくれ。頼む。」
ナツメは
「無理、だ。」
と、言い、依代を影で握り潰した。
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